第18話 領主様への報告
良し、揃ったな。では出発するか。
ガディ商会の荷馬車に乗り、領主館へ向う。
ガディさんは、〔アグリカ〕の人気商品も届けるみたいだね。
「レンさんは、領主様に会うの初めてなんですね」
「本音は、会いたく無いんだけどね」
「そうなんですか?」
「あまり、貴族に良い印象無くてさ」
「領主様は大丈夫だと思いますよ。気さくな方ですし」
「だと良いんだけど」
「心配するなレン。ここの領主様と南侯爵様は、かなり良い貴族だぞ」
「そうですよ、領民思いで有名ですから」
「騎士団と魔法師団は仲悪いケドな」
「どちらも、領主様を慕っているんですケドねぇ」
「それぞれ役に立ちたいと、空回りしている感じがあるな」
「我こそは!ってやつ?」
「まぁ、比較的平和ですから、問題無いんでしょうけど」
「領主様の悩みの種さ」
話している内に領主館に着いた。
「ギルドマスターハッシュ様、ガディ商会長様、冒険者レン様ですね。ご案内致します」
それぞれ身分証を見せて門をくぐる。
先ず案内されたのは、倉庫のような建物。
そこで依頼品・献上品を下ろす。
〈カラードワイバーン〉を出した時、驚きの声が上がる。(やっぱり珍しいんだな)
応接室に通されると、〔アルケラ〕〔アグリカ〕のギルマスが座っていた。
それぞれ軽く挨拶し、〔アルケラ〕のギルマスからはお礼を言われたよ。
なんでも、忙し過ぎて職員が、殺気立ってたみたい。
そんな時、オレから支援があり、本気で助かったと感謝された。
程なくして領主様が入って来た。
皆立ち上がって礼をする。
領主様は手で制し、座るよう勧めた。
「今日は、集まって貰いすまない。皆、依頼品を集めてくれてありがとう」
開口一番にお礼を言われた。腰の低い領主様だね。
「ガディ、人気の料理、後でいただくよ」
「ご賞味下さい。お気に召すと思いますよ」
「レン、此度の献上品は素晴らしいな」
「お気に召して頂ければ幸いです」
「また後で、ゆっくり見せて貰うとするよ。」
「はい」
「そして、〈カラードワイバーン〉は、南侯爵様を通じて王家に献上させて貰うぞ」
「よしなに」
「まぁ、そう改まるな。敬語は不要でいいぞ」
「ありがとうございます」
「今回集まって貰ったのは、お礼を言いたくてな。少し無茶な依頼と思っていたが、集めてくれてありがとう」
「全て集めたのはレンだよ。お礼はレンが受けるべきだな」
「オレは出来る事をしただけだよ」
「レン、そなたは何者だ?報告を聞けば聞く程信じ難くなる」
「一介の冒険者ですよ」
「まあいい、確かにレンの功績は大きいな、人気の料理も考案したのだろ」
「はい、そうです。直接教えて貰いましたからね」とガディさんが言い、それぞれのギルマスも追い打ちをかける。
「ふむ、経済効果も凄まじい。これは褒美が必要だな、レンよ何か欲しい物はあるか?」
「いえいえ、褒美なんて過分ですよ」
「まぁそう言うな。褒美も出さない領主と、言われるのは困るのだよ」
「それならば、ギルマスから、教会の話を聞いて頂いて宜しいですか」
「自分の事ではないなのか?」
「自分は充分な報酬を貰っていますからね」
「判った、後で聞こう」
「皆、今日は晩餐を用意するから参加してくれ。」
オレは部屋をあてがわれ、自由にしていいと言われた。ギルマス達は、それぞれ報告があるとの事で別れる。
「庭園が綺麗ですよ」とメイドさんに勧められたので、見てみようかな。
一方、レンを除く全員が、別室に集まっていた。
「この部屋は、防音しているので、忌憚ない意見を聞かせてくれ」
「レンが初めて登録したのはウチだな。最初、新人ではあり得ない成果を出していたから、何処かの密偵を疑った。が、余りにも目立ち過ぎるので、密偵の件は無いと考えた」
「取り入って、内部に入り込んだ可能性は?」
「護衛依頼で一緒になりましたが、レアなスキルを自分から教えていましたよ。普通は隠そうとしますよね」
「そうだな、ダンジョンでも目立っていたな。Cランクになったばかりの冒険者が、60階を周回していたからな」
「〔アグリカ〕でも〈ワイバーン〉の複数体討伐と、人気メニュー考案者が一緒だったのは驚いたよ」
「報告を聞くと複数のスキルを持っているらしいな」
「あぁ、判明しただけでも、結界、無詠唱魔法、自動解体、時間停止付きマジックバッグ、索敵、料理だ。多分、サーチ、分析、錬金術もあると睨んでいる」
「判明しているスキルは、護衛依頼の時、本人から説明して貰いましたからね」
「信じられんな、1人が持つ数ではないな」
「しかも、レアスキルまで明かしているとなると」
「世間知らずで、価値が判っていない可能性が高い?」
「他にも、スキルを持っている可能性ありますね。魔法の威力が桁違いです」
「ガディは直接見たのだったな」
「はい、太い木を一発で切り倒しましたよ。しかも、手加減していた感がありました」
「出された〈ワイバーン〉の状態を見て驚いたよ。まるで生け捕った様な綺麗さだったからな」
「威力だけでは無いと言う訳か‥‥一度見てみたいものだな」
「多分見せてくれますよ。隠す素振りさえ、ありませんでしたからw」
「晩餐の時にでも聞いてみよう」
「なんにせよ、扱いは慎重に成らざるをえないな」
「貴族の干渉を嫌ってるぜ。怒らすと、領地を出る可能性は高いな」
「レンさんを手放す事は損失ですよ。現状の経済効果だけでも、無視出来ない数値ですからね」
「領地発展には、共存するのが吉か‥」
「直ぐに侯爵様も耳にするぜ。いや、もうしてるかもな」
「まだ味方と確信はないが、自由にさせて見よう。引き続き、動きに注意しておいてくれ」
「判ったが、貴族はどうする?」
「領地の貴族には、手を出さない様通達しよう。侯爵様には、私から報告を上げる」
「了解だ!」
「しかし、褒美が教会を気に掛けて欲しいとは、欲が無いことだ」
「試してどうだった?」
「予想外だよ。金・地位・名誉どれでも無かったからな」
「ギルド販売会では、自己犠牲も感じられたぞ」
「欲の無い者は繋ぎ止め難いな」
「教会の件はどうする?」
「北の教会は調べ直す必要があるな。他は確認して支援金を増やそう」
「孤児が増えたのは、理由があるのですか?」
「西侯爵の領地で、大きな津波が発生してな、南側に避難して来たらしい。生活が厳しく、子供を孤児院に入れたのが、増えた原因だ」
「生活が安定したら、迎えに行くかもな」
「そうある事を祈るよ」
「最後に私から質問だ。先日、教会で奇跡がおきたと報告あったが、知ってる者は居るか?」
「奇跡‥ですか?」
「何でも、とある者がお供えし祈ると、お供えが消え、光の粒が降り注いだそうだ。光の粒を浴びると、身体の調子が良くなったと報告があったが、余りにも荒唐無稽でな」
「奇跡の話は、初めて聞きましたが‥‥とある者に、ある人物が浮かんでいるのですが‥‥」
「「ガディと同じく!」」
恐る恐るハッシュが、「3日前、レンが教会に行ってるな」と声を出す。
「やはりか、まさかとは思ったが、間違いなさそうだな。その者は神託を受けたそうだぞ」
「「「「はぁ?」」」」皆の気持ちが一緒になった。
「これは、本人に聞くしかないな」
「いくらなんでも、ありえねぇと思っちまう」
「しかし、レンさんならあり得るかと」
「神の恩恵を受けているなら、スキルが多いのも頷ける」
「どこまで謎が多いんだか」
領主までが深い溜息をついた。
「北の教会絡みで、ポケ子爵、アグー商会長も調査が必要だな」
「なかなか尻尾を掴めずにいる。決定的な証拠があれば、処罰出来るのだがな」
「教会の視察名目で調査したんだっけか」
「あぁ、不発に終わったがな。表面的な部分は問題無しだ。改ざんを見抜けられなかったよ」
「向こうも警戒してるか」
「次は脱税の疑いでアグー商会を調査する予定だ」
「証拠が見つかるのを祈ってるぜ」
「神の奇跡があるといいですね」
「私にも神託が欲しいよ」
一同に笑いが起こった。
「では、晩餐でまた会おう。その時レンに問いかけてみるぞ」
「会話が弾む様協力するぜ」
一方レンは‥‥
「レンさん、甘くて美味しです」
「このままだと太っちゃう」
「食べる手が止まらない」
「レンさん、勉強になります」
「生地のふんわり感が違う」
「あまり食べると、夕飯入らなくなるよ」
「甘いものは別腹です!」
厨房で[ホットケーキ]を焼いていた。
料理長から、「レシピの不明な所を教えて欲しい」と言われ、実際に焼いて教えていた。
それを、メイドが食べている。
「「「「「「おかわり!!」」」」」」
(もう、何枚焼いただろう‥みんな良く食べるねw)




