第30話 習得
次の日、朝食を終えた後、ギルドで採取のクエストを受け、森に向かった。
スキルを覚えるついでに、鉱石の採取も行い、教会への寄付を行う一石三鳥の腹づもり。
ダンジョンは、31階からスタートして、40階迄を周回する予定だね。
「レンさん、覚えるスキルは何ですか?」
「レティシアに教えるスキルは【身体強化】だよ」
「聞いた事の無いスキルですね、レアスキルですか?」
「いいや、【魔力操作】に慣れていれば、覚えるのは簡単だと思うよ。魔力経路を増やしたのも有利かな?」
「なぜ疑問形なんですか!」
「教えるのは初めてだからねw。まぁ、やってみよ〜」
「何か、不安しかないんですケド」
ダンジョンを進みながら手順を教えて行く。
「先ずは右手に魔力を纏わせてみようか」
「魔力を纏わせるですか?」
「そう、手袋みたいに右手を覆う感じかな」
「こうですか?」
レティシアは、右手を魔力ボールで覆った。
「魔力は薄く、膜の様に出来るかい?」
少し時間はかかったが、右手首まで薄い魔力で覆う事ができたね。
一度魔力を解いて、次は左手を覆う。
そして、両手を同時に覆う事ができたら、10分継続させてみた。
苦戦しながらも、両手を10分間キープ。
ちょうど33階への階段に着いたので、途中で休憩。
「魔力を纏わせると、何が変わるんですか?」
「身体能力が強化されるよ。疲れ難さや、攻撃・防御アップだね」
「疲れ難くなるのと、防御アップは嬉しいです」
「スキルを習得出来ると実感出来るよ」
「頑張ります!次はどうしますか?」
「魔力を両肩まで纏わせて、次の階段までキープさせてみようか」
「わかりました。少しコツを掴めたかもしれません」
肩までは難なくクリア出来たレティシアは、両足にチャレンジする。
両足に纏い歩き出すと、少し仰け反った。
「歩く感覚が少し違いますね」
「いつもより足が前に出る感じかな?」
「はい、上半身が遅れる?感じですかね」
「強化されたの判った? まだ足首までだから、影響は少ないケドね」
「足の付け根まで纏うと、更に上半身が遅れますか」
「正解!実感出来たなら、次は上半身をやってみようか」
「判りました。35階でやってみます」
「35階までは工房のルールがありそうだから、採掘は37階からやろうか」
「はい」
その後、35階では上半身、36階では下半身に魔力を纏わせて、37階で全身を試す。
「さて、全身を試してみるか。魔力の出し方は何でもいい。全身から出しても、数ヶ所から出して身体に纏っても同じだからな。自分がやり易い方法で構わない。」
「やってみますね」
レティシアは、全身から魔力を出す方法で纏わせた。
「そのまま採掘ポイントまで行こうか」
「身体が軽く感じますね」
「多分、【身体強化】のスキルが取れていると思うぞ」
「あっ、ありました」
「よし、採掘ポイントに着いたら、試してみよう」
「はい、楽しみです!」
採掘ポイントに着くと、レティシアが怪訝そうな顔をした。
「レンさん、採掘するのに道具がありませんよ?」
「道具はオレが持っているけど、最初は使わないよ」
益々怪訝そうな顔をするレティシアに、採掘の方法を教える。
「採掘や攻撃をする時は、更に部分的に魔力を纏わせる。最初の手首まで纏わせるのを、追加で出来るかい?」
「こうですか?」レティシアは、魔力の上に魔力を重ねた。
「出来てるね。そのまま手を握って、岩盤を殴ってごらん」
"ドゴン"と音が響き、岩盤が砕ける。
「手は痛く無いかい?」
「手は痛くありませんが、何か衝撃的です」
「確かに、華奢なシスターが岩盤を砕くシーンは衝撃的だねw」
「もぅ、からかわないで下さい!」
「ゴメン、ゴメン。防御する時は小さな盾を、走る時や蹴る時は靴を履くイメージで、部分的に強化すると良いよ」
「二重に魔力で全身を纏うのもありですか?」
「出来るけど、魔力消費とコントロールは激しいよ。それなら、魔力を圧縮か厚くして、1枚の方が良いかな?」
「確かに、二重にするとコントロールが難しですね」
「部分的だけだと、魔力を纏ってない箇所を傷めるから注意するんだよ」
「判りました。では、採掘を続けますね」
それから40階までの採掘ポイントを周り、クエスト素材を確保。
鉱石・宝石・魔物素材もゲットし、40階のボスに挑んだ。
ボスは〈クレイジーホーク〉。
覚えた【身体強化】で羽の攻撃を防ぎ、スキルを慣れさせる。
最初は、足と防御の多箇所展開に苦労したが、最後は同時展開+【ライトランス】でボスを仕留める事が出来る様になっていた。
「レティシアは、スキルを使いこなすのが早いな」
「そうですか?レンさんにイメージが大事と教わったので、考える様にはしてるんですが」
「充分だよ。ボスもほとんど1人で倒しているから、Cランクの実力はあると思うよ」
「ありがとうございます」
素直に喜んで貰えると嬉しいな。
「さて、41階の転移ゲートに登録して戻るか」
「夕方は工房に行くんですよね、新しい杖が楽しみです」
ダンジョンを出てギルドに向う。
【身体強化】で足を強化すると、あっと言う間に到着。
ギルドでは、クエストの報告と、素材の半分を売却して、そのまま教会へ直行する。
院長は、多額の寄付に恐縮していたが、他の教会の孤児院にも分ける事で受け取って貰った。
女神様にお祈りしようかと思ったが、まだ聖女様効果が切れておらず、祈る人が多かったので、こっそり教会を出て来たよ。
夕方にはちょっと早いが、工房に行く事にした。
「今日は〜、ちょっと早いけど来ちゃいました〜」
「いらっしゃい。あっ、レンさんりゃね。親方はまだ作業中だりょ」
「工房で待たせて貰ってもいいかな?」
「良いりょ、レンさんもやってりゅ?」
「良いのかい、是非教えて!」
オレは手持ちの鉱石を少し渡して、作業工程を教えて貰う。
鉱石を細かくする【粉砕】、熱で溶かしながら【精錬】で分離し、【錬成】でインゴットにして行く。
トプスは慣れた手つきで、5個の[鉄鉱石]からインゴットを作る
「慣れたものだね、オレも挑戦してみよう」
[鉄鉱石]をハンマーで砕いて行くと、4個目で【粉砕】を覚えた。
5個を砕き、熱を加えて上澄みを別容器に移す。
3回目で【精錬】を覚え、再度溶かして金型に入れると【錬成】が生えた。
久し振りにチートだなと感じる。
トプスは無邪気に「すごい、すごい」とはしゃぐが、周りは驚きの表情となっていた。
気になる所があったので、追加で5個の[鉄鉱石]をインゴットに変える。
オレは、【粉砕】と【精錬】の間に、錬金術で覚えた【抽出】を挟むと、純度の高いインゴットかできた。
明らかに異なる色と輝きに、周りの職人から質問攻めにあったよw
その後、形式的にインゴットを打たせて貰ったら、【鍛冶】まで覚えてしまったが、内緒にしておこう。
一通り、トプスに教えて貰うと、奥の作業部屋から親方が出て来た。
「何だ、もう来てたのか。丁度良い、嬢ちゃんこっち来な」
レティシアがついて行くと、完成間近の杖を持ち上げ、「微調整するから、持ってみろ」と手渡す。
親方はレティシアの感想を聞き、メモを取る。
「ちょっと休憩してから、微調整して完成だ!もう少しかかるぞ」
「良いですよ、お願いしますね」
休憩中、親方にダンジョンで取れた鉱石を見せると、「全て買い取る!他には渡さん!!」と言い出した。
「これだけの量があれば、暫く採掘は必要無いりょ」
「品質も問題ねぇ、ダンジョン40階近くの鉱石だな」
「へぇ、採掘した階層も判るんだね」
「鉱石の純度が上がるんだ。【分析】したら一発よ!適当に持ち込んでもバレるぞ。トプス、査定しとけ!」
「わかったりょ」
「さて、残りの作業やっちまうか。適当に暇潰してくれ」
鉱石が手に入ったからか、親方はウキウキしながら作業場へ向う。
待ってる間にインゴットを打たせてもらい、時間を潰した。
短剣を思い浮かべ【鍛冶】を使うと、道具の使い方が判る。
出来た[短剣]は低レベルだが、初めての鍛冶で形になっているのは凄いらしい。
(記念として持っていようかなw)
話しをしていると、親方が作業場から出て来た。
「おぅ、出来たぞ」
レティシアが受け取り、杖を見ると綺麗な装飾が施されていて、ヘッドには宝石が埋め込まれているが、華美とはならない仕上がりだ。
ひと目みただけでも逸品と判る。
レティシアは見惚れたまま固まっているよw
性能は文句無し!試しに【ヒール】を唱えると、【ハイヒール】並みの威力に驚く。
親方の火傷が全て治り、古傷も無くなっていた。
ついでに全員の傷を治療し、威力の調整を行う。
杖により、消費魔力が節約出来るな。
「親方、ありがとうございます」
「相性も良さそうだな、大事にしてやんな」
「お代は本当に良いのか?」
「勿論よ、今日の鉱石も合わせりゃ釣がくるぜ!」
"ガハハ"と笑うが、採算は取れていないだろう。
「親方剣を作るに焼き入れ・焼戻しはしないのかい?」
「焼き入れ?焼戻し?なんだそれ!」
「鍛造の後に、焼き入れをすると硬くなるよ。その後焼戻しをすると折れ難くなるんだったかな?」
なんの気無しに聞いた事が、親方の職人魂に火を付けた。
「知らねぇ技術か!教えてくれ!!」
「オレも詳しい内容はわからないよ。知っている事だけで良いかな?」
「勿論だ!作業場に行くぞ」と言って、オレを引きずり作業場へ向う。
(藪をつついて蛇を出したかな?)




