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第16章 たくさんの花の主人

この世で 俺 ほど不運な者 はいない だろう。

この異世界 に来て まだ 数日 の間に、牢獄 と殴打 の災難 を味わった。

殴ったのが 女 だとしても、それでも 俺 はかなり 苦しんだ。

あの 膨大なエネルギー が俺 に襲いかかった とき、

内脈 は自然に 絶え間ない 熱い真気 を生み出し、その衝撃力 に抵抗 した。

だが俺 が焦りすぎた ため、うっかり 身体の半分 に隠されていた 氷寒の真気 までも無理やり 引き出して しまい、全身 に満たして 堅固な気盾 を形成 した。


あの 澎湃たる 二人の泄勁 が俺 の身 に当たった が、大きな損傷 はなかった。

むしろ 身体 がより 快適になった。

だが――二つの力の融合 が再び 俺 に苦痛 を味わわせた。

将軍府 で少し 試しただけで、府牢全体 を破壊した。

今回は 心が あまりに 緊張 し、二流が相融する 激しい反応 が俺 を耐え難い 昏迷 に陥れた。

あの二人の女 に殴られて は大丈夫 だったのに、自分自身 で自分を 気絶させて しまった。


烈日の灼熱 と寒氷のような冷勁 が一緒に 絡み合い、俺 の身体 は痛みで ねじれる ほどだった。

意識 はなかった が、身体 は反応 していた。

ただそばの女たち は恐怖で 震え、悲しみの声 を上げた。


「陛下に申し上げます――この男の身体には 膨大な真気 が宿っており、

今や 全身の経脈 が錯乱 しております。

臣らの力 では及ばず、治療 は不可能 でございます。

どうか お咎め をお受けください 」


宮廷第一名医・素早春香(すばやいはるか) が女皇・雲ここ の前に跪き、正直に 報告 した。


「何? この男は 治せない というのか? 」


女皇 は驚いた。

これほど 心を尽くした のに、それでも この男の命 は救えない のか?

彼女は後悔していた。

まさか 天 がこの男の命 を奪おう としている のか?

自分に 今日犯した過ち を一生 悔いさせよう としている のか?


「はい、女皇――この症状は 臣 の見たことのない ものです。

この男の体内 には二つの異なる 膨大な気 があり、今や 制御不能 になっています。

この二つの気 は一つ冷一つ熱 で、今 相互に 混ざる しています。

医理 に従えば、普通の者 はとっくに 四散 しているはず ですが…… 」


確かに、俺 は夢の中 でも 「うう……うう……」 と呻き続けていた。

額の汗 は布団全体 を濡らしていた が、それでも 死んではいなかった。


柔伊 の顔 は心の痛み に満ちていた。

あの男 は自分を守るために こうなった のだ。

ベッドの上 の男の身体 が絶えず ねじれる のを見て、

彼女の心 も一緒に 引き裂かれる ようだった。

白い手 に白い綿の布巾 を持ち、丁寧に 彼の顔の冷や汗 を拭った。

素早春香 (すばやいはるか)の優柔不断な表情 を見て、さらに 焦り が募った。


「素早おばさん! 彼を助けて! 絶対に助けて!

彼は 私が 一生愛すると 決めた男なんだから! 」


柔伊 の言葉 と痛々しいほどの 可憐な情態 に、素早春香 は驚いた。


「何? 彼女の男? 柔伊の? 女皇のじゃなくて? 」


その時、素早春香 はこの男 が小姫君のもの だと知った。

だが――なぜ女皇も 同じように 緊張し、心配そう なのか?

それは 娘の未来の夫公 だからなのか?

素早春香 は疑わしく 思った。


「そうだよ、素早神医! あなたの医术は 高い!

彼を助けて!

私の命と 引き換えに してもいい!

彼さえ生きてくれれば、私は 十回死んでも 構わない! 」


まだ 落ち着かない 素早春香 の耳 に、また別の声 が聞こえてきた。


「おお――花月都統、あなた……? 」


素早春香 はまるで この世で 最もありえないこと を見た ようだった。

いつも 身心を修め、この 絶世の神医 は俗世 にほとんど 触れず に生きてきた。

彼女の日々 は、あの 山ほどの薬草 を除けば、誰かを 考えたこと もなかった。

だが今、目の前で 起きていること が彼女を 非常に 驚かせた。

まるで 夢を見ている ようだった。


「素早神医――彼は私の愛する人です。私は彼の女です! 」


その言葉 は非常に 断固 としていた。

たとえ 女皇が怒って 即座に 死ね と命じても、彼女は 変わらない。

この一生、彼女は すべて をこの男に 捧げた。

もし彼が 本当に 死んだら、彼女は 一人で 生き延びたりはしない。

かつて 男を 無物のように 見なしていた 柔城都統・花月 は、ついに 愛の罠に 落ち、二度と 這い上がれなかった。


この 大逆無道で 恥知らずな言葉 を聞いて、

素早春香 は気絶しそう になった。

背後 で仕える 小娘 が支えなければ、彼女は 倒れていた だろう。

だが女皇 は動かず、小姫君 も動かなかった。

彼女たちの視線 はすべて ベッドの上の男 に注がれていた――痛みで 顔も はっきり と見えない ほど苦しむ男 に。


「ここは柔城か? それとも雲国の皇宫の寝殿か?

たった半月 外に出なかっただけで、この世界 はどうなってしまったんだ? 」


素早春香 はようやく 心の動揺 を落ち着け、

余計なことは 言わなかった。

もちろん 彼女も この件 を詳しく 問うわけには いかなかった。

ただ場中の 幾人かの女たち の悲しみと憤り に満ちた 涙に濡れた情態 を見て、彼女は 不憫に 思った。


「陛下―― 確実に あの強大な気勁 を消散させる 確信 はありません。

しかし 試せる方法 が一つ あります。

完全に 効くとは 限りません が、少なくとも この男の体内の気勁 を和らげる ことはできる でしょう 」


素早春香 は、もしこの光景 を見ていなければ、この方法 を口にしなかった だろう。

なぜならそれは どの女も 進んでやりたくない方法 であり、かつての禁制の術 だからだ。

まして ここにいる女たち は皆 天の嬌女、一代の皇者 だ。

彼女も 躊躇った。

だが今、彼女は 試してみたかった――自分が 研究中の この方法 が本当に 役に立つか どうかを。


「おお…… 」


女皇 が顔を上げ、震える声 を漏らした。


「本当ですか? 」


花月 も一様に 顔を輝かせ、すぐに 尋ねた。


「どんな方法? 教えて! 素早おばさん! すぐに試そう! 」


小姫君・柔伊 はベッドの上の男 の様子 を見て、心 は既に 砕けていた。

神医おばさん の言葉 を聞いて、さらに 待ちきれずに 詰め寄った。


「抱く冷却法 です 」


素早春香 は幾人かの女たちの 期待 の中 で、ついに 方法 を明かした。

しかしその反応 はそれぞれ に異なっていた。

素早春香 ははっきりと 見て取れた。

女皇 はそれを聞くと、顔 を真っ赤に 染めた。

ここで 真に この方法 がどういうものか 理解している のは、おそらく 彼女だけ だった。

その時、彼女 は素早春香 に耐え難い 一瞥 を送った。


素早春香 は驚いた――女皇 はまさか 私が あの禁止医术 を研究している のを咎めている のでは?


幸い、女皇の目 には 一片の怒りもなく、

むしろ少女が春を想う ような揺れ動く春情 がきらめいて いた。

それで素早春香 はようやく 安堵 した。


花月 も顔を赤らめた。赤い だけでなく、紫色 になるほど に。

恥ずかしさに 滴り落ちそう で、人を 思わず 妄想 に駆り立てる。

今、彼女は 本当に 妄想して いた。

彼女は医療術 というものが 具体的に どういう方法 かは よく分からなかった が、「抱く」 という言葉 は聞いたことが あった。

普段は 男を嫌って いても、男女間の この欲求の「抱く」 というもの はよく聞いて いた。

柔城の群英楼 も女たちが その「抱く」を 求めるところ ではないか?


「抱く冷却法? 素早おばさん、これはどうやるの? 教えて! 私が彼を助ける! 」


幾人かの女たち の中 で最も幼い 小姫君 は、まだ 人生の情愛 を経験しておらず、

「抱く」の真髄 が分からなかった。

だから すぐに 行動しよう とした。

素早春香 に教えてほしい と言った。

しかしこの神医 もまた 身を守って おり、医書 で読んだことは あっても、それは理論 に過ぎず、実践 とは大きな 隔たり があった。


「本当にいいの? 小姫君 」


素早春香 自身も恥ずかしさ を感じていた。

彼女が この方法 を提案した とはいえ、自分で 試したこと はない。

ましてや 処女の身 で人に 抱くことを 教える となれば、女として 生来の羞恥 が当然 現れる。


「もちろん! 彼は私を助けるためにこうなったんだ!

彼を助けられるなら、 何だって する! 」


まだ よく分かってはいない が、この小娘の言葉 は皆を 感動させた。


「小姫君――ここは 花おばさん に任せなさい。

あなたは まだ幼すぎる。身体が 持たない 」


花月 も口を開いた。

この小姫君 の深い情 を見て、彼女も もう 覚悟を決めた。

自分こそ 彼の女 と言った のではないか?

自分が 小姫君に 劣るわけには いかない。

彼女は 素早春香 に向かって 決意を 固めた。


この二人の 固い表情 を見て、素早春香 は本当に 思わなかった――

彼女たちが この男を これほど 愛している とは。

一瞬、何と 言えばいいのか 分からなかった。


女皇 は立ち上がり、何の 意思表示 もせず、

ただ 静かに 言った。


「私は 先に出ている。ここは 神医に 任せる 」


その後ろ の一隊の黄金鎧近衛 もそれに従い、静かに 退いていった。

この姫君の寝宮 を、治療を 行う 女たち に残して。


「花月――本当に 決めたのか? 」


女皇の様子 を見て、素早春香 は事が 彼女の言う通りに 進む と分かった。

今 はもはや 成り行きに任せる しかなかった。

ダメ元で やってみる しかない。

ただ 本当に 効きますように――そうでなければ、神医の看板 は今度こそ 砕ける。


「うん…… 」


一声の 甘い承諾 が花月 の口 から漏れた。

どれほどの決心 が必要だった か――身体を 男に 捧げる とは。

彼女は かつて 考えたこと もなかった。

この人生 伴侶なく 老いる と思っていた。

あるいは子供が欲しくなったら、適当な男を 見つければいい と思っていた。

だが今 は彼女が この男を愛している からだ。

その感覚と意味 はまったく 異なる――それは 感動 であり、渇望 でもあった。

彼女にも 区別が つかなかった。


花月 が承諾する のを聞いて、素早春香 の可憐な顔 に敬服の念 が浮かんだ。

彼女は 思わなかった――名高い 柔城都統 が、一人の男のために 自らの人生 を捧げる とは。


「小姫君――私と一緒に 隣の偏室で 待っていましょう。

抱く冷却術 は第三者の 立ち合いを 許しません。

花月――必ず 覚えていてください。

一度 抱く冷却術 を施せば、あなたは この男に 体内の寒熱を 存分に 放出させなければ なりません。

さもなければ 熱に熱が加わり、火に油を注ぐ ことになります。

そうなれば この男は 確実に 死にます 」


素早春香 は事の重大さ を丁寧に 伝えた。

花月 が慎重に 行動する ように。


「素早神医、ご指導 ありがとうございます。

必ず 全力を尽くします 」


花月 の羞恥に 染まった 可憐な顔 に確信 が浮かんでいた。

この男さえ 生き延びてくれるなら、自分が死んでも 構わない。


「ええ――これが 冷却の口诀 です。あなたたちが 一体となったとき、

必ず 全力 でその真気 を引き出し、放出させて ください。

そして――もし あなたが 持ちこたえられなくなったら、

必ず 大声で 私たちを 呼んでください。

私と姫君は 隣で あなたを 見守っています 」


素早春香 は最も重要なポイント を一つ一つ 注意喚起 した。

予想外の事態 を防ぐ ために。


今度は 花月 はただ うなずいた だけだった。

一方、小姫君・柔伊 には疑問 が湧いた。


「素早おばさん――花おばさんは 何が 持たなくなるの?

一人じゃ 足りないの? じゃあ 私も 一緒に 残って 手伝おうか? 」


神医 の説明 を聞いて、小姫君・柔伊 は心配そうに 提案した。


「いいえ、いいえ。花おばさん一人で 大丈夫です。

それは 万一の 場合の話です。

たぶん 何も起こらないでしょう。

さあ、小姫君――偏室で 待ちましょう。

花おばさんに 早く この男の治療 をしてもらわなければ 」


素早春香 はまだ 成長しきらない 小姫君 にこれ以上 説明する わけにはいかず、

花月 に目配せ をして、小姫君 がどんなに 嫌がっても、その小さな手 を引いて 部屋を出て いった。

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