第20話 領主様の決断
驚きの内容に、意見が飛び交う。
「神託の審議は、これで確認出来るな」
「1カ所確認出来れば、他の2箇所も疑う余地無しだ」
「別々に確認すると、証拠隠滅されるかもしれんぞ」
「1日で行うのが宜しいでしょうね」
突然会議が始まった。
予定しているアグー商会の査察で、見取り図の場所を確認。
判明したら、伝令を走らせ、他の2箇所に待機させた騎士団が乗り込み、証拠を確保。
同時に身柄拘束の手順が決まって行く。
夜も更けて来たので、細かな内容は明日とし、本日は解散となった。
明日の会議は、オレも参加となり、決行する迄領主館に泊まりが決まる。
明日帰りたい旨を伝えると、「逃さん!」とハッシュさんに肩を掴まれた。
翌日、日時・配置・人選・人数を決め、騎士団と打ち合わせ。
冒険者へも依頼し、明日決行の段取りを進める。
オレは領主様の護衛として付き添い、万が一に備え
【結界】でガードを行なう。
ちなみに、ガディさんはお留守番。いいなぁ。
お昼は、厨房にお邪魔して、[エッグサンド][ポテサラサンド]を作る。
会議中でも片手で、簡単に食べられるのでオススメさ。
領主様は、手づかみNGを心配したが、遠征や討伐の経験で、抵抗無しと聞き問題無し。
結局、美味しさと珍しさで、会議を中断して食べたよ。意味な〜しw。
夕方近くに打ち合わせが終了し、後は自由時間となった。
メイドさんにお風呂があると聞き、早速入りに行く。
広い浴室に、大きな湯船。久し振りのお風呂に気分が高まった。
身体を洗い、湯船に浸かる。程よい温かさに身体が緩む。
「はふぅ〜〜。気持ち良い〜。こっちの世界で風呂に入るのは初めてだな〜」
「こっちの世界?レンには秘密がありそうだね」
(しまった、油断した)
後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには領主様が立っていた。
(‥‥‥領主様、前を隠して下さい)
「そう警戒するな。レンは敵なのか?」
「敵?違いますよ。」
「秘密なのは判るが、話して貰えないかな?」
そう言って、領主様は湯船に入ってきた。
「正直に言うと、私はまだ味方か敵か、決めかねてるんだよ。不明な点が多いからな」
「自分では、不明な行動をしていると、思って無いんですケドね」
「報告を受けた内容は、どれも信じがたいものだったよ」
(完全に自分の失敗だよね、領主様なら話して良いかな)
「お話しますが、信じて貰えないかも知れませんよ」
「ありがとう。食事の後に時間を取ろう」
「判りました。しかし、敵かも知れないのに、良く入ってきましたね。」
「人を見る目はあると思ってる。ゆっくり話をしたくてな」
「メイドさんが風呂を進めたのは、領主様の指示だったのですね」
「警戒を解いてくれ、敬語になってるぞ。その通りだ」
「普通は止められるんじゃ?」
「レンがメイドを手懐けたからな。好意的な話ばかりだったぞw」
「[ホットケーキ]や[クッキー]の試作を出しただけだよ、手懐けたなんてw」
「甘い物で釣り上げたかw」
「人をタラシみたいに‥‥」
「www よし、話を楽しみにしてるぞ。」
「信頼出来る人なら、同席させても良いいよ」
「助かる。1人で会うと危ぶまれるからな」
「では、夕食の後で」
「ゆっくり自慢の風呂を堪能してくれ」
「ありがとうございます」
「私も君を信用するよ」
そう言って、領主様は先に上がって行った。
(まあ、後は野となれ山となれだ)
食事の後、案内された部屋には、領主様とハッシュさんの2人が居た。
「座ってくれたまえ。ハッシュを同席させた。」
「えぇ、構わないよ」
「この部屋は【防音】を掛けているから、安心してくれ」
「周りに誰も配置してないんだね」
「やはり、判るか‥。それもスキルか?」
「【魔力探知】【索敵】【サーチ】を使ったよ」
「すげぇな!オレは【気配察知】しか使えんぞ」
「昨日は、廊下にメイド1人、隣の部屋に2名、天井に1名いたねw」
「降参だ、監視したのは謝る」
「別に良いよ、警戒するのは当然さ。さて、何から話そうかな?」
「オレは違う世界から、偶然に来た異世界人だよ」
そう切り出した。
女神様との関わりや、ガイドの妖精にレクチャーを受けた事、初めてのレシピや食べ物の出所を、素直に話す。
「確かに、信じられない内容だな。神託が無ければ、妄想癖を疑うところだ」
「行動や考え方がズレてんのも、そのせいか?」
「だろうね、自分ではズレてると思ってないんだ」
「そうなのか?」
「これがあったら便利、あれが食べたい、喜ぶかな?としか考えてないんだよ。神託は予定外だけどねw」
「それらが、異世界の基準だから、私達には新鮮に映るんだね」
オレは、「多分」と頷く。
「女神様とは、いつでも交信出来るのかい?」
「多分、教会の女神像にお供えしたら、話は出来ると思うよ」
「今回みたいな情報もか?」
「それは無理じゃないかな?本当は下界への干渉はNGなんだ。今回はひど過ぎる行いに、神様が見て見ぬふりしてくれたみたい」
「以外といい加減だな‥」
「女神様の神託も、[ホットケーキ]のおねだりだったからねw」
「魔法の威力は、増幅するスキルがあるのかい?」
「単純に、レベルと熟練度だと思う。今レベル88、熟練度は中級以上だしね」
「レベル88!!Aランク並みじゃねえか」
「全属性中級なのかい?」
「【水魔法】だけ上級で、他は中級だよ」
「とんでもねぇな。普通1つか2つの属性が中級でも、大魔道士だぜ」
「これは、【極み】【経験値10倍】【熟練度10倍】のお陰だね」
「初めて聞くスキルばかりだな」
「理解と成長が早くなるスキルだね」
「無詠唱は、誰でも覚えられるのかい?」
「多分ね、【魔力操作】の精密なコントロールと【魔力感知】があれば。後はイメージが必要。」
「イメージ?詠唱では無く?」
「魔法はイメージが大事と教わったよ。詠唱は知らないもんw」
「お前さん、武器は扱えるのか?」
「武器関係のスキルは無いけど、接近戦も出来るよ」
「素手か?」
「と言うか、【身体強化】で防御や逃走がメインかなw
強化したら素手も有りだね」
「また、知らないスキルが‥‥」
「【魔力操作】で身体に魔力を纏い、身体の部位を強化するスキルさ」
「簡単に言うな、簡単に!」
「それと、訓練したら武器スキル取れると思う。試して見る?」
「要らんわ!」
考え込んでいた領主様が口を開く。
「レン、どうか我が領地に、居を置いてくれないか。勿論便宜は図る」と頭を下げてきた。
「ちょ、ちょっと領主様、頭を上げて下さい」
急な提案にオレは驚いた。
「領主様、いきなりどうした」とハッシュさんも驚く。
領主様は、オレの話を聞いて、危機感を覚えたらしい。
能力がバレると、間違い無く貴族や王家が動き、無理難題を言ってくるだろう。
自分の自由にならなければ、刺客を仕向ける可能性もある。
その時、レンが味方であるはずが無い。
「この国が滅ぶぞ」と締め括った。
「王族の命令には、逆らえないんじゃ無い?」
「南侯爵様を味方に付ける。なにせ、王様の弟だからな」
「それじゃあ、公爵様じゃあ無いの?」
「前侯爵様の娘を好きになってな、継承権を放棄して婿入りさw」
「行動力がありますねw」
「だからレンが領民だと、話を通し易い。上からの強制も嫌いな方だからね。侯爵様と共有しても良いか?」
「領主様の判断に任せるよ。信頼出来る人は連れ来て良いといったからね」
形式的には〔サーエンド〕の領民となるが、行動は自由を約束された。
「領地に何かあった時は、手伝ってくれると有り難い」と言われたのでOKしたよ。
爵位を打診されたが断った。
家は領主様が用意してくれるんだって。
タダより高い物はないが、貰えるものは貰っておこう。
ハッシュさんから、「自重はしろよ」と釘を刺される。
「もしかして、夫人も了承済?」
「良く判ったな」
「魔法を見せた後、考え込んでいたからね」
「あの後、「レンさんは、必ず味方に付けるべきです」と言われ、妻のほうが、判断早かったよw」
(もしかして、尻に敷かれてる?)
夜も更けた為、今夜は解散。
明日は大事な用があるからね。
名残惜しそうな領主様から、「出来れば、また話を聞きたい」と言われ、OKしておいた。
オレが去った部屋では‥
「ハァ、これで良かったのか‥」
「ここまで凄いとは‥」
「2人では荷が重い。南侯爵様を巻き込もう」
「あぁ、賛成だ!」
「明日は、間違い無く証拠が出るな」
「疑う余地がねぇな」
「やっと処罰出来る。楽しみだ!」
「程々になw」
3人の悪党に未来は無くなった。




