第35話 訓練スタート
〔サーエンド〕の北側にスラムは存在する。
身寄りの無い子供、働けない大人達や、他の街からの難民がコミュニティを作り、街からの支援や、教会の炊き出しがあるも充分では無く、薬草採取や雑用で細々と生計を立てている。
領主様も対策を行ってるが成果は乏しい。
ギルマスに顔役を紹介して貰い、ある提案をおこなった。
顔役の名前は【ザッハ】。体格の良い28才の青年。
元は男爵家の四男で、スラムの事情を知り改善しようと奮闘している人物だ。
「初めまして、レンと言います」
「おいおい、ここで丁寧な言葉はいらねえよ。ザッハだ、ここらの取り纏めをしている」
「わかった、宜しく」
「して、ギルマスから提案があると聞いているんだが」
「騎士団と魔術師団を倒してみないかい?」
「はぁ?倒す?騎士団と魔術師団を?ギルマス、こいついかれてないか?」
「話しを最後まで聞いてみろ」
「わかったよ」
突拍子もない提案に驚いたザッハだったが、話しを聞く内に、興味が湧いたようだ。
「ここの住民で戦力を集めるのは判った。1つ確認して良いか?」
「良いよ」
「もし勝ったら、騎士団や魔術師団に推薦は有か?」
「それは、無いな」
「そりゃそうか。連中はスラムと馬鹿にしてるからな」
「だから、新しい組織を考えてるんだ」
「ほぅ、興味深いな」とギルマスが話しに入ってきた。
「〔ブラクス〕の憲兵隊のように、自警団を作ろうかと考えてる」
「自警団?何をするんだ?」
「街の治安維持、魔物討伐、薬草採取の警護とかね」
「維持費がかかるぞ」
「オレがスキル教えたら、魔物討伐と、素材買取りで賄えるさ。最初は投資が必要だけどね」
「独自で運用出来りゃ、こっちは助かる。なんせ、仕事を探すのに苦労してるからな」
「今回の対戦に協力してくれたら、初期費用はオレが出すよ」
ザッハは少し考えて、質問して来た。
「幾ら考えてもわからん。レンに何の特が有るんだ?」
「オレの特?………無いなw」
「ザッハ、こいつはそう言う奴だ。俺も領主様もレンの考えは理解出来ん!」
「ギルマス、非道いなぁ。説明したと思うケド」
「普通、人に喜んで貰いたい、楽しそうとかでやる奴は居ない!」
呆れるギルマスと呆けるザッハを無視して、話しを進める。
「難しく考えないで、騎士団と魔術師団のプライドを圧し折ろうぜw」
「それは面白そうだから協力するwww」
ザッハは満面の笑みで握手を求めてきた。
握手を交わすと、ギルマスが「ザッハ、簡単に決めて良いのか?」と聞いてくる。
「レンはな、一度も此処をスラムと言っちゃいねえ。それだけでもオレらは嬉しいのさ」
ギルマスが"ハッ"として頭を掻く。
「同等として見てくれる証拠さ。しかも稼ぎ方も提案してるしな」
「確かに、俺は何も言えんな…」
「と言う訳だ。レン、オレらは何をしたら良い?」
「参加したい人を集めてくれ。2日後必要な人数を選ぶ。戦闘が苦手な人員も頼む」
「任せとけ、2日後の朝に集めてやるよ」
「助かるよ、じゃあ2日後にな」
2日後、集まった人数は29名。
その中にはザッハも入っていた。
【鑑定】を使用し、対戦に必要な8人と他4名を選ぶ。
騎士団相手の4人は
ザッハ(28才)男 Dランク
ジル(20才)男 Dランク
ズイ(18才)女 Eランク
ぜミュ(19才)女 Eランク
魔術師団相手の4人は
ゾフィー(17才) 女Dランク 水属性
ダイ(20才)男 Eランク 風属性
ジン(18才)男 Eランク 土属性
スズ(19才)女 Eランク 火属性
他の4人は
ピノ(15才)男
パフィー(18才)女
ポロ(14才)男
プティ(15才)女
騎士団相手の4人は筋力・素早さが高く、魔術師団相手の4人は属性持ち。魔力・知力が高い。
他の4人は、魔力・知力高めだが、戦闘に向かない性格だった。
選定基準がオレしか判らないので、選ばれた本人達も不思議そうな顔をしていたが、とりあえず納得して貰う。
「選ばれた12名は、明日から訓練としよう。対戦までは、オレの家で寝泊まりして貰うが良いかい」
「判った。用意する物はあるか?」
「ないよ。昼過ぎにオレの家まで来てくれ。場所はここだ」
「了解!皆んな、解散だ。選ばれた者は昼過ぎに集まって出発するぞ」
「選ばれ無かった人は、他の機会に声を掛けさせて貰うよ。直ぐにとは言えないケド、期待しててくれ」
その場は別れ、使用人に来客を伝え受入準備。
レティシアにも午前中の協力をお願いした。
部屋は4人部屋で4部屋用意し、順番で風呂に入らせる。
先に合流している2人を合わせ、夕食で顔見せを行う。
騎士団と魔術師団の隊員なので、反発があるかと思ったが、経緯を話すとすんなり受け入れたな。
まあ、屋敷の豪華さと、夕食の方に気を取られ、どうでも良い感じだw
夕食後はミーティングを行う。
今後の流れを説明するが、理解は出来ていないかな?
最初の10日間は、魔力制御と言われても、首を傾げてたしね。
通常とは違う訓練に慣れてもらおう。
翌日、レティシアには属性持ちの5人を任せ、全員に【魔力感知】と魔力経路の作成を行う。
【魔力感知】に時間が掛かるも、午前中には1本の魔力経路を作れていた。
予想通り魔力に慣れていない為、感知が難しいが慣れてしまえば大丈夫だろう。
これからは、魔力経路を増やす作業を繰り返す。
5日目、習得の進捗に差異が現れた。
属性持ちの5人が【魔力操作】を習得。予想より早い。
他も魔力経路は増えているので、もう少しだろう。
8日目には、全員【魔力操作】を習得し、下準備終了。
残り2日で【魔力操作】に慣れさせる。
まだぎこちないが、身体に魔力ボールを這わせるまでは可能となった。
11日目、形式変化に手こずる。(ここが第2関門になりそうだな。魔力を薄く纏わせるのと、多箇所同時が難しいらしい)
12日目からレベル上げを追加。【魔力操作】を行いつつ、ギルドの依頼をこなす。
全員レベル35を最終日までの目標として、パーティー分け。
戦闘不慣れな4人は、最初パワーレベリングとなるが、レベルが上がれば戦闘にも参加出来るだろう。
13日目は休みとした。正し【魔力操作】を行いながら行動するように指示。
慣れるまでが大変だからね。
17日目には、全員魔力を全身に這わせる事に成功。
レベルが低いと継続時間が短い為、レベル上げを優先させる。
18日目には、数人【身体強化】を覚えた。
20日目には、何とか全員【身体強化】習得。
明日からレティシアに協力して貰い、属性持ちに魔法を教えて行く。
午前中はスキル習得、午後はレベル上げとスキルに慣れる時間とした。
24日目までの進捗は順調。
騎士団相手の5人は、【身体強化】【瞬歩】【スラッシュ】を覚え、レベルは34〜37。
魔術師団相手の5人は、【身体強化】【ボール】【アロー】 【ニードル】【ウォール】【ランス】【カッター】を属性毎に習得。レベルは33〜35。
その他4人は、【身体強化】【クリーン】【ライト】【ファイヤー】【ウォーター】【エアー】の生活魔法をメインに習得させた。レベルは28〜30と低め。
全員スキルを覚えた時は、驚いたり、喜んだり、呆気に取られたりと様々な表情を見せてくれる。
レティシアが「私もああだったんですねw」と笑っていたのが印象的。
さて、最後の仕上げを行いますか。
残りの期間は連携を重点に行う。
試合に出ない4人は、引き続きレベル上げを継続。
連携は、5人パーティーを色々組み合わせ、魔物討伐を行いながら実践。
前衛・後衛・ガードの役割分担を教え、魔法職にも前衛・ガード、戦闘職にも後衛を経験させる。
26日目は最終確認。
ラスボスはオレとレティシア。
2対5で対決を行い、対人戦の仕上げを行った。
27日目は完全休養とし、魔物狩りで得たお金を握りしめ、皆んな街に繰り出して行く。
いよいよ明日は対決の日。結果が楽しみだねw
領主様に報告がてら、試合内容を確認。
騎士団戦:5人の個人戦で3勝した方が勝利
魔術師団戦:5人の個人戦で3勝した方が勝利
団体戦:戦闘職・魔法職の代表5人同士の戦い。設置した相手のフラッグを取った方が勝利
武器・スキル使用可。限りなく実践に近い形式で勝負。正し、負けを認めた後の攻撃や、死に至らしめる攻撃は反則とする。
尚、生きていればオレとレティシアが治せるので、ある程度の怪我はOK。
大まかなルールを騎士団長・魔術師団長も交えて了承とし、領主様立ち会いで決定させた。
両団長は自信満々に嫌みを言ってきたが無視。
逆に、「ハンデは必要ですか?」と煽ってみた。
沸点が低いのか、顔を真っ赤にして喚いていたが、領主様は笑いを堪えていたよ。
夕食後、ルールの説明と対戦順を発表。
団体戦の選手は、ギルとキャロ以外くじ引きで決めたよw
「皆んな、明日は気楽にいこう!」




