第19話 晩餐会
時間となり晩餐会の部屋に案内された。
綺羅びやかな装飾に、豪奢なシャンデリアが並ぶ。
ガディさんが座っている隣を勧められた。
「レンさん、休まれましたか?」
「厨房で[ホットケーキ]を焼いていましたよw」
「ははは、レンさんらしいですねw」
「しかし、凄い部屋ですね」
「ここは、特別な時に招待される部屋ですね。私も初めて入りました」
「オレは思いっきり場違いですね」
「私もですよ、緊張して味がわからないかもしれませんなw」
「確かにw」
他愛もない話をしていると、ギルマス達が案内されてきた。
「珍しいな、この部屋に案内されるのは」
「レン、お前さん領主様に気に入られたな」
「オレは初めて会ったんですよ、それはないでしょう」
「案内された席が物語ってるよ」
席順は、上座2つは領主夫妻だろう。
テーブル角を挟んで、両わきが1つづつ空いているのは、子供達かな?
扉から奥の椅子は、空席・オレ・ガディさん。
手前のは、空席・ギルマス3人が座っている。
「席順て関係あるの?」
「勿論レンの横は長男だよ、不審な者に身内の横は座らせんさ」
「ギルマスは、襲撃に備えて扉側が多いですよね」
「ガディさん、席代わりません?」
「嫌ですよ、益々味がわからなくなるじゃあないですかw」
その時、メイドに案内されて、領主様と家族が入ってきた。
全員席を立ち礼をする。
「あぁ、面を上げてくれ、レンは初めてだな、紹介しよう、妻の【シャラ】、息子の【ロイ】、娘の【ミュイ】だ」
「お初にお目にかかります。Bランク冒険者レンと申します」
「皆、座ってくれ」
それぞれの席に座ると、「レンさんの言葉は丁寧ですね」とシャラさんが声を掛けてきた。
「敬語は必要ないぞ、ハッシュなんぞ、「ハッシュだ!」で終わったからなw」
「蒸し返さんでいい。しかし、お前さんもしかして育ちが良いのか?」
「いや、言葉として知ってるだけだよ」
ガディさんから「レンさんは、使い分けてそうですね。どっちが使い易いですか」と聞かれた。
「中途半端に覚えた敬語だから、変な言葉遣いは、気づかない振りしてくれると助かるよ」
「大概の冒険者はがさつだからなw」
「気楽に話してくれて構わんよ。さぁ、食事にしよう」
執事が"パンパン"と手を叩くと、メイドが食事を運んできた。
「遠慮なく食べてくれ」
食事も中盤に差し掛かると、ハッシュさんが声をかけてきた。「レン、どうやって〈ワイバーン〉を捕まえたんだ?侯爵様に説明出来んから教えてくれないか」
「えっ、あの〈カラードワイバーン〉を狩った方なんですか」
ロイ君が目をキラキラさせている。
「たしかに、侯爵様へどう説明するか困っているな」
「良いですよ。ですが、食事の後にしませんか。食欲が無くなるかも知れないので」
「あぁ、そうだな。出来れば魔法も見せてはくれないか」
「貴方は本当に魔法が好きですね」
「僕も見たい!」「私も!」
「では、食事の後にでも」
和やかな雰囲気の中、食事は進み最後のデザートとなった。
「本日は、レン様から教えて頂きました[半氷果][クッキー]となります。[半氷菓]は溶けるので早めにお召し上がり下さい」
執事が説明をする。
「どっちも初めて聞く名前だね」
「どんなデザートなのかしら」
「冷たくて美味しいわ」
「シャリシャリしてて面白いね」
「お父様、お母様、[クッキー]がサクサクで甘いです」
「レン、お前は自重を知らんのか」
「てっきり、レシピを渡した[ホットケーキ]が出てくると、思ってましたのに」
「これらはレシピが無いんだろ?」
「この短い時間で‥」
「あっ、[クッキー]は[砂糖]を使いますから、一般には出回り難いですよ」
ハッシュさんが、「オレはもう諦めた!」と天井を見あげた。
(何を諦めたんだろうね)
食事後、少し休憩してから、魔法を見せる事となった。
屋内の広い部屋へ案内される。
魔法開発を行う部屋で、壁には魔法障壁が張られている。情報が漏れない様に、屋内で開発していると説明された。
「さて、レンの得意な魔法を見せてくれないか。魔法障壁があるから、威力は手加減しなくていいぞ」
「実は、手加減無しで放った事は無いんですよ。自分でも威力が判らないんだけど‥」
「それなら、尚の事試してみるといい。魔法師団が自慢する障壁の強度も試して見たいしな」
「判りました。一応皆さんに【結界】を張りますね」
「得意な魔法は何なの?」とロイ君が期待の目で見つめてきた。
「ん~~、一応全属性使えるケド、今回は【ウォーターランス】にしようかな」
「ちょっと待て!」とハッシュさんからストップがかかった。
「今、全属性が使えると言ったか?」
「うん、使えるよ。ほら」
オレは指先に全属性の【ボール】を浮かべた。
領主様が「確かに無詠唱、全属性、しかも同時発動‥」と少し興奮気味。
ガディさんや他のギルマスは、遠い目をしてる。
子供達は感心してるね。
シャラさんは、何か考え事をしてるのかな?
いつの間にか、魔法は【水魔法】が上級、他は中級になっていた。【水魔法】は良く使うからね。
「で、では見せてくれるか。出来れば少し上の方を狙ってくれ」
床や天井から的が配置されている。
なるべく天井に近い壁にある的に狙いを定める。
(全力と言われたケド、壁を壊したらマズイよな。7割ぐらいにしよう)
手を上に挙げ、槍の形を作る。7割の魔力を加えると、音が"ブゥン"から"キイィーン"に変わった。
皆んなに目で合図すると、領主様が頷いたので、【ウォーターランス】を放つ。
爆発と派手な音が響き渡り、【ウォーターランス】は空に向かって飛んで行った。
外や廊下から、「今のは何だ?」「敵襲か?」「領主様大丈夫ですか?」「壁に穴が空いてるぞ、注意しろ」と騒がしくなった。
(ヤバイ、壁を壊しちゃった)と思い振り返ると、皆んな彫像の様に固まっていた。
「すみません、壁を壊してしまいました」
領主様が我に返り「それは問題無い」と言ってくれてホッっとした。
「それにしても、凄まじい威力だな。上に放っていなければ、街に被害が出たかもしれん」
「【結界】も凄いな、あの爆風が全く感じられんとは」
「皆んなに怪我がなくて良かったよ」
領主様夫妻は、指示を出し、騒ぎを治めた。
別室に移り、〈ワイバーン〉の捕らえた方法を話す事にした。
「【ウォーターニードル】で翼の付け根を狙い、落ちてきたら【ネット】で捕らえて、止めを刺したんですよ」
「簡単に言ってるが、繊細なコントロールと、皮を貫く威力がいるぞ」
「傷があるようには見えなかったな」
「最初は、【ウォーターランス】で仕留めたんだど、大きな穴が空いたよ」
「あぁ、2匹の内、1匹は翼に穴が空いてたな」
〔アグリカ〕のギルマス、ミラーさんが思い出す。
「お前さん、魔法の師匠は誰なんだ?」
「師匠はいないよ。魔法の発動までは、教えて貰ったけど」
「まさか、独学なのか?」
「そうなるかな?魔法に詠唱が必要な事も、知らなかったし」
「あっ、魔法はイメージが大事と教わったな」
「とことん規格外だな。頭が痛くなってきた」
「大丈夫?【ハイヒール】かける?」
「【ハイヒール】で頭痛は治らん‥‥って、【ハイヒール】までも使えるのか!!」
一同は呆気にとられていた。
混乱した頭を整理する様に、領主様が話を変えてきた。
「ハッシュから孤児院の事を聞いたよ。確認して、然るべき対処をさせて貰うよ」
「ありがとうございます。教会の院長も喜ぶと思います」
「その院長達から、奇跡があったと報告されたよ。レン、何か心当たりはあるかな?」
「はい、その場に居ましたから」
素直に話すオレの言葉に全員驚いていた。
「それでは、レンさんが神託を受けたのですか」
「そこまで知ってるんですか、さすが商人は情報が早いですね」
「神託の内容を教えて貰えるかい」
「良いですけど‥‥呆れないで下さいね」
全員頷いた。
「風の女神アウイラ様から、[ホットケーキ]を催促されたんですよ」
「「「「「はぁ?」」」」」
声が揃ったねw
「お供えしたお礼に、健康になる加護を施してくれましたね」
「それが奇跡の内容か‥」
「それぞれの教会で、違うお供えをしたら、喜んでくれましたよw」
「ホントか嘘か判らん話だな」
「嘘じゃないですよ、追加のお礼に、情報をくれましたからね」
「追加の情報とは?」と領主様が聞いてきた。
「北の教会、アグー商会、ポケ子爵の不正証拠隠し場所ですね。神様も怒っているみたいですね」
「なにぃ、重要な話ではないか!」
部屋の中が騒然となり、直ぐ様それぞれの見取り図が用意された。
オレは【オートマッピング】に記された場所を、見取り図に記載して行く。
「北の教会は隠し金庫、アグー商会は隠し通路、ポケ子爵は隠し部屋ですね」




