第17話 君子、危うきに近寄りたく無かった
「何?」と聞いたら、ギルドからの伝言だった。
「明日、鐘2つ前にギルドへ来て欲しい」と伝えられた。
「良くここに居るのが分かったね。」
「ギルマスから、今日は教会に行くはずだから、伝えてくれと言われまして」
なんでも、3カ所の教会に伝言を出したらしい。
「何か、嫌な予感かするけど、わかったよ。明日行くって伝えて」
「ありがとうございます」と言い去って行った。
ホントに嫌な予感しかしないね。
次の日、早めにギルドに行くと、フェイさんがお出迎え。早速応接室に案内された。
ギルマスを待つ間、フェイさんが話しかけてきた。
「レンさん、職員への心遣いありがとうございました」
ボーナスの事だろう。
「オレの所為でもあるからねw」
「確かに、レンさんが来てから、忙しくなりましたね」
「素直ですコトw」
「いえいえ、誉めているんです。こんなに市場を活性化させられる人は居ないですよ」
「職員の皆んなは怒ってるんじゃない?」
「大変なのは変わりませんケド、フォローしてくれましたからね。感謝の方が強いですよ」
「それは良かった」
「〔アルケラ〕のギルドからも、感謝の言葉がありましたよ。ギルマスからは「助かった」とw」
「明日から、他のギルドでも販売出来るので、こちらに買いに来る人は減りましたよ」
「じゃあ、今ある素材を出して良いかな?」
「い・ま・は、仕舞っておいて下さいね!」
「はいっ!」フェイさんの声が変わったよw
「本当に[マヨネーズ]は美味しいですね。癖になりそうです」
「気を付けてね、食べ過ぎると太るよ」
「そうですか、気を付けますね」
「あっ、「マヨネーズ」に[トウガラー]の粉末と[ソイ]を少し垂らすと、味に変化があって美味しいですよw。味見しますか?」
「レンさん、さっきなんて言ったか覚えてます?」
「要らないですか?」
「‥‥味見します」
[ポテトフライ]と一緒に出すと、諦めて食べてくれた。
ボソっと「‥‥女性の敵ですね」と言われたよ。
そんなやり取りをしていると、部屋にギルマスが入ってきた。
「おっ、美味そうなもん食べてるな」
「ギルマスもどうぞ」
ギルマスが一口食べると、「何だコレ、[マヨネーズ]だよな?」と驚く。
「調味料を加えて、味に変化を付けたんだよ」
「お前さんの頭の中は、どうなっているのかね。新しい物を次から次へと‥」
「レンさんお願いですから、今は内緒にしておいて下さいね!」
フェイさんから、本気のお願いをされてしまった。
「それでギルマス、要件は何?」
「言い難いんだが……領主様からの呼び出しだ」
「ハァ、君子危うきに近寄りたく無かったよ」
「何だそれ?良く判らんが、諦めろ」
「何で急に呼び出されたのかな?」
「お前さん、他でもやらかしてないか」
「何を?」
ギルマスから、今迄の行いを羅列された。
・[シルクディアの毛皮]確保
・〔アルケラ〕でのギルド販売会貢献
・人気レシピの登録
・短期間でBランク昇格
・〈ワイバーン〉の2箇所納品
・〈カラードワイバーン〉の献上
・〔アグリカ〕での人気メニュー考案
「心当たりは?」
「‥‥あり過ぎだね」
「えっ、〔アグリカ〕の人気メニューって、今話題のですか?」とフェイさんが驚いた。
「そうみたいだな、通信で聞いたよな」
「[唐揚げパン][シャーベット][ポテトサラダ][エッグサンド][ポテサラサンド]が人気と聞いていますケド、どれを考案したんですか?」
「ん?数日前なのに良く知ってるね。全部だよ」
オレは試作で作った時のを【アイテムボックス】から出した。「食べてみる?」
「「ハァ〜〜」」2人から盛大な溜息を貰った。
「領主様から呼び出される訳だ」
「ですね、レンさん行ってらっしゃい」
「おおぅ」
「2日後にガディ商会と行くぞ」
「ガディさんも呼び出されてるのかい?」
「そうみたいだな。〔アルケラ〕〔アグリカ〕のギルマスも納品で呼ばれてるぞ」
「あっ!それと、〈ワイバーン〉を保管してくれ。お前さんの[マジックバッグ]は時間経過無しだって?」
「良いけど、オレの情報筒抜けじゃない?」
「目立ち過ぎだよ。自業自得だな」
目を逸らすと、フェイさんが食べ終わる所だった。
「レンさん、どれも美味しいですね!」と力強い感想を貰ったw。可愛い笑顔だね。
ギルマスは、何故か泣きそうになっている。
時間と集合場所を聞いて、服装とマナーの確認をした。
服装は冒険者装備でOK。マナーは言葉遣いに気を付ければ良いらしい。
領主の館は街の中央にあり、ガディ商会から馬車でい行く。
「何かお土産いるの?」
「要らんぞ、そもそも献上品あるじゃねぇか。くれぐれも余計な事するなよ」
「それもそうか。しかし、酷い言い草だね〜」
(まぁ、土産話はあるから良いか)
「昨日、教会に行って来たよ。領主様への相談は、お願いしますだってさ。孤児の人数が増えて、今の支援金じゃあ足りないみたいだね。北の教会は時間が無くて行ってないケド」
「そうか、それも伝えておくか」
「貴族様とは、余り関わりたくないな〜」
「利用されるからか?」
「そうだね~、上から目線で話してきそうだしさ」
「ギルドへの依頼も、無茶言う方が多いですよね」
「全員が嫌な貴族では無いんだが、男爵や子爵が多いな」
「ポケ子爵は典型ですね」
「そんなに酷いの?」
「納品された品にケチを付けて、無料にしようとするんですよ。それも新人を狙って。爵位を振りかざした割り込みをして、冒険者とトラブルになったりと‥」
「関わりたく無いね。そう言えば、北の教会とつるんでいるのもポケ子爵みたいだね」
「あぁ、ポケ子爵・アグー商会長・北の教会院長で悪さしてるらしいな」
「北の教会で、孤児の受入れを断られて、他の教会に流れたらしいね」
「孤児院の運営も兼ねた、支援金なんだがな」
「孤児の受入れ少なくして、運営費着服してるのかね?」
「大方そんなもんだろう。働ける年齢の孤児だけ受入れて、金稼がしてるって噂だしな」
「子供達が可哀想ですね」
「孤児院で[ホットケーキ]作ってあげたら、皆んな喜んでくれたよ」
「レンさんは、優しいですね」
「嬉しい事言ってくれるね〜。[ホットケーキ]食べる?」
「惜しいケド、結構です!さっきから、どれだけ食べたと思ってるんですか」
「ありゃw」
「まっ、なんにせよ孤児院の件は、領主様に報告だな。レンも見て気づいた事あれば、教えてくれ」
「わかった!」
「さて、連絡は以上だ。2日後遅れるなよ」
レンが去ったギルドでは。
「ギルマス、レンさんに暫くレシピを作らない様、釘を刺しておいて下さいね。」
「あぁ、やっと落ち着いたのに、また?と思うと、暴動が起きかねん」
「それにしても、凄まじいですね。登録してから日が浅いのにコレですからね」
「領主様を通じて、侯爵様にも伝えて貰うか」
「後、他の貴族の方々にもですね。本当に嫌になったら出て行きますよ」
「ここもそうだが、〔アルケラ〕〔アグリカ〕の経済効果は測り知れん」
「なにせ、この数日で、過去半年以上の利益ですからね」
「これまで無名なのが変だよな?」
「はい、だから以前、密偵の可能性があると、考えましたよね」
「目立ち過ぎるから、その線は消したがな」
「判明しているスキルだけでも、あり得ませんね」
「結界、無詠唱魔法、自動解体、時間停止付きマジックバッグ、索敵、料理が判明しているか」
「しかも、本人は隠そうとしてませんよね?」
「あぁ、人前で使って、説明のオマケ付きだ。多分、サーチ、分析、錬金術もあるとみた。」
「1人でそんなにスキルを持てるんでしょうか?」
「信じられんが、そうでもなきゃ説明つかん」
「ちょっと恐いですよね」
「あぁ、魔法の威力も高いらしいしな。街1つなら滅ぼせるかもしれんな」
「貴族の方々が、怒らせなければ良いのですが」
「それは、オレも懸念してる」
「今回、領主様も見定めるつもりだろう」
「関わった人達に話を聞くつもりですね」
「表向きは依頼の納品となっているがな」
「まだまだ秘密がありそうですね」
「レンから打ち明けて貰える様、信頼を積み重ねるか」
「それまで、ギルド職員が持ちますかね?」
「レンには強く自重して貰おう。お願いすれぱ判ってくれるさ」
「だと良いんですけど‥‥」
「そんな事より‥‥」
「何ですか?」
「オレの分まで食っただろ!」
「だって、美味しかったんですよ![シャーベット]は話している内に、溶けちゃいそうでしたし!!」
「オレも食いたかったんだよ。気づけば全部食ってるし」
「すみませんでした。 が、美味しかったですよ〜」
「ちくしょう。食いもんの恨みは怖ろしいぞ!」
「てへっ」
今日もギルドは平和だった。




