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第31話 スキル祭りの帰路

 興奮する親方をなだめ、焼き入れの説明をする。

「打ち終わった剣を再度加熱して、急速冷却すると硬くなるんだ」

「そうなのか?」

「たしか加熱する温度が大事で、800℃以上だったかな?」

「800℃?なんだそりゃあ」

(この世界では、温度の認識が無いのかな?)

「鉄が溶けるには1538℃、水の沸騰は100℃といった、熱さで変化が起きる温度だよ」


 詳しく教えるときりが無いので、実際を見て覚えて貰う。

 親方に3本の剣を鍛造して貰った。

 1本を【ファイヤーボール】て熱し、810℃まで温度を上げると、剣の色が変わっていく。

 赤に黄色味が加わった色合いで810℃となった為、親方に色を覚えて貰う。

 今度は【ウォーターボール】て冷やして親方へ渡す。


 2本を【分析】で比べると、焼き入れした方が硬くなったのが判ったようだ。

 親方は「こりゃあ秘伝じゃねえか!」と言っていたが、この世界でも秘伝があるんだね。

「ただ、このままだと硬いが脆くなっているから、焼戻しが必要なんだよ」

「今度は焼戻しか」

「100℃〜200℃で1時間加熱すると、硬いまま折れ難い剣が出来るよ」

「100℃〜200℃ってどんくらいだ?」

「そうだね~鍛造の石炉1つ使って良いかい?」

「こっちの石炉は使ってないから、好きにしていいぞ」


 石炉の中にある石を150℃位に熱し、色を覚えて貰う。

 1本を焼き入れした後、石路に入れて1時間焼戻しをかける。温度は150℃をキープ。

(時間の概念もあやふやだから、大体の時間を覚えて貰おう)

 そうして出来上がった3本を比較すると、親方が唸っていた。


「ここまで品質が変わるのか!長年鍛冶をやってきて初めての体験だ!!」

「簡単な説明だけど、温度・時間・素材によって変わるから色々試してみてね。後、同じ鉄でも不純物の混ざり具合で変わるからね」

「……レン、対価は幾らだ?」

「対価?要らないよw」

「納得出来ねぇ!職人として対価は払う」

「判ったよ。お金じゃ無くて、今度必要になったら格安で剣を打ってくれるかい!」

「了解した。必ず注文してくれ。それまで腕を磨いておく」


 親方と握手を交わし、工房を後にした。

 酒場で遅めの夕食を取りながら、明日の予定を確認して行く。

「レンさんの知識は凄いですね。親方が子供の様にはしゃいでましたよw」

「たまたま、覚えていた知識が役に立ったねw」

「宴会を断って良かったんですか?」

「一晩中飲まされそうだから遠慮したよw」

「確かに一晩中飲んでいそうな勢いでしたw」


「そうだ、レティシアにもお願いがあったんだ」

「何ですか?出来る事なら聞きますよ」

「今はまだ、無詠唱の覚え方を内緒にして貰えるかい?」

「それは勿論ですよ!でも、回復魔法は使っても良いですか?」

「良いよ、多くの人を助けてあげな」

「今はまだと言う事は、その内公表するんですね?」

「考えている事があって、領主様の了承が必要かな?」


「無詠唱を聞かれたらどうしましょう」

「神様の恩恵としとくか。奇跡の聖女様だしな」

「やっぱり目立ちますよね」

「〔サーエンド〕に帰ったら領主様に報告しとくかな」

「報告はお願いして良いですか?」

「オレも直接じゃなく、ギルマスにお願いするだけだよ」

「レンさん、悪巧みの顔になっていますよw」

「おっと気をつけねば!」


 明日も早いので、酒場を後にして宿に戻る。

 予定では、〔アグリカ〕まで【身体強化】と光魔法の練習をしながら進み、〔サーエンド〕までは乗り合い馬車を使う事とした。

 道中に魔物を狩って、教会の資金も調達としていく。


 次の日、ギルドに報告してから出発。

 街を出てから【身体強化】を使用し、草原地帯を抜けて行く。

 昼近くに山岳地帯に着いたので休憩を取る。

「【身体強化】凄いですね、これだけ移動しても少ししか疲れていませんよ」

「戦闘になったら、どれだけ時間がかかるか分からないから、長く動ける事は大事だね」

「ここからは、狩りをしながら進むのでしたね」

「毛皮と肉を中心に集めようか。行きの素材もあるから、スキルに慣れる事を重点にするよ」

「判りました。頑張ります」


 休憩後はゴート・ボアを討伐しながら進み、途中で【クリーン】を教える。

 移動中、生活魔法の【ファイヤー】【ウォーター】【ライト】【エアー】を覚えさせた。

 生活魔法は魔法特性が無くても覚えられる。

 威力は無く、生活に便利な魔法だ。

【クリーン】は【ウォーター】【エアー】の複合で覚えられる。

 イメージは、身体を【ウォーター】で洗い、【エアー】で乾かすと説明した。


【クリーン】を習得が少ないのは、【魔力操作】を覚えてないか、熟練度不足と思ってるんだ。

 レティシアに教えると、直ぐに覚えたから正解かな?

「ありがとうございます。このスキル覚えたかったんです!」

 お風呂は貴族しか持っていないので、身体を川や井戸で洗うか、濡れタオルで拭くかしか無く、不満があったらしい。

 行きの旅程で【クリーン】を掛けて貰い、衝撃を受けたみたいだね。


 野営地で、レティシアに病気について聞いてみた。

 病気については対処が少なく、熱には薬草、毒には毒消し草、麻痺には月見草を煮て飲ませるそうだ。

 祈祷師という怪しい職業もあるらしい。

 全般に菌の知識が無く、単純な対応で治らないケースもあるんだとか。


 確かに目に見えない菌は存在すら知らないと判った。

 肉の腐敗やパンのカビも【分析】では[腐敗して食べられない]ぐらいしか判らないそうだ。

 厳密に言えば、毒や麻痺は異なるんだが、影響のある成分を取り除くとして説明して行く。

 ちなみに、【クリーン】レベル3以上でも除菌は出来るが、病気の治療は出来ないらしい。


 先ずは【クリーン】をレベル3まで上げて、除菌を出来る様にした。卵があれば確認出来るからね。

 次にカビの生えたパンに【クリーン】をかけて行く。

 色の薄い箇所は元に戻ったが、濃い所は変化無し。

 色の濃い所に向けて、色を無くすイメージで【クリーン】をかけさせる。

 20回を超えた所で、少し色の変化が見られたので、スキルを見てみると、新しく【キュア】を覚えていた。


 その後、パンに【キュア】をかけると、カビは無くなったが変色はそのままだった。

 こっそり【鑑定】を使うと、[変質したパン 可食不可]と出る。

(生きた細胞じゃ無ければ、戻らないのかな?)

 とりあえず、簡単な病気なら治せるだろうし、成功を喜ぼう。

 後は実践で試して貰おう。


 ふと見ると、レティシアが遠い目をしていた。

 どうやら、今回の依頼中に覚えたスキルが信じられない様だね。

「出発する前は【ヒール】だけですよ。」

「怪我を治療して、孤児院のお金稼いでいたんだっけ」

「そうです。それが今は【ハイヒール】【エリアヒール】【ライトボール】【ライトカッター】 【ライトランス】【ライトウォール】【クリーン】【ライト】【ファイヤー】【ウォーター】【エアー】【キュア】を覚えているんですケド!」


「スキル祭りだねw」

「しかも聖女と呼ばれましたし」

「病気も治せれば、本物の聖女でね?」

「たった数日ですよ!あり得ません!!」

「スキルはイメージが実感出来たね。でも聖女の噂が広がると、貴族や王家から声が掛かるか」

「間違いなく、囲い込みがあるでしょうね」

「オレと同じく、領主様にまるな……相談しよう!」

「今、丸投げと言いかけましたね」

「まぁ、〔サーエンド〕に着いてから考えよう」

「協力して下さいね」


 翌朝、結界に掛かった魔物を狩り、〔アグリカ〕へ向けて出発。

 特にレアな魔物もいなかったので、そのまま〔アグリカ〕まで進んだ。

 今日は宿で休み、明日ギルドに寄って素材を買い取って貰おう。


 レティシアも【身体強化】に慣れ、魔法との併用も問題無く出来ていた。

 これで、他の街に治療へ行く時でも、最低限身を護れる様になったな。

 教会の資金集めも、治療と狩りで行えると喜んでいた。ギルドの依頼を受けるのも有りだね。


 明日は1日〔アグリカ〕に滞在し、ギルドの後は別行動となる。

 オレは市場で食材の補充。レティシアは教会へ行く予定。

 オレも市場の後は教会へ行こうかな。

 久し振りにお祈りしなきゃね。

 ギルドには、朝のピークを過ぎた頃に行くとし、部屋に戻る。


 孤児院の子供達に[唐揚げ]と[ホットケーキ]を差し入れするかな。

 女神様と神様には、[唐揚げ]にソースを添えてお供えしよう。

 久し振りで機嫌が悪いかも知れないから、お供えでご機嫌をとるかw

(甘い物はやっぱり[砂糖]が必要だね。〔サーエンド〕に着いたら、作ってみようかな?)


 背中に寒気が走った理由を、領主様はまだ知らないのであった。

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