第41話 動き出す計画
領主様が戻り、今日は予定通り領主邸を訪ねる。
応接室に案内されると、程なくして領主様が入って来た。
「レン、呼び出してすまんな」
「侯爵様の所に行ってたんだね、お疲れ様です」
「あぁ、強欲な貴族達に散々嫌味を言われたよ」
「侯爵様はなんて?」
「レンの好きにして構わないそうだ。但し、有事の際は南領地に協力してくれと頼まれた」
「無茶な要求で無ければ了解だよ」
「なら問題無い。レティシアも同様だ」
「侯爵様と領主様に感謝を」
「して、レンも俺を訪ねて来たと聞いたが、何かあったか?」
「今、錬金工房を立ち上げるんだけど、作った物をどうするか相談しとこうと思ってさ」
「ん?[砂糖]は決まっているだろう?」
「[砂糖]は少し時間がかかりそうだから、最初は[ハイポーション]を作ろうかと思ってね」
「は、は、[ハイポーション]だと!作れるのか?」
「この前、偶然素材の群生地を見つけてね、材料が揃ったから作ってみたよ」
オレは試作した「ハイポーション」を領主様に渡す。
「こちらでも【鑑定】して良いか?」
「勿論!中級が出れば一緒の結果だよ」
領主様に預けて、[ハイポーション]の取り扱いを決める。
生産量は10日間で3本。工房の生産体制が整ったら、本数を増やす。
レシピは非公開として、領主様が全て買取りとなった。
「暫くは交渉の武器にさせて貰うぞ」
「いいよ、現状では素材の確保優先しなけりゃ」
「しかし、あの[シラタケ]が素材だとはな」
「この世界では、【調合】が進んで無いからね。急に採取依頼を出すと怪しまれるかな?」
「一般では、使わない素材だからな。怪しまれるだろう」
「群生地を見つけたのはラッキーだったよw もうすぐ工房の改装も完了かな」
「直ぐ取り掛かるのか?」
「暫くは人材育成だね。[ポーション]作成で熟練度アップさせるさ」
「そう言えばゼフから聞いたぞ。ミッションとやらを達成するとスキルを教えるんだってな」
「ゼフとギルにはスキル。キャロには魔法だね」
「どんなスキルだ?」
「一つは【シールドバッシュ】もう一つは考え中。魔法は、【ダブル】と合成魔法だよ」
「魔法の合成だと!可能なのか?」
「今は、【ファイヤーボール】と【ブリーズ】で【イエローファイヤー】はできるよ」
「【イエローファイヤー】は初めて聞くな」
「少し火力が上がった【ファイヤーボール】だよ。風が吹けば火が大きくなるアレ。生活魔法じや威力は弱いね」
「つまり、生活魔法でなければ威力を強められるのか」
「だから、先に【ダブル】を教えるよ」
「【ダブル】は同時発動の魔法だな。詠唱では難しい技術だったと記憶している」
「【高速詠唱】と【短縮詠唱】が必要だからね。無詠唱では可能だよ」
「まぁ、レンはそれ以上の同時発動出来るからな」
「属性も追加出来るの判ったし」
「……ん、聞き違いか?……属性の追加?」
「そうそう、属性は増やせるよ」
「はっ?」
呆けている領主様に、シスターとレティシアに属性が増えた事を報告する。
「非常識過ぎて理解が追いつかん!」
「まあ、簡単では無いけどねw」
「簡単に増やされてたまるか!」
興奮気味な領主様をなだめながら、自警団の進捗も報告しておく。
「領主様、【鑑定】の結果がでました」
ドアの向こうからノックと共に声が掛かる。
「入れ」
執事長が[ハイポーション]の鑑定書を読み上げる。
「鑑定結果は[ハイポーション]。品質は中級です」
「判った」
執事長が退席するのを待って、領主様が問いかける。
「上級は作れるのか?」
「今回のは試作だからね、魔力量で調整は可能だよ」
「価格は幾らだ?」
「まだ決めてない。上級5本、中級20本までは献上するよ」
「有り難いが何故だ?」
「品質が安定するまで試供品扱い」
「判った、程々で好きにやれ」
「了解!」
領主様への報告も終わり、後は自警団と工房の改装待ち。
その間は、人材育成と素材採取に勤しんだ。
自警団の団長にザッハ、副団長にゾフィーを指名し、他6人を幹部に割り当て運用して行く。
本格的な運用は、追加の20人が【身体強化】を覚えてからとなる。それまでは、ギルドの依頼で資金確保。
他の5人は、工房が立ち上がったら引き渡しだ。
数日後、工房の改装が終わり、ミリーさんと立ち会い、引き渡しを行った。
ミリーさんは待ちきれなくて、2日前からオレの屋敷に泊まってるw
ギルドで錬金工房の登録手続きを行い、[ポーション]をギルドに定期納品する段取りを進めた。
ギルドでも、[ポーション]は売れ筋なので、安定供給は歓迎されたよ。
ミリーさんからの[ハイポーション]レシピ催促がうるさかったので、契約書を交わしレシピを渡した。
まだ器具が揃って無いので、食い入るようにレシピを見て唸っていた。
工房の引き渡しや、家具の配置・器具の納品も滞り無く終了。
明日から工房をスタートさせる準備が整った。
修行していた4人も無事【錬金術】を覚えている。
一応、運用は別々となるが、ミリーさんに取り纏めをお願いした。
報酬は2階の使用を無料提供。
他の人が住む場合、賃貸契約に決定。
細かなルールはミリーさんに丸な……お願いだね。
翌日、ミリーさんとオレは[ハイポーション]作成。
他は[ポーション]作成と素材採取に分かれる。
最初の分はオレが素材を提供。
[ハイポーション]や新規試作は別室で作成。
「まさか素材の1つが[シロタケ]とは思わなかったよ。良く判ったね」
「ちょっと特殊なスキルを覚えてね、そのスキルでは[ヒールマッシュ]と出るんだ」
「[ヒールマッシュ]が正式名称なのかな?スキルに興味あるけど教えてくれる?」
「領主様権限で教えるのはダメw」
「まぁそうだろうね、スキルの詮索はマナー違反だしねw」
「さて、[シロタケ][薬草][魔力草][魔力水]が材料だよ、材料と魔力配分を見直していこうか」
「魔力配分で下級から上級に分かれる感じかな?」
「材料の配分でも変わるけど、入れ過ぎると苦くて飲めなかったな」
「じゃあ、レンの配合を基準として、配分を決めますか」
「[ポーション]上級が作れれば、[ハイポーション]下級が作れるくらいが目安だね」
「りょ〜かい! 因みにレンの作れる品質は?」
「特級だよ」
「と、と、特級〜〜!」
「魔力を圧縮する分、効率は悪いかな?」
「普通の人には作れんよ」
「サラッと失礼な事言われたけどw」
「気の所為、気の所為www」
3日後[ハイポーション]のレシピ完成。
下級から上級までの各配分も記載している。
レシピは領主様に提供して、独占契約を結ぶ。
勿論、他への販売不可。買取り価格は高めに設定し、定期納品とした。
初契約成立の記念品として、特級をあげたらジト目を返されたw
特級は魔力注入が特殊で、製品には出来ない旨を伝えておいた。
工房は暫く熟練度アップを続け、[ポーション]の中級が目標かな?
自警団で訓練している5人を工房で引き取り、【魔力操作】を練習させて行く。
計9名の指導役を、ミリー工房から来た【ザザル】さんにお願いしている。
最初の4人は中級[ポーション]作成、後の5人は【錬金術】取得が課題みたいだね。
その間に〔アグリカ〕で[キビー]の購入をガディ商会へ依頼する。
オレ達も次のレシピに取り掛かる。
勿論[砂糖]だ!
ミリーに[砂糖]のレシピ作成を伝えると驚いていた。
「[砂糖]って北の領地で作られているアレかい?」
「材料は違うと思うけど、同じだよ」
「たしか、[イモー]から作るんだっけかい?」
「それは間違った情報だね。多分「イモー」に似た甘い種類じゃないかな」
「こっちの使う材料は?」
「[キビー]だよ」
以前〔アグリカ〕で購入した[キビー]を取り出す。
「少し齧ってみて」
「甘いね、このままじゃ食べ難いケド」
「加工しないとダメだね。使う人は細かくして煮た後は捨てるみたいだね」
「作り方は判るのかい?」
「前に作った[マヨネーズ]と同じ様な感じ。全部判ってはいないよ」
「でも、ある程度判るんだ…それもスキルのお陰かい?」
「そうだね、調べる系のスキルとだけ教えるよ」
「羨ましいな〜、ズルいな〜、欲しいな〜」
スキルは教えられないので、話題を変えよう。
「これが、判っている[砂糖]の作り方だよ」
「どれどれ!確かに分量は無いね。それと、不純物の除去が難しいかな?」
「まあ、試行錯誤が必要だね」
「手順があるだけマシか…」
「追加の[キビー]はガディさんにお願いしてるから、今は手持ちで試してみよう」
「大変だぁ」
「成功したら、甘いお菓子が作れるよ」
「ホント!頑張りまっス……って、まさかお菓子も新しいレシピなのかい?」
「そうだと思うケド、どうだろうね」
「試しにどんな名前?」
「[プリン]といって、柔らかいお菓子」
「はい、新しいレシピで決まり!」
ミリーの呆れた顔が印象的だった。




