第38章 寂しさに沈む心
異世界 に来て から、俺 はずっと 柔城 にいた。
豊豊ちゃり大陸 の情勢 について は詳しく 知らなかった。
今、行軍 の休憩 を利用 して、風間ひら を主帳 に呼び、豊豊ちゃり大陸 の地理 と関連帝国 の分布 について 尋ねた。
机 の上 の牛革の戦略図 を見ると、笑って しまった――こんなに ボロボロ になって も、まだ 使って いるのか。
その古びた様子 から見て、十年 は更新 していない だろう。
十年 あれば、一つの帝国 を建国 すること さえできる。
だから この戦略図 は全面的に 信じる わけには いかなかった。
「豊豊ちゃり大陸 には 大小 十六 の国 があります。
しかし 大きな区分 では 四つ の帝国 に分けられます――雲国 はかろうじて その一つ です。
その十六国 は従属関係 により、他の三大帝国 を形成 しています。それが 赤電、熱日、飛雪 です。
最も 国力 が盛んな のは熱日 で、彼女たちの女帝 は「太陽のあるところ、そこに熱日子民あり」 と豪語 しています 」
風間ひら はこういうこと には 俺 と争わず、なぜなら 彼女 は豊豊ちゃり大陸 の情勢 をよく知る ことが 救援任務 を果たす のに 役立つ と分かって いた。
だから 俺 が尋ねたこと はすべて 細かく 説明 してくれた。
「赤電帝国 と雲国 の軍事力 を比べると どうだ? 」
今、純凰 たちに 危機 をもたらして いるのは 赤電帝国の軍 だ。それが 俺 の最大の心配 だった。
「大きな差 はありません。
しかし 南北二線 で戦っている ため兵力 が分散 し、赤電 は一直線 に進撃 している ので、純凰将軍たち は大きな圧力 を受けています。
また 北方 の玉将軍 と氷将軍 は野蛮な獣人族 に対抗 しており、多く の援軍 を出す ことは できません。
赤電帝国 の理不尽 な侵略 よりも、獣人 の方が 人類の天然の敵 であり、その殺戮 はあまりに 残虐 です 」
世 の中 に永遠の敵 も永遠の友 もない。
赤電帝国 は雲国 が二線 を同時 に戦う力 がない のを見て、こうして 純凰たち に攻撃 を仕掛けた。
最初 は並肩王 からの 優遇条件 で出兵 した可能性 がある が、今 は戦勝 の利益 を得て いるため、並肩王 が敗れても 退兵 する気 はない。
「南方 の戦況 によると、純凰 と清凰 の二将軍 の二つの軍団 を合わせて 十万 です。
一方 赤電帝国 は控えめ に見積もっても 三十万 を超えます。
この戦い は確かに 厳しい。
そして 赤電帝国 の現在の総帥 は、豊豊ちゃり大陸第一の知将 と呼ばれる 舞焔将軍 です。彼女 は百戦百勝 の不敗将軍 で、赤電帝国 はほとんど 彼女一人 で打ち建てた と言われて います 」
これらの情報 だけでも、この戦い が厳しい ことが 分かった。
兵 が多くても 烏合の衆 だが、将 が賢ければ 全軍 が勝つ。
さらに 三対一 の数 では、どの面 から見ても 彼女たち が絶対的優勢 だ。
少し 気落ちした ような風間ひら を見て、俺 は思わず 笑って 言った。
「風将軍――これでは 本国 に戻ったほうが いい のでは? この戦い は勝ち目 がない 」
「あ、あなた……勇敢な男 じゃない の!
純凰将軍 はあなたの女 だろう! 見殺し にできる の!
ふん、もし あなた が怖い のなら、私一人 で行く から! 」
この小娘 は意外 と反応 が大きかった。
軽蔑 の目 で俺 を見つめ、どうやら 俺 の影響 で男 は天を衝く べきもの だと知った ようだ。
怒った様子 もなかなか可愛い――俺 は心の中で 思った。
彼女 は袖を払って 去っていき、俺 を見たくない ようだった。
その後ろ の彩陽 が少し 心配そう に尋ねた。
「狼将軍――本当に 戻る のですか? 純凰将軍たち を救わなくて もいい のですか? 」
この小女 も落胆 していた――彼女 の心 の中 の狼将軍 は勇者 であり、こんな に臆病 なはず がない。
彼女 が選ばれ、近衛隊長 に任命 されたとき、落雲 は特に こう言った――
「狼将軍は英雄 であり、どの女 も愛さずにいられない男 だ。ただ手が 少し スケベな 癖 がある。
だから 近衛隊長 になる のなら、その習慣 を受け入れねばならない」 と。
しかし 何日 が過ぎても、彩陽 はこのスケベ将軍 が自分 に手 を出して くること はなかった。
むしろ その敬意 が彼女 には 気まずく さえあった。
彼女 はむしろ このスケベ将軍 が自分 に手 を出し、不埒 になって もいい と思った――臆病に 退く 姿より もまし だった。
俺 はこの近衛隊長の問い を聞いて、仕方なく 笑った。
「冗談だ――彩陽 はまだ 俺 を知らない な。
俺・戦狼 の女 なら、たとえ 死んでも 守る。
赤電帝国 も舞焔将軍 も、俺・戦狼 の手 を思い知る ことになる 」
鋭い血気 が一気に 漲り、誰 であれ 俺の女 に無礼 を働く ことは 許さない。
彩陽 は笑った――彼女 が求める のは こういう男 だった。
心から 彼 のそば にいたい と思う――それは どの少女 の胸 の中 にも ある夢 だ。
確かに、落雲将軍 が言った 通り、この男 は魅力 に満ち、誘惑 に満ちて いる――彼 を好きにならない女 はいない。
喜びに 輝く彩陽 を連れて、俺 は男奴隷兵営 へ向かった。
牢獄 から出されたばかり のこれらの男たち は、小さな鳥 のよう だった。
俺 がやるべきこと は、彼ら を龍 や虎 にすること だ――小鳥 ではない。
彼ら の中 で威信 のある数人 を呼び、ただ一言 だけ言った。
「俺の試練 を突破 できたら、番号 を与えよう。そうすれば お前たち は真の軍隊 になり、男奴隷の捨て駒 ではなくなる 」
これを断る者 はいなかった。
この日 から、すべての男奴隷 は体力 に応じて、十斤、二十斤、三十斤 の足袋 を着用 した。
石涯 たち数人 は五十斤 を超え、俺 の予想 を超えて いた――どうやら ここ にも 多くの人材 がいる ようだ。
一週間 の行軍 で、前線 の兵と馬 はますます 近づき、多くの傷病兵 が戻ってくる のを見る ようになった。
戦乱の知らせ も増え、赤電帝国の女王 は雲国南方戦線 を手中 に収める と決意 し、舞焔 に一ヶ月以内 に南方の喉 である 月光城 を占領 するよう 命じた。
一週間 の負重訓練 を経た奴隷兵 の様子 は確かに 変わって いた。
少し の自信 が芽生え ている――これらの男 は無能 ではない。ただ 原動力 を見つけられていなかった だけだ。
俺 は彼ら にその人生の起爆点 を見つけさせ、再び 奮い立たせる。
翌日の午後、俺たち は月光城 まで数里 の距離 に迫った。
月光城 は天湖平原 の大草原 の上 に建てられ、地形 は平坦 だ。
しかし 戦略上 の役割 がある ため、城壁 はかなり 堅固 に築かれて いた。
ただ 守り に適さない地形 が月光城 をさらに 重く していた。
月光城 には 美しい伝説 がある――
この広漠な大草原 には かつて女神の福沢 が降り注いだ。
ここ は元々 荒れ地 だった が、女神の雨露 により 百花 が甦り、四季 が春 のように なり、人類 に滋養と安息 をもたらした。
そして女神 はいつも 月光 と共に 降臨 したため、この地 は「月光城」 と呼ばれる ようになった。
月光城 は今、まるで 一葉の小舟 のよう に風雨の波濤 の中 で翻弄 され、道標 の灯り を見失って いた。
もし 純凰 と清凰 の威信 がなければ、死 を覚悟 した女兵たち はとっくに 散り散り に逃げて いただろう。
今、豪華な総督府 の中、三歩ごと の衛兵、五歩ごと の見張り の重囲 の中 に、二つの 細く か弱い影 があった。
「二姉さん――ごめん。みんな 私のせい だ 」
その中 の一人 の可憐な少女 がもう一人 の肩 に寄りかかって いた。
戦況 の悪化 が月光城全体 を暗雲 と迷霧 に包み、日々 増える傷兵 が次々と 本国 へ送還 されていた。
彼女たち はもう 分かって いた――これは 希望 のない戦い だと。
援軍 はなく、希望 もなく、ただ 手元 の力 を消耗 し続け、全面崩壊 の日 を待つ だけだ。
その日 はもうすぐ 来るだろう――彼女たち が国 に殉じる日 だ。
彼女たち は鳳将 であり、帝国 の崇拝 だった――戦死 するしか なく、逃げる 理由はなかった。
純凰 の悲しみ を帯びた瞳 には 恐怖 はなく、ただ 失意の寂しさ があった。
死 は怖くない――しかしもし 本当に 死んだら、あの 彼女 を相思 の苦しみ に陥れた男 はどうする のか?
彼 は彼女 のために 涙 を落とす のか?
彼 は今ごろ きっと 幸せ だろう――小姫君 でさえ 彼の女 になって いる。
彼女 が純凰 だ――南方戦線 に派遣 された日 から、彼女 は生きる希望 を失って いた。
あるいは 死 が最高の 解放 かもしれない。
「四妹――あなたは 先に 行きなさい。あなたは まだ若い。未来 は長い。
ここ はお姉さん に任せなさい。お姉さん はあなた を失望させない から 」
「いや――嫌だ、二姉さん!
私は 離れない! 絶対に 離れない!
死ぬ のなら、自分の陣地 で死ぬ!
二姉さん――誰 があなた をこんな 風 にした の?
あの クソ野郎 は誰 だ! 私 がぶっ殺して やる! 」
とても 可憐で香しい顔 は、天湖 の皎月 のよう に精巧 で、幽かな光 を放って いた――
これ が雲国 の中 の清凰 だ。
この二姉さん が彼女の軍営 に来た日 から、彼女 は感じて いた――
二姉さん が心を蝕む苦しみ を耐えている ことを。
何度も 尋ねた が、「あなたには分からない」 と言われて しまった。
今回 は本当に 我慢 できなかった――戦場 の無形の圧力 が彼女 を息苦しく させていた。
どんなに 聡明で才能が あっても、彼女 はたった十八歳の少女 だった。
寂しげな顔 に突然 幸福な笑み が浮かんだ――
あの 短い数日 の幸福 は彼女の一生 の思い出 だった。
彼女 は後悔 していなかった。決して。
「四妹――信じる? お姉さん はある男 を愛して しまったの。
とても スケベで、軽薄で、恥知らずな男 を 」
「愛 はあまりに 突然 に訪れ、信じられない ほどだった。
でも 去るのも あまりに 早かった。
今、彼 は姫君の男 だって。
彼 はまだ 二姉さん のこと を覚えて いるだろうか?
二姉さん が死のう として いること を知って いるだろうか?
二姉さん が死ぬ前 にも 彼 を思って いること を知って いる**だろうか? 」
涙 が水晶のように 輝き、溢れた。
清凰 は初めて 二姉さん の涙 を見た。
愛――愛 とは 何 なのか?
清凰 には 分からず、分かりたくもなかった。
「二姉さん――悲しまないで。男 は碌なもんじゃない よ!
二姉さん のような美人 なら、どんな男 でも手に入る よ!
雲国中 の男 から好きに 選べる んだから!
もし 今回 生きて帰れたら、私 が十人 や二十人 の男 を集めて 虐待 してやる!お姉さんの 仇 を討って ね! 」
また あの一言――「四妹、あなたには分からない」。
彼女 は若い が、何も 知らない わけじゃない。
清凰 は説明したい と思った が、結局 口を開かなかった。
「もしあなたが ある男 を愛したら 分かる。
彼以外 は誰も 考えられなくなる って。
お姉さん はそう だ――この人生、二度と 他の男 を愛すること はない。絶対に 」




