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第3章 二神伝功

「小僧、余計な妄想を膨らますな。お前はまだ死んでおらん」

虚無の空間から、重厚でいてどこか諦めたような声が聞こえてきた。

俺はビクッとした。

ここにも人がいるのか? 同じ霊魂か? ならば話し相手ができて、旅も退屈しなくて済む。


「おい、親父さん、どこにいるんだ? 見えねえぞ。ちょっと話そうや。俺、もうこんな状態だってのに、まだ生きてるって言うのかよ」

俺は大声で叫んだ。


「親父さんだと? このクソ小僧が!

この天下一の美男、知恵と英知に満ち、古今東西に類を見ず、正気凛然として威風堂々たる 創造主神 を、親父 と呼ぶとはな!」


俺は思わず笑った。

世の中にこれほど自惚れた奴がいるとは知らなかった。

俺はただ敬愛を込めて親父さんと呼んだだけだ。なのにこの大演説である。


「おい親父さん、どうしたんだ? おじさん って呼べばいいのか?」

俺はわざとそう言ってみせた。尊敬していることを分かってもらおうというのだ。

本来の俺の性格なら、ジジイとでも呼んでやるところだ。


「……もういい、呼ぶな。爺さん と呼ばれるのはごめんだ」

虚無のなかで 創造主神言った、深いため息をついた。

この件を彼に任せたのは正しかったのか? 彼に果たして 豊豊ちゃり大陸 の命運を変えられるのか?


「……小僧、いや――お前は 岡見 というのだな。命を助けてやったのは、お前に代わりを頼みたいからだ」

声がそう言いかけた時、俺が遮った。


「おいジジイ、俺のことは 戦狼 って呼べよ。そうすりゃ俺も得意になれるだろ。もしかしたら陰陽界を渡り歩けるかもしれねえしな」


その瞬間、空間が揺らぎ、金色の光が走った。

目の前に現れたのは、美丈夫だった。

だが、その顔は今にも爆発しそうな怒りに満ちている。

指が微かに震え――十二級の台風が俺の前を通過した。

おかげで俺はハンドスピナーよろしく、何十回も回転しながら吹き飛ばされた。くそ、着地の時はめちゃくちゃだった。


「……よしよし、お兄さん、手を止めてくれ。俺がイケメンなのは分かってるが、そんなに嫉妬しなくてもいいだろ」

この野郎、こんなに俺を弄びやがって。もし近づけたら、四つん這いにしてやりたいものだ。俺は心の中で毒づいた。


「……本当に腹が立つ」

美丈夫の 創造主神 は、腹と頭の中での穴から煙が出るほど怒っていた。

だが――偉大なる 創造主神 のイメージを保ち、そして彼に果たさせたい使命のため、たとえ血が出ようとも、飲み込むしかなかった。


創造主神 は後悔し始めた。

こんな男を 豊豊ちゃり大陸 に連れて行って、何が起きるか――。


彼が沈思する間、俺も考えていた。

この男は何がしたいんだ?

俺が死んでいないなら、なぜ地面に足がつかない?

違う――今の俺は、無限の虚無を泳いでいるようだ。


「創造主神さん、ここはどこだ? 真っ白じゃねえか」

俺が尋ねると、


「当たり前だ。ここは 虚無空間 だ。色などあるわけがない……色……そうか、この小僧は色好みだ! 」

創造主神 はひらめいた。

そう、この小僧は女好きだ。ならば――策がある。


「戦狼、お前に一つ、この世で最高の仕事を頼みたい。引き受けてくれるなら、無上の法力を授けよう」

創造主神 は怒りを消し、女を見た男のような表情を浮かべた。

俺も興味が湧いた。

こんな顔をする奴は、まともな奴じゃない――だが、それが好きだ。


「お、先に言ってみろよ。何をしろと?」


「戀姫の国 に行って、女をナンパしろ。多くナンパすればするほどいい。そこは美女がわんさか、かわいい女の子がごろごろだ。ただ――お前にその度胸があるかどうか、だがな」

創造主神 は疑わしげな目も見せた。

誘いだと分かっていても、俺は飛び込んだ。

俺は昔から、西遊記の女人国や、

ギャルゲームの 戀姫の国 に憧れていた。もし俺なら――そこで国王になって、二度と戻らない。それが最高だ。


「ケッ、俺、戦狼は女に対して戦無不勝だ。俺が見込んだ女で、手に入らなかった奴はいない。へへへ……」

実際に俺がモノにした女は多くない。達美 と 雪里 も偶然だ。

だが、ここで弱音は吐けない。死んだ鴨も強がる。


「……そうか。ならば聞くが、お前はこれまで何人女をモノにした?」

創造主神 が退屈そうに尋ねた。


「……そ、それはな。数え切れん。百は下らん、八十は超えてる」

俺は平然と言った。


「初めてはいつだ? 」


「初めて――ああ、言われてみればそうだ。あれは俺が十三の時だ。高校三年の姉ちゃんに奪われたんだよ。くそっ、俺 戦狼 の初めてが、まさかあんな形で失われるとはな。だからこそ――戀姫の国 で、取り返してやる!俺は固く誓った。 」


創造主神 は、俺の答えが真実かどうかはともかく、非常に満足げだった。

この世に、女に勝てる男などいない。おそらく偉大なる 創造主神 自身も、そうなのだろう。

もし五女神の運命を案じていなければ、彼は女にこれほど強い引力を持つ男を、わざわざ探し出そうとは思わなかったはずだ。


「つまり――行く気だな。俺はお前を無理やり行かせようとしてるわけじゃないぞ? 」

創造主神 が口を開く。その声にはもはや怒りはなく、からかいの色 が混じっていた。


隠れて見ていた 混沌の神 は、口元を押さえてこっそり笑った。

――創さんのこのやり方は、なかなかいいな。

こんな小僧には、こうやってやるのが一番だ。

俺 はこれまで何人もの人間を異界に送ってきたが、こいつほど 色男 は初めてだ。

だが、戀姫の国 に スケベ を一人送り込むのも、なかなか面白い。きっと良い舞台が観られるだろう。

ただ――五女神がこいつに恋心を抱かなければいいが。それは俺にとっては痛手だ。混沌の神 にも、その心配はあった。


「行く、行くとも! こんな良い話を断る奴がいるか。だがな――約束の 無上の法力 は?」

俺 はもちろん分かっている。この一見穏やかな男が、さっき指を一本動かしただけで俺をめちゃくちゃにしたのだ。

相当な力を持っているに違いない。ここでたっぷり 巻き上げておかねばなるまい。


「安心しろ。本神は決して嘘はつかぬ。――お前は、本気で決心したのか? 」

創造主神 が、幽かに 問いかける。

だが、彼は言わなかった――豊豊ちゃり大陸 には、生き残れるのはあと四年 だということを。

もし俺 がそれを知ったら、よく考えるかもしれない。何せ、生きてこそナンパができる。死んでしまっては、何も始まらないのだから。


傍らの 混沌の神 も、一瞬驚いた。

しかし――この不運な小僧に、運試しをさせるのも悪くない。

あまりに可哀そうだから、俺 も手を貸してやろう。それが、五人の創造主女神たちに、生き残る機会を増やすことにもなるのだから。


その時、創造主神 が、輝く金色の手 を掲げ、ゆっくりと俺 の体に触れた。

その口調は、幾分か厳しい。


「今、お前に我 の創世神訣 を授ける。よく悟れ――我 に恥をかかせるなよ」


俺 が文句を言おうとした――「伝えるなら伝えろ! なんでそんなに余計なことを言うんだ!」

しかし、その瞬間、巨大な水流 が俺 の脳裏に押し寄せ、俺 の意識を飲み込んだ。

さらに腹立たしいことに、背中にも焼けつくような激痛 が走る。

くそったれ、頭と背中を同時に 襲われて、どっちを守ればいいんだ!


「――一度にやれよ! それとも 俺 が行かないって言ったらどうするつもりだ!」

だが、残念ながら、今の俺 は一言も発することができない。

怒涛のような巨大なエネルギー が、俺 の体内を暴れまわり、俺 の意識を暗闇へと沈めていく。


「このクソジジイ―― こんなに酷い なんてな!」**

それが、俺 が意識を失う前に発した、最後の悪態 だった。


俺 が意識を失ったのを見て、隠れていた 混沌の神 が姿を現した。

創造主神 にウインクを送りながら、言う。


「創さん、なかなかいい目をしてるじゃないか。あの小僧は、万年に一度の絶世の体質 だ。あれほど簡単に我 たちの力を吸収できるとはな。将来は侮れんぞ」


「兄さん、まさかお前も力を分け与えたのか?

我 たち二人の膨大な力を、一度に彼の体内に注ぎ込んだんだ。何か悪影響 が出なければいいが……今まで、こんなことは一度も 試したことがないんだ」

創造主神 は、俺 の体が絶えず震えているのを見て、心配そうに言った。声には、いくらかの責める色 も混じっていた。


「ははは――大丈夫だ。さっき調べたが、あの小僧の体は生まれながらの宝庫 だ。いくらでも収まる 。ただ――それを使いこなせるか** が問題だがな。

それに、俺 が手を貸したのは、あの女神たちのためだ。あれほど美しい女神たちが、豊豊ちゃり大陸 の崩壊とともに消え去る のは、虚無空間 にとって大きな損失 だ。

大陸は再創造 できるが、女神は――作ろうと思っても作れるものじゃない。分かってるだろ、創さん」

混沌の神 は、決して心が鬼 なわけではない。だが、一つの大陸 と 五柱の女神の命 を天秤にかければ、彼は迷わず五女神を選ぶ。


「……もう、言っても仕方ない。ただ――あの小僧が、本当に豊豊ちゃり大陸 に情愛の大波** を起こし、大陸を正常な軌道 に戻せることを願うだけだ。

さもなければ、事態は本当に深刻になる。たとえ我 が手を貸そうとしても、五女神 が自ら生き延びようとしないだろうからな」

創造主神 は、五女神の性格 をよく知っている。

彼女たちは一見、優しく柔らかそうに見えて、その心は頑固 で恐ろしいほどに固い。

自分たちが正しい と信じたことは、絶対に曲げない。


「ああ――もはや天意 だ。我 たちは、ただ彼女たちの幸運を祈るしかない」

混沌の神 は、俺 の体に鎮静の魔法 をかけ、ゆっくりと俺 を深い眠り から覚まさせた。


「――あっ、 綺麗なかわいい女の子 ! 」

俺 は夢の中で、たくさんの綺麗な女の子たち を見ていたのだ。


俺 は、酔ったように 創造主神 の大きな体に抱きついた。

「また 綺麗なかわいい女の子 を捕まえたぞ! ははは――おいでおいで、ちょっと熱くなろうぜ」

俺 のスケベ本性 が一瞬で爆発し、気づかぬうちに 創造主神 に抱きついていた。


「――この クソ野郎 ! 」

創造主神 は激怒し、口を開いて叫んだ。

「――消え失せろ! 」


飛び蹴り が炸裂し、まだ完全に覚めていなかった俺 を、虚無空間 の外へと蹴り飛ばした。

俺 の体は流星のように 落下し、新たな旅 が始まる。


背後からは、混沌の神 の堪えきれない笑い声 と、創造主神 の収まらない怒鳴り声 が聞こえてくる。

それらはまるで、俺 の 戀姫の国 での使命を、静かに見送る送り歌 のようにも思えた。

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