第39話 引き抜き
翌日、4人を連れて〔アルケラ〕へ向う。
乗り合い馬車は使わず、【身体強化】の訓練とレベル上げが目的だよ。
1日目は、森までの移動。
2日目は、森でレベルアップ及び素材集め。
3日目は、〔アルケラ〕到着及び素材売却。
不足していたレベルも、全員40以上までアップ。
森の奥で[ヒールマッシュ]の群生地があり、採取しておいた。
[ヒールマッシュ]は[ハイポーション]の素材となるが、知られていない素材だ。
一般に[シロタケ]と呼ばれていて、食べても苦いとしか認識されていない。
【鑑定】と【検索】があるので、[ハイポーション]のレシピもバッチリ。
特産品にするか、レシピ公開するかは領主様と相談だね。
4人には、道中【クリーン】のレベル上げも指示していて、全員レベル3まではクリア。
順調ですな。
宿を取り、ギルドで査定待ちの間は自由時間。
鐘3つに宿の酒場集合として解散する。
素材はレア魔物の毛皮と[ヒールマッシュ]を残し売却。
お金は五等分として、4人とギルド運営の口座に振り込みとした。
ギルマスは不在。侯爵様の所に行っているみたいだね。
ミリーに明日行く事を伝えると、夕食奢ると言い出した。
何でも、レシピの配当金が凄すぎて、少しでもお礼がしたいみたい。
確かに、オレも毎日配当金が入っていて、働かなくても生活出来る位貯まっている。
夕食の時に、「お金の心配が無いのは、錬金術師にとって憧れさ!」と力説してたのが印象的だった。
どうやら他領地の貴族が、商人を使ってレシピを買っているらしい。まだまだ売れるみたいだね。
翌日、工房へ行き自己紹介を済ませると、工房の職員が喜んだ。
理由はレベルが高く、35階までの素材採取が可能な事で、採取を増やせるのが嬉しいみたい。
ギルドに頼むと、品質が安定しない場合があるのと、臨機応変で欲しい素材が手に入らない。
自前で採取すると、それぞれ欲しい素材を手に入れられるので、採取出来るレベルの人数が増えると嬉しいみたいだね。
両手を挙げて歓迎された。
明日は、オレの引率で40階まで連れて行く。
素材の要望を聞いたら、目を輝かせたので、リストにして貰おう。
4人を工房に預けて、オレはミリーさんに相談を持ちかけた。
「ミリーさん、〔サーエンド〕で工房を開いてみない?」
「なかなか魅力的な提案だね!支店かい?それとも移転が望みかい?」
「出来れば移転かな、これから多くの錬金術師が必要になるから」
「何かするのかな?」
「〔サーエンド〕の特産品開発さ。詳細は言えないケドね」
「勿体ぶらずに教えておくれよ」
「ん~~、じゃあ[ハイポーション]のレシピがあるとしたらどうする?」
「なに!!作れるのか?」
「試すのはこれからさ!レシピはオレの頭の中」
「今作ろう!直ぐ作ろう!!作らない選択肢は無い!!!」
「領主様の確認が出来てないから駄目だね。それと、特産品たから〔サーエンド〕でしか作らないよ」
「さあ、〔サーエンド〕に行こうか!」
「早いって。決めなきゃならない事あるだろw」
「判ったよ。資金もあるし、支店も考えていたからね」
どうやらミリーさんは、元々支店を考えていたらしい。
〔アルケラ〕での素材がマンネリ化していて、刺激が少ないみたいだね。
新しい素材の可能性がある〔サーエンド〕は第1候補のようだ。
「こちらで、工房や器具は用意するよ。その代わり、錬金術師育成と試作品の共同開発をお願いしたい」
「ん~~、育成に時間が取られそうだね」
「最初だけ大変かな? それと、レシピは公開せず領主様預かりになるよ」
「特産品で人を呼ぶのかい?」
「そう、だから関わる人は誓約書を結ぶ事になる」
「厳しいね」
「内容は、今度確認して貰うとして、誰が来てくれそうかな?」
「勿論私さ!後2名くらいかな」
「工房の要望はある?」
「ここと同じ様なら良いよ」
「判った、探してみるよ。それとも、オレと〔サーエンド〕に行くかい?」
「それも良いね、お願いするかな。」
「判った、3日後出発だよ」
「了解、楽しみだw」
次の日、4人を連れてダンジョンに潜る。
目的は、40階の転移ゲート解放となる。
25階までは引率し、26階からの戦闘は4人で行わせる。
レベル40なのと【身体強化】があるので、40階のボスでは難なくクリア。
一度転移ゲートで地上に戻り、野営をしながら反省会。
翌日は、採取をメインとして31階からスタート。
多分、50階はクリア出来ると思うが、Dランクなので安全マージンをとって40階までとした。
オレは4人と別行動で50階層の素材集め。
リストにちゃっかり50階以上の素材が載っていた。
戻ったら、出し惜しみして意地悪しようかなw
午前中に要望品が集まり、早い内に戻る事とした。
要望品以外はギルドで買取りして貰い、後は4人を工房に任せる。
翌日、ミリーさんと一緒に乗り合い馬車で〔サーエンド〕に向う。
道中色々聞かれ、はぐらかしておいたが疲れた旅程だったね。
一度屋敷に招待して、翌日物件を見る予定。
フェイさんに案内されて物件を見ると、ミリーさんが驚いていた。
「ちっ、ちょっと!どんだけ大きな工房にするつもりだい?」
案内された物件は、1階が元店舗、2階が住居、地下に倉庫があった。
「この店舗は…」
「レンさんの活躍で空き店舗となった物件ですねw」
そう、案内されたのは、元アグー商会。
「これだけ大きな店舗は中々買い手が見つからないんですよ。勉強しますからお願いします」
依頼したのは、大きなスペースが取れる物件。
確かに、これなら1階の改装で大丈夫そう。
「ミリーさん、工房の1画を支店として使い、共同で管理しませんか?」
「それなら大丈夫かな?うちらは5人程度の広さで充分だよ」
「了解!フェイさん、改装も依頼して良いですか?」
「判りました。午後から職人を向かわせますね」
午前中は家具や器具の確認や、住居部分と地下倉庫の使用ルールを話し、午後からはミリーさんの意見を参考に、改装部分を話し合う。
器具は〔アルケラ〕で購入予定とし、ガディさんに頼もうかな。
改装には10日間かかる見通し。
領主様に面会を求めたが、侯爵様の所に行っているので不在だった。
ギルマスも付いていったみたいだね。
「凄いねレンは!物事が次から次へと進んで行くよ」
「疲れたかな?」
「いや、楽しかった。改装まで待ち遠しいよw」
「他に気になる所はあるかな?」
「充分だよ、逆に恐縮しちゃう」
「素材が必要なら、ギルド・自警団・ガディ商会に依頼か自力採取だよ」
「了解!先ずは地固めしなくちゃね」
「オレの予想だと、一般販売は無いと思うよ」
「作る内容によるもんね」
「改装完了までには領主様も戻るから、それから本格的な動きだな」
「判った。それまで預かった4人を育てるからね」
「間に合わなかったら、〔サーエンド〕で続けて貰えるかい?」
「もっちろん!【錬金術】のスキルを覚えれば良いんだよね?誰かさんは、その日に覚えたみたいだけど」
「誰だろうね〜w」
ミリーは明日帰るので、一応一段落。
明日は自警団と魔法師団の様子を見ようかな。
その頃、侯爵邸では…
「よし、やりきったぞ!あの嫌味に耐えきったぞ!」
「侯爵様はすんなり了承してくれたが、屑貴族達が厄介だったなw」
「自分達はレンを御せると言っていたのには呆れたよ」
「侯爵様の「貴殿らはどう御す?金・名誉・女ではなびかんぞ。怒りを買って領地を見放された場合、どうなるか判っておろうな」は痛快だったw」
「あぁ、全員黙り込んだなw」
「土産も利いているんだろうさ」
「何せ、ワイバーンを無傷で狩れる実力だ。しかもギルマス2人からの報告もあったからな。これで暫くは安泰だよ」
「領主様、宜しいですかな?館から連絡がありました」
「用件は何だ?」
「レン様がお尋ねになり、不在を伝えるとお帰りになったそうです。」
「もう帰ってきたのか」
「ハッシュ様にも、ギルドから連絡です」
「嫌な予感しかしないな」
「レン様が錬金術師を連れて、例の大型店舗を購入したと聞きました」
「元アグー商会の空き物件か!もう動きだしたのか」
「あやつは落ち着く事を知らんのか」
「侯爵様に【砂糖】の件は伝えた方が良いんじゃないのか?」
「はぁ、仕事を増やしおって」
「まぁ、悪い報告より良いだろうさ」
「確かにな、領地繁栄の為だな」
「お疲れさん」
2人の大きな溜息を、〔アルケラ〕のギルマスは静かに聞いていた。




