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5・美味しい紅茶と理想の女性

 ああ、失敗、失敗、失敗だ!


 どうしてもうまくいかない! どうしてだ!


 赤い瞳、さらさらの金髪、雪のように白い肌! 「ぼくの理想の女性」を形造ろうと、十何年も頑張ってロボットを造って来たのに!


「理想の女性」の形にすると、どうしてかどうしても起動しない! せっかく美しい外見でも、動かないんじゃしょうがない!


 ああ、何で一体きり動くように出来たのが、ぷっくりな体型、くしゃくしゃのくせっ毛、茶色の小さな両目の人型ロボットなんだ!

 しかも……しかもこのロボット……、


「ご主人さま、お茶とお茶菓子をお持ちしました」


と、ひとりのメイドが研究室に入ってきた。年若い博士に向かって笑いかけるメイドは、今博士が嘆いた通りの容姿をしている。


 ぷっくりな体型、くしゃくしゃのくせっ毛、茶色の小さな両の瞳。


 そのメイド……いや、人型のロボットは、心配そうな目つきになってそっと博士の肩へ触れた。人工皮膚ごしの作り物の体温が、博士の肩から染みていく。


「ご主人さま、また徹夜をなされたのですか? 目が赤くなってらっしゃいます。あまり無理をなさらずに……お茶とお茶菓子、ここに置いておきますね……」


 メイドはそれだけ言い残すと、ゆったりとした足取りで研究室を去っていった。


 残された博士は、大きく深く息を吐いた。


「――ああ! 何であいつはあんなにも! 優しくて、性格が可愛くて、あんなに……あんなに……!!」


 博士はまたも大きく息を吐き、湯気の立つカップの紅茶に口をつけた。


 美味しい。あいつの淹れてくれる紅茶は、自分で淹れるお茶よりずっと香りが高くて、美味しい。


 博士はカップから口を離し、崩れるように微笑んだ。


――もしかしたら、私はとっくに「理想の女性」を造り出していたのかもしれないな。


 博士はもう一度紅茶を口に含み、ゆっくり味わってのどに通した。


 それからゆっくり立ち上がり、今度は小走りに研究室を出て行った。


 理想の女性と、本心で話をするために……。

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