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シェフの処方箋  作者: ソルファ
15/27

憂鬱な朝と調味料


ん?


今誰かに見られてたような。

確かに誰かいた様な……。


気のせいだろうか。




何はともあれ、本月のおかげで一歩前進といったところだ。



何気なく時計を見る。

まだ8時にもなっていない。

出勤時間にはまだ早いと、

戸小谷さんに会いに行って

ターゲットの情報を伝えに行くことにした。



また騒ぎになると面倒だから、

今回は近くの公園で待機することにした。



この公園には静かに揺れるブランコと、

何年も置いてあるせいで

完全に錆び付いているジャングルジムがしかない。

それから今にも壊れてしまいそうな木製のベンチが一つあるだけ。

子どもの頃はここに何度も足を運んでいた。



当時は、まるで光り輝くテーマパークのようにも感じていた。

しかし今はその面影すらない。


子どもの目に映るものはなんでも光り輝いているものだ。


そんな思い出に浸りながら

そのボロボロのベンチに座って

携帯電話をいじり出す。


「もしもし、戸小谷さんはいますか?」

「はい今日は出勤予定ですが、まだ出社しておりません。ていうかあの、失礼ですがその声、四つ星さんですか?」


一瞬の沈黙の後、すかさずそれに答える。


「そうですけど」


「キャーーー! 四つ星さんだって!」

「なになに四つ星さん? 」

「変わってよー! 」

「本当いい声」

「いいから変わりなさいよー」


女性達が言い争いをしている。



ガチャッ……



勢いで電話を切ってしまった。

いつもこうだと反応に困る。



空をぼっーと眺めたり、

通りを歩く人を見て時間を潰していると、

目の前の交差点で信号待ちしてる戸小谷さんを発見。


「おーーい! 戸小谷さーーん!」


トラックや乗用車のエンジン音でかき消される声。


信仰待ちをしている戸小屋さんに向かって、

さらに大きな声を出す。


「戸小谷さーーーん!」


やっと戸小谷さんがこっちに気が付き、

キョロキョロ辺りを確認しながら小走りで向かってくる。


「おは……おはようございます」

「おはよう。昨日は夜遅く呼び出しちゃってごめんね」


「別に……その……全然平気です私。ところでこんなところで何されているのですか?」


戸小谷さんのオドオド感は今日も健在だ。


「いやあ、昨日言いそびれちゃったことがあってさ。ターゲットの特徴なんだけど……」


俺は戸小谷さんにターゲットの特徴を事細かに話した。


「それで、少し痩せてて、身長が俺より少し小さくて、髪はボサボサで20歳前半くらい……」


やはりわがままプリンセスがいないとスムーズに話が進む。

日常の業務連絡のように淡々と話を続ける。


「というわけだ。どう? なんかわかったこととか気づいたことある?」


すると戸小谷さんがゆっくり口を開く。


「あ……いや別に大した事じゃないのですが、四つ星さんの殺し方って、その……毒性の調味料を使って殺す方法でしたよね……どういったものを使ったのかお伺いしてもよろしいですか?もしかしたら何かヒントが……その……」


いつもながらのモジモジも健在だ。


「なんだそんな事か。詳しくは話せないけど赤と紫と緑の調味料を混ぜたものなんだ……」


メモりながら俺の話を聞いている戸小谷さん。


「なるほどですね……具体的にどういった作用があるのですか?」


「今回の依頼内容は急を要するもので、死亡時間操作、行動操作、死亡原因操作の3つの調味料を使った基本調合なんだ。まあ味付けのさしすせそみたいなもんだよ」


「なんですか、そのさしすせそって」

「えっ戸小谷さん知らないの?」


「は……はい。」

「味を決める調味料の頭文字を取ったもので、さは砂糖、しは塩、すはお酢で、せは醤油、そんでもって、そは味噌のことだよ」


決して早く無い鉛筆を走らせる戸小谷さん。

それに答えるかのようにゆっくりと喋る。


「まあそれはそうと、必ず死ぬはずなんだけどな。赤、紫、緑、分量もぴったしだし」



赤、紫、緑の調味料…………



すると、俺の脳裏に電気が走る。


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