第28話 モンスタートレイン
35階の採掘場は3カ所。
2カ所目で他のパーティーとバッティングしたみたいだね。
様子を見る為に近づくと、口論になっていた。
「今日の採掘場は、〈ゴブル工房〉の番だぞ。ルールを守れ!」
「おっと、そうだったかな?誰も居ないから、フリーだと思ったわ」
「ふざけるな!採掘した分置いて行け」
「まだ、何も採掘してねえよ。じゃあな」
「嘘つくな。待て!」
どうやら、採掘場でのルールがあるみたいだね。
「トリ、さっさと終わりゃせて、3カ所目に行こう」
「あぁ、そうだな。3カ所目も危ないな」
4人は2カ所目を終わらせ、3カ所目に向う。
「良かった〜、3カ所目は無事だよ〜」とケラが報告する。
「じゃあ、急いで採掘するぞ。又、邪魔してくるかも知れないしな」
「了解だりょ!」
「了解〜」
オレは気になって、先ほどのパーティー動向を探っていた。
(奥に行ってるな。次の階に行くのかな?)
採取が終わる頃、違和感を感じたオレは、【索敵】範囲を広げ確認を行う。
すると、離れた場所に魔物が集まり、採掘場に向かっていた。
(先頭は、さっきのパーティー?)
採取を終了している4人に声を掛け、状況を伝える。
「まさか、あいつらモンスタートレインをやりやがったな」
「不味いりょ。逃げりゅ?隠れりゅ?」
「この近くに隠れる場所は無いね〜。少し離れた所まで逃げよ〜」
「よし、行くぞ!」
4人は走り出すが、荷物と採取後で動きが鈍い。
とうとう、先頭を走っていたパーティーに追い抜かれる。
追い抜く際に、「ざまあみろ!」と聞こえたので、態とだろう。
(ちょっと懲らしめが必要だね)
オレは、3人を【ネット】で捕らえ、ギリギリの【結界】で覆う。
その先の通路を【ウィンドウォール】で塞ぎ、4人を保護する。
壁の前には、押し寄せて来る魔物の群れ。
捕らえられた3人はパニック状態になっていた。
一先ず放置して、トリに話しを聞く。
「あいつらは、〈ゼブルの鍛冶工房〉の職人さ。工房主のゼブルは親方の弟で、対抗意識が強く、何かと絡んで来るんだ」
「今日の様な、危ない嫌がらせは初めてだね〜」
「モンスタートレインは、ギルドで禁止行動となっています。最悪命の危険がありますので」
「とりあえず、本人達に聞いてみるか」
3人の結界を少し広げ、こちらの壁に繋げる。
「さて、素直に話す気はあるかな?」
問いかけるが、3人はパニックを起こし、「助けてくれ」としか言わない。
「話せないなら仕方がない。【結界】を解くかな?」
3人は涙目になり、「話します、話します、助けて下さい」と懇願する。
そりゃあ恐いよね。周りは魔物だらけで、自分達は動けないんだから。
「誰に頼まれた?」
「ウチの兄弟子に、邪魔して来いって‥‥」
「モンスタートレインも兄弟子の指示?」
「それは‥‥」
3人の目が泳ぐ。(何か隠してるかな?)
「じゃあ、後は兄弟子に聞くよ。君たちは必要無いかな?」
【結界】を少し縮めると、洗いざらい話してくれた。
兄弟子に言われたのは嫌がらせのみ。
ダンジョンに入る直前、ギルド職員に「依頼を受けないか?」と声を掛けられた。
「2人を狙って、モンスタートレインを仕掛けろって」
「ギルド証剥奪になるし、危険だから最初は断ったんだ」
「ギルド職員は、〈ゴブル工房〉は、ギルマスに優遇されて、ズルしてるって」
「付き添いの冒険者はBランクだから、35階の魔物くらい楽勝だし、モンスタートレインは揉み消せると聞いて、素早さアップのリングを渡された」
「ギルド職員の名前は判る?」
「初めて見る顔だった。入ったばかりって言ってた」
(ギルド職員かも怪しいね)
「今聞いた話しを、ギルマスと親方の前で言えるかい?」
「俺たちはどうなるの?」
「勿論、罰は受けるさ。それより、君たちの身が危険だな」
「何で?」
「話しを全て知っているからさ」
3人は青ざめる。その先が想像出来たのだろう。
「どうしよう」
「本当の事を言って、保護して貰うのが一番だね」
少し考えて、対応策を練る。
「先ずは、魔物を討伐して、今後の事を話そう」
「いっぱいいるりょ」
「大丈夫だから見ててね」
オレは【結界】の内側から【ロックパレット】を放つ。
放たれた散弾が、魔物を[魔石]とドロップ品に変えて行く。
討伐終了後は、[魔石]とドロップ品を回収して、31階まで戻る。
「さて!この後、君たちには囮になって貰うよ」
全員が驚く中、脱出の手順を話した。
4人がダンジョンから勢い良く飛び出す。
「早くギルドに報告するぞ。まだレンさんが戦ってる。応援を呼ぶんだ!」
駆け出した4人の後、周りわを伺う様に3人が出て来る。
「上手くいったな。後は報酬を貰うだけだな」
そう言って建物の影に入ると、依頼して来たギルド職員が手招きをしていた。
「依頼は完了したぜ。さぁ、報酬をくれよ」
「判った、報酬を受け取りな!」
そう言って、ギルド職員はナイフを突きつけた。
"ガキッ"と音を立てて、ナイフが弾かれる。
「やっぱり騙したんだな!」
「ちっ」と舌打ちして、ギルド職員は踵を返し走り去った。
3人は「ふぅ~」と息を吐く。「これで良い?」と問いかけた先にはレンがいた。
「上出来だ。さぁ、ギルドに行くぞ」
ギルドの応接室に集まり、事の経緯を話すと、3人は工房主に殴られ、顔が腫れている。
多分、兄弟子の未来も同じだろう。
「ゴブル、レン済まなかった。工房主である儂の責任だ」
「まだ、解決してねぇ。ガキ共を守ってやれ」
そう言って、ゴブルがオレを見た。
「すまねぇレン。身内のゴタゴタに巻き込んじまった」と頭を下げる。
「頭を上げて。もしかすると、オレも関わってる可能性あるよ」
ギルマスに、街の地図を出して貰い、数ヶ所に✕印を付ける。
「偽のギルド職員は、この建物にいるよ。建物内には合わせて4人居るね」
「普通の民家だな。隠れ家か?」
「接触した人がいて、その後この建物に入ったよ」
「ここは、ラグー男爵の屋敷だな」
「そして、屋敷の1人と接触してるね」
「そいつが黒幕か!」
「で、どうするつもりだ。証拠が無いぞ」
「先ずは、偽職員を捕まえますか」
「レン、建物の中は変わりないか?」
「大丈夫、4人のままで動きは無いよ」
「よし、オレとゼブルで突入する。レンは抜け道から逃げたヤツを捕まえてくれ」とギルマスから指示がある。
「了解!」
「行くぞ!突入だ!」
突入後、1つの光点が建物の外に移動する。
(見当たらないから、隠し通路か下水道を使ってるかな?)
光点を追って行くと、街外れの小さな小屋で止まった。
少し待って、小屋から出た所を【ネット】で捕獲。
悪態をついて、うるさいから少し気絶して貰う。
小屋の中を見ると、下水道に繋がる縦穴があった。
人力で掘ったのかな?縄梯子が下がっている。
小屋には、隠し部屋も発見。
書類があったので、確保しておいた。
担いでギルドに戻ると、全員揃っている。
他3人も確保済。
(さて、色々聞きますか!)
偽職員が目を覚ますと、一瞬驚いたが、その後はだんまりを決め込んだ。
「ギルマス、ちょっと試したいごう‥‥尋問方法があるんだけど、試していい?」
「レン、今言い直したな‥‥まぁ、いいぞ」
「ありがと。レティシア手伝って」
「私ですか、何をするんです?」
「【ヒール】の訓練w」
個室を借りて【結界】を張る。
今は、オレ、ギルマス、レティシア、偽職員の4人がいる。
「レン、【ヒール】の訓練て何するんだ?」
「単純に切って、直しての繰り返しだよ」
「おまっ‥‥‥鬼だな」
偽職員の顔色が少し変わる。
「その前にっと。誰に頼まれたのかな?」
偽職員のだんまりは変わらない。
「さて、レティシア。【ヒール】のおさらいをしよう」
「はい」
「【ヒール】は切り傷・打撲は治せるね。治せないのは?」
「病気・状態異常・骨折・切断・欠損です」
「OK!では、治せる傷の深さは?」
「浅い傷ですね。深い傷は難しいです」
突然、レンが偽職員に切りつける。
小さな傷だが、ギルマスと偽職員は驚いた。
「これを治してみて」
【ヒール】を唱えると、跡形も無く傷が消える。
「合格!これは?」更に深い傷を付ける。
繰り返す事数回。レティシアは【ヒール】の熟練度が高く、結構深い傷も治していた。
「レンさんの言う通り、繋げる・塞ぐを意識すると、深い傷を治せました。ただ、場所によっては時間がかかります」
「血管の太さや、内臓の近くかな?」
場所を聞くと、首筋・手首・腹部・足の付根らしい。
「ここ迄深い傷を治せるなら、もう一息だね」
ギルマスは青ざめ、偽職員は怯えの色が強くなる。
「さぁ、ここからが本場だよ!」
「はい!!」やる気満々を見せる。
「レティシア?前は嫌がって無かった?」
「だって、この人レンさんを狙ったんですよ。また狙われ無い様に、とことんやりましょう!」
(レティシアが【メンヘラ】のスキルを覚えて無い事を祈ろう)
「じやあ、【ハイヒール】と【ヒール】の違いは?」
「深い傷・骨折・切断を治せますね」
「正解!深いキズは直せるから、次は骨折だね!」
偽職員が、顔を横に勢い良く振る。
「骨はくっつけるが良いかな?」
試す事数回。最初出来なかった治療も出来る様になった。
「最後は、切断の治療だね」
ここに来て、偽職員から「何でも話す、止めてくれ」と懇願される。
「最初から素直に話せば良かったね。今更遅いと思わない?まだ、付き合って貰おうか」
偽職員の目が大きく見開く。
「切断は、骨を繋いだら深い傷を一周治す感じだね。繋げる向きに注意だよ」
「判りました」
手の指を数本切断して、レティシアに治させる。
6本目から光が強くなり、確認すると【ハイヒール】が習得出来ていた。
「おめでとう。後数回練習しようか」
ここで偽職員が気絶した為、終了とした。
「エゲツねぇな」とギルマスの感想。
「子供達が狙われる危険あるしね。ちょっとやり過ぎたけどw レティシアも協力ありがとう。良い演技だったよ」
「えっ、演技ですか?」
「「‥‥‥」」
「とっ、とりあえず【ハイヒール】習得おめでとう」
「ありがとうございます。こんな習得方法があったんですね」
「本当は、依頼中や教会で、怪我の治療で覚えて行くんだけどねw」




