第27章 美しい若い妻
想像を絶する――このおばさん級の剣士 が、これほど 明るく美しい顔 を持っている とは。
女皇・雲ここ と同じく 魔性の魅力 を持つ が、
彼女の顔 にはさらに 浅く 静かな 平穏 があり、雲ここ の高貴な色香 とはまったく異なる。
しかしどちらも 絶対的な 致命の誘惑 を持っていた。
背後 の花月 と近衛たち も「おお……」 と息を呑んだ。
彼女たちも 思わなかった――伝説の風間蘭向き がこんな 姿 だとは。
艶やかな瞳、繊細な鼻、紅い唇の端、白い歯――
その頬 には なんと 小さなえくぼ がある。
長年 面具に隠されていた ためかいくぶんか 青白い が、
いずれにせよ 彼女は 絶世の妖姫 であり、蒼生を 魅了する に十分 だ。
白い手 が震え、そっと 自分の顔 を撫でた。
長い年月 が経ち、風間蘭向き は自分の顔 を忘れかけていた。
彼女 は姪 と同じく 風間家の祖訓 を背負い、自分の面具 を剥がす男 が現れなければ、ずっと 待ち続ける しかなかった。
これらの年、彼女 は全心 を剣術の修行 に注ぎ、自分が女 であること、愛を求めること さえ忘れかけていた。
まさか 絶望 に陥った時、人生 にこんな男 が現れる とは――
一瞬、彼女 は動きを忘れた。
「あ、あなた! 大スケベ! 蘭おばさんの面具まで 剥ぐなんて! 」
翠ちゃん の報告 を聞いて、風間ひら は慌てて 楼閣 を飛び出した。
しかし 目にした のは 信じられない光景 だった。
初めて 蘭おばさんの 本当の顔 を見て、その美しさ に羨む と同時に、その若々しさ に驚いた――このおばさん はもう 三十路 を超えている のだ。
彼女 は指 を俺 の鼻先 に突きつけ、大声で 罵った。
残念ながら、この 厚顔無恥 な俺 には 一片の愧色もなかった。
ただ 周囲の近衛 と花月 は背を向け、本当に 俺と 縁を切ろう としている ようだった。
「おお――風間将軍は 嬌声 が十分だな。どうやら 病気 ではなさそうだ。
数日間 軍営に 姿を見せなかった が、その罪 は軽くないぞ 」
俺 はすぐに 話題をそらした。
本来 は騒ぎを起こして 風間ひら を呼び出そう とした だけだった。
まさか このおばさんの面具 を剥いだら、こんなに 艶やかな顔 が現れる とは――俺 も少し 気まずかった。
「うるさい! クソ男!
女皇の信任 を笠に着て、いい気になるな!
私は そんなの お構いなしだ! 」
果然、話をそらす と、風間ひら は頬を膨らませ、怒り心頭 で叫んだ。
もし 彼女 が俺に 勝てなければ、今ごろ 俺 は無残な姿 になっていた だろう。
「蘭向き妹! 蘭向き妹! 」
一人の 大柄な男 が慌てて 駆け込んできた。
その後ろ には 大勢の衛兵 が続き、長槍 と利剣、刀の輝き が中庭 を人波 で溢れさせた。
「あれが 風間南雄 だよ 」
花月 が俺の耳元 に近づき、小さな声で 教えた。
風間家 は本来 風間ひらの母 が当主 だったが、病で 亡くなった。
ひら が幼かった ため、風間蘭向き も当主 に興味がなく、この風間南雄 が当主 になった。
しかし分かっている者 は皆知っている――ここ で最も 権力がある のは風間蘭向き と風間ひら だ。普段 あまり 事務 を見ない だけだ。
「拙者岡見――柔城の狼大将軍だ。
風間家 はよくも 俺たちを 包囲したな。まさか 反逆 を企んでいる のでは? 」
その 卑屈な顔 の風間南雄 を見て、俺 は心の中で 軽蔑した。
くそっ、豊豊ちゃり大陸 の男 はみんな こんな 奴隷 のよう だ。
一家の主 と言いながら、糞 の役 も立たない。
「いい加減なことを 言うな!
風間家 は女皇 に忠誠を 誓っている!
そんな 大逆不道なこと をするはずが ない! 」
反逆の罪 は風間家 といえど 負えない。
俺の言葉 に、風間ひら はすぐに 大声で 叫び返した。
この 武芸に優れた女将軍 が、自身の教養 とは 程遠い ことを 露呈 していた。
「では――お前は 京統合軍の総将 として、帝国の安全 を顧みず、
仮病 を使って 責任を 逃れ、本将軍 が自ら 訪問 しても 不平な待遇 を受けた。
これも 女皇への 忠誠 と言えるのか? 」
俺 は一気に 許しがたい責任 を風間家 に押し付けた。
風間南雄 は顔色を失い、風間ひら も少し 不安 になった。
実は 前回の校場 での一戦 に納得がいかず、女の自尊心 が敗北を許さず、
部下に 顔向けできない と思い、仮病で 逃げた。
自分 の行動 が正しくない ことも 分かっていた。
「あ、あなた……いい加減なことを 言うな!
うちのひら がどこが 悪い というんだ!
お前は ただの小男 で、女の尊厳 を無視する とは大逆不道 だ!
男性の美徳 を教えられなかった のか? 」
風間南雄 の言葉 に俺 は気絶しそう になった。
このバカ――そんな言葉 は女 が言うべき だ。
俺 は生まれてこの方 男性の美徳 など聞いたこと がない。
それに 女 は特に こんな 美しい女 は、尊敬 するもの ではなく、愛でる ものだ。
だから 豊豊ちゃり大陸 が女の天下 になった のだ――男たち がみんな 軟弱者 になった からだ。
「無礼 だ! 」
黙って 呆けていた 風間蘭向き がようやく 正気に 戻った。
その可憐な顔 には 朝霞のような 羞恥と 情動 が浮かび、
ゆっくりと 俺 の前 に歩み寄った。
花月 がすぐに 俺の前 に立ちはだかり、この女剣聖 が俺に 不利なこと をしないか と用心 した。
「狼大将軍――この件 は風間家 の過ち です。ご安心ください。
すぐに 風間ひら を軍営 に戻し、将国の督管 を受け入れさせます。
柔城 がどのような 困難 に直面 しても、風間家 は全力 で女皇 を支持 します 」
風間蘭向き の言葉 に、風間ひら は顔色 を変えた。
「おばさん……あ、あなた 本当に 私を 軍営に 戻すの?
私……私 行きたくないよ……! 」
母 が亡くなった 後、この世 で風間ひら が最も 恐れる のは このおばさん だ。
父 はただの 象徴 に過ぎない。
彼女 はすぐに 風間蘭向き の胸 に飛び込み、甘えて わがまま を言った。
風姿 は潇洒 で冷たく 氷の如き 柔城第一の剑豪 がこんな 情態 を見せる とは、兵衛たち の予想を 超えていた。
もし 彼女が 俺に 甘えてきたら、俺 はたまらず 承諾 していた だろう。
しかし風間蘭向き は微かに 間を置き、顔色 を変え、厳しく 問い詰めた。
「ひら――どうした、おばさんの言葉 が聞けない のか? 」
「で、でも……この男は 悪いやつ だよ。一緒に いたくない 」
うん と言いながら、ついに 自分の気持ち を抑えきれず 口にした。
「無礼だ! 将軍に 対して そんな口 を聞くな!
翠ちゃん――お嬢様の 荷物を まとめろ。すぐに 狼将軍と 軍営に 向かう。
柔城の危機 が去るまで、お嬢様 は戻ってくるな。さもなければ 家規 で処する 」
普段 は世外の高人 の風間蘭向き がいったん 口を開けば、その兄 よりも はるかに 効果的 だ。
小娘・風間ひら は口 を尖らせて 恨み を心 に留め ながらも、もう 叫びは しなかった。
「狼将軍――側室で お話し があります。少々 お時間を いただけますか? 」
低く 一礼 し、去っていく 風間ひら の冷たい視線 に構わず、
風間蘭向き という成熟した 美しい若妻 が俺 に招待 をかけた。
風間家の兵衛 は皆 去り、俺の近衛隊 も門外 で待機 した。
今、この大厅 には 花月 を含めて 三人 だけが 残った。
空気 は一瞬で 異様に 変わった――この艶やかな美若妻 が何か 恥ずかしいこと を言おう としている ようで、
口を開く よりも 先に、うつむいて 羞恥 に染まった。
「お姉さん――何か 俺に 用事 があるのか? 」
もちろん 俺 が先に 口を開き、この 耐え難い 重い空気 を破った。
心の中 では 七上八下 であった――この美婦 が何を 言いたい のか 分からなかった。
ただ花月 のあまり 嬉しくなさそうな 表情 が何か 知っている ようだった が、今 は尋ねる わけにも いかなかった。
「ええ……ちょっと 用事が あります 」
すぐそば にいる花月 を一瞥し、一瞬 間を置き、ついに 表情 を引き締めて 言った。
「こういうことです――今日 花月都統 もいらっしゃる ので、風間家 として狼将軍 にお約束 をいただきたい ことがあります 」
俺 はうなずき、言った。
「お姉さん――まずは 何のことか 聞かせてくれ 」
「風間家 は家規が 非常に 厳しく、祖訓 を破ることは できません。
だから 風間家の女 は皆 面具で 顔を隠し、その面具 を剥がす男 が婿 になる のです。
今、向蘭 と姪 の二人とも 狼将軍 に面具 を剥がされました。
世間の 口 を防ぐ ためにも、狼将軍 は私たち二人 のうち どちらかを 選び、風間家 に婿入り していただきます 」
風間蘭向き の言葉 に、花月 は顔色 を一変 させた。
彼女は 思わなかった――風間家 が本当に こう来る とは。
もちろん 俺 も花月の変化 を見逃さず、すぐに 言った。
「お姉さんは 天姿国色 で艶やか、雲国でも 珍しい美人 です。
ひら も軍中の 一輪の花 で、少し わがまま だが清らかで 美しい。
そのどちらかを 得る のは男の 幸せ です。
しかし お姉さん はご存知ない かもしれません が、私 には すでに 愛する人 がいます 」
風間蘭向き は一瞬 呆け、思わず 尋ねた。
「誰だ? 」
「私です――風間おばさん。
旦那 は私だけ ではありません。純凰大将軍 もその一人 です。
私たち は皆 喜んで 彼の女 になっています 」
幸い 素早春香 と柔伊姫君 のこと は言わなかった。
言えば この若妻 を驚かせて 気絶させる ところだった。
「本当に そんなこと があるのか? 」
風間蘭向き は顔色 を一変 させ、怨めしいと 落胆 が浮かんだ。
彼女は 思わなかった――目の前の 俊逸な男 がすでに 身を 寄せている だけでなく、
一人の女 だけではない とは。
これ はあまりに 天を驚かし、地を動かすだ――
男の奴隷 が大勢 いるのは 聞いた が、身分の低い男 が二人の女 を持つ ことなど 聞いたこと がない。
まして 花月 や純凰将軍 のような 高貴な身分 の女 だ。
「確かに そうです。戦狼 はお姉さんを 欺くことは できません 」
俺 は得意な表情 を抑え、申し訳なさそうな 落胆 を装った。
この 欲望に 燃える 艶婦 に、俺 が彼女たちに まだ 期待している ことを 伝える ためだ。
そのまま 椅子 に崩れ落ちた。
ようやく 夢の男 に出会えた と思った が、またも 空振り に終わった。
しばらく 呆けていた が、風間蘭向き は決心 を固め、顔を上げて 言った。
「潔鳳将軍 でさえ 喜んで 屈服 したのなら、風間家 がとやかく 言う ことは ありません。
婿入り の話 はなかった ことに します。
しかし 狼将軍 は私たち の中 から一人 を選び、風間家の 歴代の先祖 への 誓い を果たして ください 」
ここまで 言われて、俺 は断る ことができなかった。
花月 に目を向ける と、この小娘 は肝心な時 にとぼけて、顔 をそらした。
俺 は考え に考え、立ち上がった。
ロマンス が避けられない のなら、なぜ よそよそしく する必要 がある?
この姑姪 はどちらも 世に 珍しい美女 だ。どちらを 得ても 損はない。
「お姉さんは 天女のような 美貌 で、穢すに 忍びない。
戦狼 はお姉さんに 臣従 し、お姉さんの 真心 を得たい と願っています 」
俺 は一歩 風間蘭向き に近づき、お互い 息が 感じられる ほどになった。
俺 は快感 を味わい、風間蘭向き は必死に 耐えている ようだった。
花月 は小さな口 で「ふん」 と鼻を鳴らし、あまり 嬉しくなさそう だったが、口 を出す ことは できなかった。
ただ 風間蘭向き が羞恥の声 で口を開いた。
「狼……狼将軍――ひらは 傾城の姿 で絶世に 珍しい のです。
私は もう 花は 凋み、将軍の ご厚愛 に値しません 」
女権が 天を 覆う 豊豊ちゃり大陸 にも、こんな 愛に夢中がいる とは思わなかった。




