第15話 予定外の依頼品をお届け
朝一番の乗り合い馬車に乗り、〔サーエンド〕に向う。
道すがら、お金の使い道を考えてみた。
もう使い切れないぐらいお金が貯まっている。
「いろんな場所に行ってみたいから、家を買うのもなぁ」
思わず声が出ていたらしい。
同乗しているシスターが声を掛けてきた。
「何かお悩みがあるのですか?」
「すみません、独り言を聞かれてしまいましたね」
「相談にのりますよ」
「ありがとうございます。お金の使い道を考えていたもので」
「使い道の悩みですか、ちょっと羨ましいです」
「何かお悩みですか?」と冗談めかして聞いてみた。
シスターはクスッと笑い、「立場が逆転していますね」と冗談に乗ってくれた。
〔サーエンド〕の南側に建っている教会のシスターで、孤児院も運営していると聞いた。
最近建物の劣化が酷く、修理もままならないらしい。
シスターは【ヒール】のスキルを活かし、要請のある街で治療をし、お金を得ていて、〔アグリカ〕の治療を終え、〔サーエンド〕に帰る所だと話してくれた。
領主から援助金は出ているが、子供の数が多く、食費てほとんど無くなっているらしい。
人手も少なく、地域の人から援助をして貰っている現状なのだとか。
「すみません、いつの間にか、私の悩みを聞いて頂いていました」
「良いですよ、大変ですね。宜しければ、少しばかり寄附致しますよ」
「それは有り難いのですが、宜しいのですか?」
(シスター、嬉しさが顔に出てますよw)
オレは、金貨10枚をシスターに渡す。
「こ、こんなに宜しいのですか?」
「気にしないで下さい、使い道を考えていましたからね」
「レンさんに、神のご加護がありますように」
(既に神様の加護は貰っているんですケドねw)
「今度、教会に寄らせて頂いていいですか?」
「是非、お立ち寄りして下さい。院長からもお礼がありますので」
(そう言えば、一度も神様に祈ってないな)
久し振りに残念女神を思い出す。(シルは元気かな?)
「どこの教会も、同じ様な状態なのかな?」
「実は…」と実情を話してくれた。
東と西の教会は同じらしく、運営は厳しいらしい。
北の教会は、院長が私腹を肥やすのに忙しいみたいだね。
とある貴族や大手商会と手を組み、儲け話に花を咲かせてご満悦だとか。
領主も決定的な証拠が掴めず、処罰出来ていないとのこと。
まぁ、今は北を除く教会を助けてみますか。
「他に困り事は無いのかい?」
「これ以上して頂くのは申し訳ありませんよ」
寂しい笑顔で、シスターは申し出を断った。
(しつこくしても駄目かな?今度ギルマスにでも聞いてみよ)
話題を変える為に、〔アグリカ〕で買ったフルーツを出した。
「一緒に食べましょう」
「いいえ、そこまで甘える事は…」
「食べてくれなきゃ、さっきの金貨返して貰いますよw」
「何ですか、その脅し文句は」と笑顔を見せてくれた。
「ちょっと変わった食感が面白いですよ」と、少し凍らせた果物を勧めた。
他の乗客にも「皆さんも如何ですか」と声をかける。
皆んな、少し凍った食感が珍しいと、喜んでいる。
「皆んな笑顔になると嬉しいよね、頑張るんだよ」
シスターは笑顔で「はいっ」と返してくれた。
数日後、無事〔サーエンド〕に到着。
道中、シスターに【ヒール】を見せてもらい、覚えた事は内緒だよ!
さて!ギルドに行きますか。
そっとギルドを覗き込むと、職員が忙しく動いている。
ふと気配を感じて振り向くと、そこにはフェイさんが立っていた。
「お帰りなさい、レ・ン・さ・ん」
「ただいま、フェイさん。な、何か怒ってませをんか?」
「気の所為ですよ。レンさんのお陰で、ギルドの売上は過去最高ですよ。忙しさもですケドね」
オレは目を背ける事しか出来なかった。
「冗談ですよw、ギルマスがお待ちです」
応接室に案内されると、既にギルマスが待っていた。
「おぅ、レン。ようやく来たか、待ちわびたぞ」
「依頼の期日には、まだ余裕がありますよね?」
「〔アグリカ〕に売っただろ?それで、領主様からウチに、確認の連絡が来たのさ」
「自分の首を自分で絞めたって事か‥」
「そうゆうこった。で、無事狩れたんだろ?」
「一応、3匹確保してるよ。確認して貰えるかい?」
「勿論だ!直接確認させて貰うよ。解体場へ行くか」
オレは解体場に、2匹の〈ワイバーン〉を出した。
「おいおい、生捕りにでもしたのか?無傷じゃねえか」
「ご希望に添えたかな?」
「文句無しだ!ありがとよ。てか、3匹って言ってなかったか?」
「もう1匹はこいつさ」
オレは〈カラードワイバーン〉を出した。
解体場の職員から、驚きの声が上がる。
「ちょっと待て、なんてモノ出しやがる」
ギルマスが頭を抱えてオレを見る。
「やっばり特別なんだな」
「カラードの金色なんて、レア中のレアだ。しかも傷1つ無いときた。王様への献上品レベルだぞ」
「仕舞っとく?」
「出来るか!なんて予定外なもん持ち込むかな」
「ええぃ、こうなりゃヤケだ!全て買い取るぞ。7匹分の金額でどうだ?」
「2匹分でいいよ、金色は献上品にして」
面倒事は押し付けてしまおうw。
「良いのか?いい金になるぞ」
「お金は充分に貯まっているよ。毎日振り込まれてるしねw」
「確かに。お陰でギルドは大儲けだ。職員の恨みは買っているがなw」
「お二人共、笑い事ではありませんよ。職員が倒れますよ」
フェイさんがプンスコになっている。
「今、対応しているから、もう少し我慢してくれ」
「対応策があるのですか?」
「〔アルケラ〕のギルドでもアップアップになっててな、他のギルドでも、販売出来る様に調整中だ。明後日には分散して販売できる予定だ」
「〔アグリカ〕でもレシピの問合せが多いと聞いてるよ」
「しかし、レン。とんでもないモノ作っちまったな、領主様まで話がいってるぞ」
「何で領主様が?」
「レシピの問合せが、領主様にもあってな。調べてみると、〔サーエンド〕と〔アルケラ〕で売っていて、作ったのが一工房と一介の冒険者と知り、興味がわいたんだとよ」
「して、今回の献上品ときた。領主様からお呼ばれあるかも知れんな」
「え〜面倒臭い。どっかに逃げるかな」
「まてまて、ここの領主様は気さくな方だから、呼ばれても大丈夫だぞ。そこらの貴族より、よっぽどマシさ。だから、逃げるなよ」
「判ったよ。呼ばれたら善処しますか」
「そうだ、貴族で思い出した。教会の事教えて」
「急にどうしたんだ。知ってる事ならな、場所変えるか」
応接室に戻り、乗り合い馬車での経緯を話した。
「詳しくは判らんが、北の教会はいい話聞かないな」
「大きな商会は、ガディさんが詳しいかな?」
「北の商会は〈アグー商会〉だな。結構悪どい商売をしていて、悪い噂が多いぞ。領主様も決定的な証拠を掴めず、処罰出来てないしな。よし!領主様の所に行ったら、相談しといてやる」
「助かるよ。話を聞いた限りでも、可哀想になってね。」
「レシピ販売の1割は寄附に回ってるが、支援する所が多くて、微々たる金額なのかもな」
「明日、教会に行ってみるかな?」
「好きにするが良いさ。たが、のめり込むなよ、キリがねぇからな」
「判ってるよ。忠告ありがとな」
「話は変わるがレン、領主様の所まで護衛依頼受けねえか?」
「嫌だね、わざわざ厄介事に関わりたく無いからねw」
「依頼から戻って来たばかりだしな。今回は諦めるかw」
「あっ、〈ワイバーン〉のお金を、ギルド職員のボーナスに使ってよ」
「おいおい、そんな事すると癖になるぞ」
「今回は迷惑料も含め、特別って事で。少し労っても良いだろ?」
「助かるよ。職員も喜ぶぜ!」
ボソっと「これかもあるかも知れないしね」と呟いたのは聞き取れなかったみたいだねw
「〔アルケラ〕のギルドも同じく頼めるかい」
「判った、伝えとく」
「他の素材は、落ち着いてからの方が良いかな?」の独り言を聞いて、ギルマスの顔に大粒の汗が浮かんでた。スルーしよっとwww
明日は教会へ行ってみよう。
(差し入れは[ホットケーキ]にしようかな。それとも肉が良いかな?)
まだ、日が高いので、魔物の肉確保に行った。
(3カ所に寄附するから、沢山狩っておくか)
ついでに【ヒール】の練習をしたら、【ハイヒール】に変わったのは内緒だよ。




