第36話 対戦
いよいよ対戦の日、集う両陣営は対象的な雰囲気だった。
リラックスした表情で、笑いまで出ているこちらに対し、騎士団は張り詰めた表情で整列している。
騎士団長が「負けはありえん!負けた奴は騎士団から抜けて貰う」と言い、魔術師団長は「我が魔術師団こそが誉れ。完勝出来ない奴は立ち去れ」と激?を飛ばす。
それに対し、「こっちは負けてもレンさんが恥を掻くだげだよね〜」と笑っている。
何気に非道くね?
観覧席に領主様一家が揃い、対戦時間が近づく。
審判のギルマスがルール説明を行い対戦スタート。
騎士団対戦1戦目はジルが出場。
両者向い合った後、「初め!」の合図で動き出す。
ジルが様子見で受けに回ると、勘違いした団員が「ビビって逃げ回るだけか」と煽ってくる。
実際、ジルは驚いていた。騎士団の弱さに。
初戦ともあり、慎重に相手を伺ったが、分かり易い剣筋と遅い剣速に戸惑う。
改めて、レンの化物じみた強さを実感する。
20合も打ち合わない内に、相手の息が乱れていく。
「逃げないでかかってこい」と焦る様子まで感じらた。
「様子見はもういいかな」と呟き、「なにぃ」と返す間もなく、相手の剣を弾き飛ばし、喉元に切っ先を突きつける。
「それまで、勝者ジル!」
「まだだ、オレは負けていない!」と拳を突きつけてくるも、あえなくカウンターを貰い、気絶する有様。
2戦目はズイ。
相手からは、「なんだ、女かよ」の嘲りが聞こえた。
すれ違いざま、ジルから「思ったより弱えぞ、気をつけろ」と助言を貰うが意味不明。
「初め!」の合図で様子見を行った所、気をつけろの意味が判った。
予想とのギャップがありすぎると、リズムが狂う。
レンの動きが頭に残っていた為、ぎこちない動きとなる。
相手が勘違いし、「なんだその動きは、降参するなら今の内だぞ」と攻撃をして来たが、余りにも遅い。
斬撃を躱し、後ろに回り込み、首に手刀を入れると、あえなく気絶してしまう。
「それまで、勝者ズイ!」
ズイにしてみると、呆気ない幕切れだった。
3戦目はゼミュ。
相手は2敗しているせいか、「初め!」の合図と共に様子見を行ってきた。
それならばと、ゼミュから先制を放つ。
繰り出される斬撃の速さに付いていけず、尻もちをつく相手。
恥ずかしさと悔しさで、みるみる顔が赤くなり、立ち上がるやいなや突進をかます。
ゼミュは余裕で躱し、足を掛けて転ばすと、相手の顎に蹴りを入れる。
ピクリとも動かなくなった団員に、ギルマスが覗き込むと、「それまで、勝者ゼミュ!」の声が上がる。
気絶した団員を下がらせて、ギルマスが騎士団長に声を掛けた。
「勝敗は決したが、続けるか?」
「当然!我が騎士団は最後まで諦めん。剣で撃ち合わない邪道なぞ打ち砕いて見せる」と息巻いた。
「レンはどうする?」
「続けて良いよ、こっちの勝ちは決まったし」
領主様も頷いたので試合再開。
4戦目は騎士団のギル。
馬鹿にしていた相手に三連敗。しかも入団したばかりのひよっこと笑っていた相手だ。
「初め!」の合図があるも、両者慎重に様子を伺う。
ギルは今迄の訓練を思い出していた。
(騎士団では筋力重視。レンさんの訓練で、今のままでは駄目だと判る。この勝負勝って間違いを正そう)
そう決心すると、相手に向かって走り出す。
【身体強化】を使い、正面から打ち合う。
体格は圧倒的に相手が有利。しかし、徐々に相手が押されて行く。
その光景を見て、他の団員が驚きの声をあげる。
一方的な打ち合いの末、相手は成す術を持たず、胴体に痛烈な一撃を受け沈む。
ギルマスの「そこまで、勝者ギル」の声を聞いても、団員達は信じられない面持ちだった。
真正面から打ち合い負けたのだから、騎士団長の顔が青ざめる。「そ、そんな馬鹿な…」
5戦目はザッハ。相手は騎士団の副団長。
「今迄の非礼は詫びる。申し訳ない」
「俺達は何もしちゃあいねぇ、只戦うだけさ」
「しかし、この勝負負ける訳にはいかん。いざ勝負」
「望む所だ!」
「初め!」の合図と共に、両者激しくぶつかり合う。
激しい剣撃に見ている者も、手に汗を滲ませる。
心なしか、両者笑ってる様に見えた。
誰かが「楽しそう」と呟くが、あながち間違いでは無いのだろう。
まるで剣舞の様に、見る者が心を奪われる。
長くてあっと言う間のやり取り。
最後は以外な結末を迎えた。
両者の剣が、お互いの腹を打ち据える。
しかし、その斬撃に威力は無く、双方地に背中を付ける。
ギルマスから「それまで、両者引き分け!」の合図と共に、盛大な歓声があがった。
2人は握手を交わし、両陣営に戻る。
「スマン、俺だけ勝てんかった」
「勝ち負けじゃ無いよ、実力を見せれば充分さ。ほら向こうを見てみな」
そう言われ、相手陣営を見ると、騎士団の全員が、こちらに向かってお辞儀をしていた。団長を除いて。
「さあ、こっちも健闘を讃えよう」
相手に向けお辞儀を返し、騎士団との対戦は終了した。
次は魔道師団との決戦。
広めに【結界】を張り舞台を整える。
「騎士団の腑抜けと違って、魔法師団に隙は無いぞ」と魔道師団長は息巻いているが、無視を決め込んだ。
1戦目は土魔法のジン。相手は風魔法を使い、通常ならば相性が悪い。
「初め!」の合図に、相手は詠唱を行うが、【身体強化】を使用して間合いを詰める。
驚いた相手は詠唱を失敗し、魔法か霧散する。
動揺する相手の首筋に手刀を入れ気絶させた。
「それまで、勝者ジン」
余りの速さに会場は声を失う。
2戦目は火魔法のスズ。相手は風魔法使い。
「初め!」の合図と共に詠唱の短かい魔法を選択。
【加速】を唱えると距離を空けてきた。
スズは詠唱を唱える振りをして、【ファイヤーカッター】を放つ。
相手も詠唱しているが、完成が遅い。
詠唱を中断して攻撃を避けると、スズを見失う。
スズは【身体強化】を使い、既に横へ移動していた。
放たれた【ファイヤーボール】の直撃を受け、吹き飛ぶ相手に追撃を用意したが、ギルマスからストップがかかる。
続けて「勝者スズ!」の声。
相手を見ると、気絶していてピクリとも動かない。
「えっ、この威力で気絶?」と声が出た。
3戦目は風魔法のダイ。相手は水魔法の使い手。
「初め!」の合図と共に相手は詠唱を行う。
ダイはゆっくり進みながら、ダミー詠唱で【ウィンドウォール】を展開。
相手の【ウォーターボール】の完成を待ち、そのまま受けるが、【ウィンドウォール】はびくともしない。
続けて【ウィンドボール】を放つと、「同時詠唱だと!」と驚き動を止めた。
「そこまで、勝者ダイ」
「驚いて動きを停めるとは、あり得ない」と結果より相手の行動に意表を突かれた。
ギルマスから魔道師団長に確認して続行。
魔道師団長は「ありえん、ありえん、ありえん」と繰り返していた。
4戦目は魔道師団、火魔法のキャロ。相手は土魔法使い。
「初め」の合図と共に詠唱を初め、【ロックウォール】を展開。
土壁を作り防御を行ったが、【ファイヤーボール】の連発に敢え無くダウン。
2発の【ファイヤーボール】で勝敗が決まった。
「それまで、勝者キャロ」の声が呆れた様に響く。
5戦目は、水魔法のゾフィー。相手は副団長で同じ水魔法使いだ。
「初め」の合図てゾフィーは魔法を使わず、相手に向い歩き出す。
副団長は【ウォーターボール】を放つも、ゾフィーは無傷。
何事も無く向かって来るゾフィーに恐怖を覚え、【ウォーターボール】を打つも狙いが反れる。
焦る副団長にゆっくり近づき、顎へのワンパンチでダウンを奪う。
「それまで、勝者ゾフィー」
なんと、ゾフィーは魔法師団の魔法が、効かない事を証明した。【身体強化】だけで充分だと判断したのだ。
「避ける価値も無い」と痛烈な皮肉残し、陣営に戻る。
魔法師団全敗に、団長は息を飲む。
休憩を挟み団体戦を行う。
もう結果は見えているが、両団長が息巻き、参加すると言い出した。
その条件を飲む代わりに、オレからも提案を行う。
「オレからの条件はただ一つ。全員でかかってこい!」
なんと、5人対12人の団体戦提案だ。
「これで負ければ、オレの負けで良い」
「ふざけるな、勝てると思ってか!」
「あぁ、問題点を顕にしよう」
「我々に問題なぞないわ!」
「その傲慢な考えを打ち壊してやろう!」
オレの挑発に乗り、2時間後5人対12人の団体戦を行う事となった。
勿論、こちらのメンバーには変わりなし。
団体戦のメンバーは、ギル・ズイ・キャロ・ゾフィー・ジンで望む
領主様を見ると、明らかに喜んでるよ。
やれやれw




