第21話 一斉検挙
「さて、手順は確認したな。手はず通り行くぞ」
いよいよ、アグー商会の査察が始まる。
領主様を筆頭に、騎士団と魔術師団の、数名がチームになる。
既にボケ子爵と北の教会へは、他のチームが向かっていた。
アグー商会へ着く前に、【索敵】で人数の確認を行った。
屋敷の前の数名は出迎えかな?
屋敷の中は使用人だろう。
件の隠し部屋には、七人の反応がある。
(警備がいるかな?)
領主様に伝え、注意を促す。
「これはこれは領主様、お待ちしておりました」
アグー商会長が、数人引き連れて挨拶してきた。
「今日は、通報があった件の、査察に協力して貰うぞ」
「畏まりました。案内します、こちらへどうぞ」
悪びれた仕草も無く、一同を書類のある部屋に案内した。
「脱税の疑いでしたね、帳簿をご確認下さい」
「数ヶ所部屋も見せて貰うぞ、商品の確認もしたいからな」
商会長は、少し驚いた表情を見せたが、直ぐに胡散臭い笑顔に戻る。
「どうぞ、案内をつけますね」
(多分、見つかる筈が無いと思ってるんだろうな)
「ではレン、そちらを頼む」
領主様には狭い範囲で【結界】を張っていた。
この建物内であれば、離れても機能する。
護衛の1人を連れて、例の部屋へ向う。
そこは、商品保管室で、棚や木箱に在庫が、整理されている。
一見、只の倉庫だが、大きな木箱に近づき、上蓋を開ける。
中には、ギッシリと鉱石が入っていて重そうだ。
しかし、その木箱には仕掛けがあり、裏側の隙間にレバーがあり、操作すると車輪が出て木箱を浮き上がらせる。
(女神様に教わった通りだね)
木箱を手前に引くと、地下へ通じる階段が現れた。
案内係は驚き、走って部屋から出て行く。
護衛の1人も、領主様に報告する為、部屋を出る。
1人残ったオレは、「さて、探検しますか」と階段を降りていった。
階段の先には広い空間があり、奥の壁に牢屋が見える。
横の部屋から2名のゴロツキが現れ、「何者だ、てめぇ」と息巻いた。
(たしか、7名のハズ)
周りを見渡すと、牢屋の中に5人の子供が、うずくまっているのが見える。
「人身売買かな?」そう言うと、ゴロツキの2人が襲いかかってきた。
「遅いね」と、2人に【ネット】を放つ。捕獲完了。
2人が出てきた部屋を見ると、書類や金庫が見える。
その数枚を見ると、[顧客リスト][販売契約書][襲撃計画]の文字が見える。
「証拠は充分そうだね」
牢屋に入れられている5人を確認すると、まだ小さな子供達だった。
男の子2人に女の子3人、皆怯えた表情をしている。
「大丈夫、助けに来たよ」と声を掛けると、泣き出してしまった。
程なくして領主様がおりてきた。
現状を確認し、眉を潜めている。
子供達を保護し、証拠品は【アイテムボックス】に入れる。
領主様に聞くと、上でも一悶着あったみたいだね。
領主様と商会長、それぞれに連絡が行き、商会長は逃げようとしたそうだ。
捕まえようと、我先に騎士団は詰め寄り、魔法師団は魔法を放ち、混乱状態に陥った。
「危うく逃げられそうになった」と溜息混じりで話してくれる。
連携取れて無いなのが、一目瞭然だね
商会長とゴロツキ2名を連行させ、俺達は他の2箇所に向かった。
北の教会は問題無かった。院長を拘束し、隠し金庫を開ける所だった。
書類や帳簿、金貨を【アイテムボックス】に回収し、ポケ子爵邸へ向う。
ポケ子爵邸に着くと、問題が発生していた。
隠し扉を発見した瞬間、ポケ子爵が逃げ出し、騎士団と魔道師団が独断で動いた為、混乱に乗じて立て籠もられたみたい。
部屋の前で、私兵団と騎士団が小競り合いを繰り広げていた。
領主様は溜息をつき、「レン、頼む」の一言。
オレは、【ネット】を放ち、敵味方構わず捕獲。
部屋のドアを壊し、中にいるポケ子爵と取り巻き3人も捕獲した。
「騎士団と魔道師団の連携は、頭の痛いことだ」と、領主様は呟いた。
なんとか、3カ所を制圧し、証拠品も確保。
証拠品を領主邸で出すと、改めて凄い量となった。
比較的量が少ない教会から精査して行く。
「聖職者とは思えんな」
領主様がそう思うのも無理はない。
・支援金の横領と私的流用
・孤児の人身売買の提供
・孤児の収益金搾取
・賄賂の受渡し
受け入れ拒否が可愛く見える
続けてポケ子爵の証拠品を見て行く。
・脱税と横領
・人身売買の斡旋
・敵対者への暗躍依頼
・禁制薬物の栽培
・領主様への暗躍計画
・賄賂の受渡し
・暗躍ギルドへの資金提供
ギルドでのいざこざなんて、小さいね。
今日はここ迄。アグー商会は明日に持ち越された。
予想以上の内容に、別対応が必要となった為だ。
禁制薬物の栽培地強襲と、現場での取り押さえが加わる。勿論、強制参加でした‥
合計3カ所の栽培地では、ガードしていた冒険者崩れと戦闘になったが、"サクッ"っと聞こえただけで終了したよ。(【ネット】って超便利!)
翌日、アグー商会の証拠品では、
・脱税と横領
・人身売買
・禁制薬物の販売
・賄賂の受渡し
・違法取引
・不当搾取
が発覚し、こちらも別案件が持ち上がる。
証拠品に、人身売買や禁制薬物の顧客リストが見つかり、予想以上に多くの貴族が関わっている。
侯爵様の判断も必要とされた。
後日、北の教会は一時閉鎖。ポケ子爵は爵位剥奪。アグー商会は取り潰しとなる。
「予想以上の成果だな。よもやここ迄大事とは」と、領主様が溜息をつく。
部屋に居る、オレとハッシュさんが頷く。
ちなみに、〔アルケラ〕〔アグリカ〕のギルマスとガディさんは、昨日領主邸を後にしている。
「早期とは言えないが、判明して良かったじゃねえか」
「まだ、未解決の案件が山積みだよ」
「侯爵様の判断も必要だしな」
「あぁ、前倒しして依頼品も届けるよ」
「いつ出発だ?」
「報告書が出来次第だな。2日後ぐらいか」
「では、俺達もお役目御免だな」
「あぁ、レン。報酬は少し待ってくれ。侯爵様と協議してから決める」
「構わないよ」
「今回、レンの貢献が大きいので、期待しててくれ」
「判った、期待しないで待ってるよw」
「レン、これからどうすんだ?」
「少し休んで、〔ブラクス〕か〔クラフリ〕に行ってみたいな」
「鍛冶の街にクラフトの街だな。」
「色んな街を見て見たくてね。」
「レン、侯爵様から呼び出しがあるかも知れん。行く時はハッシュに伝えといてくれ」
「えぇ、気が進まないなぁ。会わなきゃダメ?」
「ここ迄関わるとな。まぁ、悪い結果にはならんよ」
「王様までは会いたく無いな〜」
「今回は大丈夫だ。悪さした中に王族も居たからな。侯爵様から釘を刺して貰う予定だ」
「今回は ねぇ‥‥」
「そうだ、侯爵様へのお土産に[ジェネラルソード]も持ってく?」
「「!!」」
「レアドロップ品じゃあねえか!お前という奴は‥」
「レンはビックリ箱だな。それは私が買い上げて、侯爵様に献上しよう」
「レン、本当は呼ばれたいんじゃないのか」
(あれ、やらかした?)
「さて、オレもギルドに戻るか」
「突き合わせて悪かったな。報酬は後で連絡する」
「この街が良くなるなら構わんよ」
「そうだ、レン。妻から【クッキー】をお茶会に出して良いかと聞かれてた」
「良いですよ。了承を取る必要無いですよね?」
「あのなぁ、【クッキー】もレシピにして、料理長に渡しただろ?登録を待ってくれとお願いしたが、独占出来る料理なんだよ」
「そうだぞ、今はウチで独占出来るから、交渉材料になる代物だ」
「【砂糖】が高価だから、レシピ登録する気はないよ。【砂糖】が安くなれば、登録するかもだけど。領主様が好きに使って」
「全く欲の無い事よ。確かに、【砂糖】は北侯爵様の独占で流通量も少ない」
「作るのを禁止されてるの?」
「禁止はされておらんが、作り方が判らんので、実質独占だな。材料は【イモー】みたいだがな」
(ビートかな?ジャガイモじゃあ無理だよね。間違った情報も作れない一因かな?)
「そうなんだ、残念」
「何か嫌な予感がするが、【クッキー】は有り難く使わせて貰うよ。妻も喜ぶ」
ようやく、領主様からのお呼ばれは終了。
(色々あった気がするけど、まっ良いか!)
領主様は、ギルドまで馬車を用意してくれた。
ギルマスと一緒に領主邸を出る時、多くのメイドさんと料理長が見送ってくれた。
「お前さん、メイドも手懐けたのか」
「人聞きが悪いなぁ。料理長も居たから、料理のお礼でしょ」
「以前、オレの見送りは、執事1人だったぜ」
「親切にするのは大事だねw」
「物は言いようだ。お前さんは、やり過ぎだがなw」
ギルドに着いて解散とした。
「遠出で街を出る時、言って行けよ」
「了解!呼ばれない事を祈るよ。じゃあね」
「お疲れ」
さて、少しゆっくりしますか。




