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第15章 二人の美人、雄を争う


荷蓮 と呼ばれる女 は確かに いくぶんかの 麗しさ があった。

今 は臨戦態勢 で立ち、その 雪のように輝く彎刀 は日差し を反射 し、目を 灼くように 輝いていた。

まるで 全身の心神 を一瞬で 凝縮した かのように、微動だにしない。

優しく静かに 漂う 戦いを前にしても動じない 達人の境地――

だが同時に、彼女の全身 からは制御不能な 爆烈な気配 が絶え間なく溢れ、庭全体 を覆っていた。


一方、俺 の女・花月 も表情 は厳しい が、死を恐れぬ 強い意志 があった。

勝敗 は彼女の目 には 重要ではなかった。

なぜなら彼女の心 は愛 で満ち、すべて が自然に 一つの境地 に達していた からだ。

彼女の玉手 が軽く上がり、その宝剣 が空中 に異常な軌跡 を描く。

瞬時に 様々な元素 が剣気 に溶け込み、水波のように 幾重にも 広がった。


花月の実情 を知る者 なら分かる――

これが 七情剣法 の起手式 だ。

唯一 異なる のは、花月 が自ら悟った魔法 をその中に 織り交ぜ、その気勢 をさらに 猛烈に したこと だ。


まだ 技を放つ前に、その 澎湃たる気勁 がすでに 届いていた。

周囲の護衛たち はまるで 波濤の中の小舟 のように、足元が おぼつかず、慌てて 数歩後退 し、

包囲網 を広げて ようやく体勢 を立て直した。

女皇・雲ここ も四人の女性金甲衛士 に囲まれて 壁際 まで後退 し、さらに 何重もの 女衛 が彼女の前 に立ちはだかり、

この 二人の高手指の 気勁の漏出 を防ぎ、女皇 を傷つけまい とした。


俺 は動かなかった。

俺 の目 には、今の花月 が最も重要 だった。

他のすべて はどうでもよかった。彼女が生きていれば それでよかった。

奇妙なことに、猛烈に見える気勁 は俺 の身 には ただの一陣の風 に過ぎず、

その 心地よい爽やかさ を除いて、あまり 感じなかった。


今の俺 は知らなかった――

自分の身 には 超越的な力、神魔をも超える力 が宿っている ことを。

まだ 使いこなせてはいない が。

女性2人の力 は強大だが、俺 の身 に比べれば、月と蛍火 の差 もあった。


「行け! 」


ついに 荷蓮 が動いた。

空中に 構えられた 月牙クレセントブレード が風に応じて 動き、

凝固しかけた空間 を一瞬で 大きく裂いた。

そこに 風が生まれ、水が生まれ、空気が生まれた――

そして すぐに 不屈の戦意 も生まれた。


それは 細い綿の帯 のよう であり、一泓の秋水 のよう だった――

柔らかく 一片の力もない ように見えた。

だがそれでも 狂烈な刀切り に立ち向かった。

一鋼一柔、まるで 画竜点睛 のように、ここで 遊戯 を繰り広げた。

花が香り、葉が舞い、妙漫に 飛び散る――

もし 時折 聞こえる 「チンッ」 という衝突音 がなければ、

人々 はこれを 舞踏 と思っただろう。あまりに 美しかった から。


俺 は思わなかった――

あの小女、いや俺の小女・花月 の使う剣法――七情(ななじょう)剣法 が、

まるで 幽かな情話 のよう であり、一夜の 香艶な情愛 のよう だった。

恋人たちが 愛し合う 感覚 を余すところなく 表現していた。

だが惜しむらく、俺 の意識 の中 では、まだ 霊と欲の極致 に達していない ように思われた。

おそらく人生の情熱 を経験していない ため、花月 も七情剣法 の最後の一式――最も強力な 「情海無限」(じょううみむげん) を悟っていない のだろう。


後に知った ことだが、この七情剣法 は一代の舞伎・公孫三娘 から伝わる 絶世の剣法 だ。

公孫三娘 は生涯に七つの愛を経験し、すべて恨みに終わった と聞く。

悲劇な女の遺憾 に満ち、感じるところがあって、舞を技に変え、

一身の舞技 を一套の剣法 に変えた――それが 七情剣法 だ。


しかし公孫三娘 は七情剣法を創り出した後、偶然 ある 狂覇で多情な男 に出会い、

ついに 人生の情愛 を見つけ、心 を彼のものにした。

その時、自分が創った七情剣法 があまりに 偏激 だと悟り、

七情剣法 の剣招 に一式の隠招 を組み込んだ――「愛憎絡み合う」 と名付けて。

それは 人間の情愛 とは、愛も絡み合う であり、恨みも絡み合う だという意味 だ。

だが惜しいことに、今まで 誰も それを 悟れなかった。

したがって正しくは、七情剣法 は全八式の剣技だが、花月 もそのうちの六式 しか悟っていない。

だから威力 はまだ 最大 ではない。

しかし彼女自身 が魔法の修練者 でもあり、その高深な魔法 には 非凡な悟り がある。

今、両者を 相互に 運用 することで、いくぶんかの 鋭い気勢 が生まれていた。


副指揮史 と呼ばれる女・荷蓮 にも、天然の 狂暴な気 があった。

身体 からは無意識に 莫大な蛮力 が溢れ、

一振りの 鋭い月牙刀 が一式を放つごとに 一波の気勁の波 が生じ、

この空間全体 をさらに濃厚な 暴虐の気 で満たした。

力 が名誉 を意味する――今、それが 特に 重要 になっていた。


狂烈で暴力的な刀式 と柔らかく絶え間ない剣式 が絡み合う。

二女 は皆 汗だく だった。

だが一人 は幸福のために戦い、一人 は私欲のために戦う。

その心構え はまったく異なり、攻め方 も同じではなかった。

荷蓮の攻め は迅速で 残忍 であり、一振りごとに 相手を 死に追いやる 邪悪 があった。


一方花月の剣式 は絶え間ない 情愛の波 のよう であり、

幽幽と 長く、人の心肺 を打つ。

七情剣法 の至境の内包 を生き生きと 発揮 し、

その舞姿 は百花が咲き誇る ようであり、春風が そよぐ。

一波の熱 が過ぎた後 には、いつも 爽快な心地よさ が伴う。

これが 二人の 対決 だ――氷と火の 戦い と言える。


二人の闘い が進むにつれ、外場の雰囲気 もますます 高まった。

女皇・雲ここ も引き込まれ、今 は誰の生死 も考えず、

ただ 場中の 異様な舞技剣法 の妙 に没頭していた。

皆が 同じ だった――女性護衛たち だけでなく、俺 でさえも、

この 舞ではない舞態 に魅了されていた。


荷蓮 が襲いかかる瞬間 にも、花月 はいつも

絶妙な舞姿 で何気なく かわす。

跳ね上がり、翻り、膝を曲げ、顔を仰ぐ――

その一つ一つの姿勢 はすべて 優美 だった。

彼女の 可憐な身体 と口から 漏れる 絶え間ない 嬌声 が相まって、

本当に 人を 魅了した。

俺 は今すぐ 彼女を腕に抱き、思い切り 愛してやりたい と思った。


「花月――お前の七情剣法 がここまで 進歩する とは思わなかった。

よし―― 我が 斬情剣術 を見よ! 」


退いた荷蓮 は顔を怒りで 歪め、狂烈な 陰毒の気 が再び 高く 燃え上がった。

その 整った顔 がもったいない――完全に 台無し だった。


「斬情剣術・狂覇式―― 無情無愛! 」


一声の大喝 とともに、荷蓮 はついに 最も鋭いな一刀 を放った。

澎湃たる気勢 はまるで 世界の情愛 を一刀で 断ち切ろう とする かのようだった。


花月 自身も不思議 に思っていた――

どうして たった一日 の間に、自分の七情剣法 がまた 新たな段階 に達した のか。

その時、彼女は まだ 悟っていなかった――

すべて は自分が 情愛の枷 を解き放ち、自由な広大な空 を泳ぎ始めた からだと。

これまで 塞がっていた 様々な内脈 が、今 一気に 開かれ、内力 は当然 大增 した。


荷蓮 が刀意を 出し尽くし、巨大な波濤 を見せた のを見て、

花月 は心神を 引き締め、

七情剣法 の最も 強力な一式――「情行く何処」 を繰り出した。

その宝剣 は幾度か 花を揺らし、まるで 七つの雪梅 が静かに 舞い降りる かのようだった。

彼女が 最も熟知する 高階魔法元素 がそれに 絡み、剣気 が重なる。


場中の気勢 が一変 し、護衛たち は皆 凝神して 見守り、

全力 を自分たちの前 に集めて 堅固な障壁 を形成 し、絶え間ない剣気 に抵抗 した。


一筋の稲妻 が走り、光 は即座に 消えた。

一匹の銀蛇 が舞い、蛇 は跡形もなく 消えた。疾風の如く。

二人の少女 は庭の半空 で激突 し、水と火 がぶつかって

一筋の 美しい虹 を生み出した――この空間 をいくぶんかの 喜び で彩る かのように。

しかしこの 恐ろしい喜び は、一つの強大な力 に変わった。

二女の 衝突自体 に含まれる 真元 があまりに強大 で、

お互い 耐えられず、その発した力 を狂ったように 外に 漏出 させ、

自身の力の均衡 を保とう とした。


言うまでもなく、二人の気勁 はすべて

その虹の軌跡 に沿って 傾注 した。

外から見れば、まるで 二匹の蝶が舞う ようだった。

だが実際 には、彼女たち は力が 耐えられず、発した気勁 を漏出 させていた のだ。


本来、彼女たちが 気勁を漏らす のは最も 普通のこと だ。

だがその時、予想外の出来事 が起きた。


「クソ男! 悪い男! どこにいるの? 会いたいよ! 」


庭の側門 から銀鈴のような声 が聞こえてきた。

その声 を聞いて、誰もが その主 が小姫君・柔伊 だと分かった。


俺 は驚いた。

なぜなら半空の二女 の狂怒の気勁 がすべて その側壁 に向かって 傾いている のが見えた からだ。

「やめろ」 と叫ぶ間もなく、その門 から一つの 可憐な 小さな姿 が飛び込んできた。

間違いない――小姫君・柔伊 だ。


半空の二女 も驚いた。

この流れに乗った 狂泄 がまさに 小姫君 に向かって いる。

だが引き戻すこと はできず、わずか 一瞬の力 さえも戻せない。

ただ見つめる しかなかった――あの可愛い小姫君の姿 がますます はっきり となる のを。


「いた! あなた…… 」


小姫君 の嬉しそうな言葉 が終わる前に、

俺 はすでに 彼女の前に 立ちはだかっていた。

意に従い、心が動く――風のように 速く、俺 はそれを 成し遂げていた。


氷と火 の交流気勁 がついに 到達した。

多くの人の目 に、俺 の傲然たる身体 がその 猛烈な気勁 を坦然と 受け止めた。


「ドンッ!」 という轟音 とともに、

俺 の身体 は三丈 の彼方 へ吹き飛ばされた。

「バタッ」 と音 を立てて 地面 に落ち、ちょうど 女皇・雲ここ の足元 まで転がった。

その かすかな意識 が消え去る 寸前、俺 は彼女の 雪のように白く 誘惑的な 二本の太腿 を見た ような気がした。


「ああっ……! 」「ああっ……! 」

二つの叫び声 が上がった。

地面 に落ちた花月 と我に返った柔伊 が悲壮な声 で叫び、

俺 の気を失った身体 に飛びかかった。


しかし彼女たちより も速く、女皇・雲ここ が動いた。

その瞬間、彼女の心 は動いた。

彼女は 涙で 目 を曇らせた。

――なぜ? なぜ? なぜ私は男のために涙を流すのか?

その答え を問う勇気 は誰も なかった。


「クソ男……クソ男……! 」


小姫君 はなおさら 滾る涙 を抑えられず、悲しみ に泣き始めた。

その 痛々しいほど可憐な 動人の顔 は、見る者のすべて に伝えた――

この小娘 がこの男 を本気で 本気で 大切に思っている と。

彼女の口に は「クソ男」 とある が。


「岡見……岡見!

私を 怖がらせないで! あなたを 怖がらせないで!

もしあなたに 何かあったら、私が死んでも 瞑目できない 」


その手 はすでに 男の閉じた顔 に触れていた。

花月の顔 にも言葉にできない 傷心 があった。

彼女はこの男を愛し、この男を守る――絶対に 彼に 何かあってはならない。


一方、雲ここ は最初に 俺 の身体 を抱き起こし、

その頭 を彼女の 高くそびえる 胸 に当て、

玉手 は俺 の鼻 に近づけ、細やかに 息を確かめた。

彼女の目 にも いくつかの 気づきにくい 涙の跡 があった が、

彼女は それを うまく隠し、誰にも 見せなかった。

それが 女皇としての 責務 だ――決して泣いてはならない。

なぜなら 彼女は 皇者 であり、強くあらねばならない からだ。


「御医を 呼べ! 」


女皇 はついに 大声で 叫んだ。

なぜなら彼女も、この かすかな息 の男 を案じ始めていた からだ。

一瞬、皆が 慌てふためいた。

この見知らぬ男 に対して、女皇 が怒り を見せた のだ。


この一団の 女護衛たち が俺 の身体 を担いで 去っていく のを見つめ、

その後に 付き従う 幾人かの 悲しいの女たち を見つめながら、

月牙刀 をまだ 鞘に収めていない 荷蓮 は動揺の表情 を浮かべていた。

彼女は信じられなかった――

一人の男 が、これほど多くの女 を泣かせる などと。

もし 彼女の目 が間違っていなければ、偉大なる女皇 でさえ そう だった。

――ありえない。ありえない。

荷蓮 は心の中で それを 拒絶し、認めることを 拒んだ。




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