4・紅茶と日本茶のあいだ
やっぱ、ホテルで逢ってた方が楽しかったな。
いや、お前のことが嫌いになったんじゃないよ?
でもさ、「不倫用のアパート借りて、そこで逢う」って、つまんねえよな。
ま、良いんだけどさ。なんか冒険感がないっつーか……。
新鮮味がないっつーか。
……あ? 何? 「言いたいことがある」って?
何よ。何なの? 何でも言えよ。
……え? 「他に男が出来た」?
「その人はあなたよりもっとハンサムで、あなたよりずっと優しくて、あなたよりずっとお金持ちよ」?
「その人ね、あたしを自分のマンションにちゃんと呼んでくれるの。そうして美味しい紅茶を毎回淹れて、お茶菓子をふるまって一緒にずっと話してくれるの」
「そうしてね、その人独身よ。あたしと結婚したいって!」
……は? いやいやナイっしょ、その展開……ってオイ! 「サヨナラ」一つだけ!? そんでオサラバってか!? おい待てよ! おーい!!
* * *
……やれやれ、まあしょうがないか。
でもあのオンナも馬鹿だよな。例の男は俺の古い友人なのにな。
「後腐れなく別れたい」って俺の相談に乗ってくれて、あのオンナの気をそらす手伝いをしてくれただけなのにな。
まあ、まんまと引っかかってくれて、こっちとしては助かったけどな!
* * *
そうして数か月後、女と「古い友人」はめでたく結婚した。
そう、友人は本当に彼女のことを好きになってしまったのだ。
結果、どうしようもない男は「女と別れた」代償として、古い友人を失った。
それからは何かとついていない人生を送り、数十年経った今は妻とも死に別れ、ぼろぼろの縁側で今日もまずい茶を飲んでいる――。




