表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

ポイント交換

「マジかよ……!」


 恒一は歯を食いしばると、すぐに視界のホログラムへ目を向けた。


(A.R.G.O.S、何か方法はないのか)


 青白いウィンドウが静かに展開する。


 ━━━━━━━━━━━━

 【回答】


 対象の回復には医療行為、

 または回復系スキルが必要です。

 ━━━━━━━━━━━━



「なら、そのスキルを取る」



 ━━━━━━━━━━━━

 【回復支援 Lv.1】


 必要ポイント:1000Pt

 現在ポイント:400Pt


 取得できません。

 ━━━━━━━━━━━━



「足りないのかよ……!」


 一瞬だけ沈黙が流れるが、すぐに新たなウィンドウが開いた。



 ━━━━━━━━━━━━

 【提案】


 ポイント交換機能をご利用ください。

 ━━━━━━━━━━━━



 その下へ項目が並ぶ。



 ━━━━━━━━━━━━

【ポイント交換】


 武器・装備

 食料品

 衣類・寝具

 移動用品

 素材

 生活用品

   ・

 ━━━━━━━━━━━━


(アイテムまで交換できるのか)


 彼は迷わず【食料品】を選択する。

 一覧が表示された。


 ━━━━━━━━━━━━

 【食料品】


 水………………5Pt

 塩……………10Pt

 米……………20Pt

 干し肉………30Pt

    ・

    ・

    ・

 スポーツドリンク……500Pt

 経口補水液…………1000Pt

    ・

    ・

    ・

 ━━━━━━━━━━━━


 下にスクロールすると、目当ての飲料水があった。


「経口補水液、高っ……」

 思わず声が漏れる。


 今の所持ポイントでは到底足りない。

 選べるのは一つだけ。


「スポーツドリンクを購入」


 ━━━━━━━━━━━━

【交換決定】

 500Ptを消費します。


 ━━━━━━━━━━━━


 青白い光が集まり、恒一の手の中へ一本の透明な容器が現れた。


 巴と褐色の女性が目を丸くする。


「な……なんだ、その器は」

 見たことのない液体の入った何かを巴はまじまじと観察している。


「薬みたいなものです。後で説明します」


 恒一はキャップをひねる。

 小さく「カチッ」と音が鳴った。


 二人はさらに息を呑む。


 恒一は綾姫の頭をそっと抱き起こす。

「姫様」


「少しだけ飲んでください」


 意識が朦朧とする綾姫は、小さく口を開けた。

 恒一はゆっくりと唇へ容器を近づける。


 透明な液体が喉を潤すたび、綾姫の喉が小さく動いた。


「よし……」


 容器を置くと、再びA.R.G.O.S.を呼ぶ。



(着替えと寝具は)



 ━━━━━━━━━━━━

 【推奨】


 衣類・寝具

 ━━━━━━━━━━━━



 一番ポイントの安い物を選択した。



 ━━━━━━━━━━━━

 【簡易寝具】


 麻布団…………50Pt

 麻枕…………10Pt

 ━━━━━━━━━━━━

 【簡易衣類】


 麻小袖…………20Pt

 帯………………5Pt

 ━━━━━━━━━━━━


 恒一は必要最低限のものだけを選択した。

 粗末ではあるが、清潔な麻の小袖と布団。


 今の綾姫には、それだけで十分だった。

 光と共に床面に寝具と衣類が現れる。


 その光景に巴と褐色の娘は後退った。


(早く熱を逃さないと……!)

 恒一は綾姫の帯へ手を伸ばす。


 帯をほどき始めた、その時だった。

「…………」


 恒一の手が止まる。


(……いや)


 振り返る。


「巴さん」

 異常な光景を目の当たりにしたばかりだからか、彼女は警戒しながら答えた。


「は、はい」


「姫様の着替えをお願いします」


 巴は一瞬驚いたような顔をしたが、静かに頷く。

「承知した」


 恒一は背を向け、寺の外へ出た。


 するとしばらくして声が掛かる。

「終わりました」


 恒一は新しい麻小袖へ着替えた綾姫を布団へ寝かせる。


挿絵(By みてみん)


 頬は赤く、苦しそうな呼吸が続いていた。


 恒一は脱いだ麻小袖を手に取り、団扇代わりにして静かに風を送る。

 少しでも身体へ熱がこもらないように。


 やがて額へ手を当て、続いて手首へ指を添える。

 脈はまだ速い。


 その時だった。

 綾姫の細い指が、恒一の手をそっと握る。


「……っ」

 恒一は少し驚いたが、そのまま静かに見守った。


 綾姫は目を閉じたまま、小さく呟く。

「……父上……母上……」


 その声は、幼い子どもが親を呼ぶように弱々しかった。


 恒一は何も言わない。

 ただ静かに、その手を握らせたままにした。


 数十秒が過ぎた頃。

 恒一は巴へ視線を向ける。


「代わってください」


 巴は静かに恒一の位置へ座る。

 綾姫の手は、今度は巴の手をぎゅっと握った。


 恒一は立ち上がる。

「この近くに川か湧き水があるか見てきます」


「すぐ戻ります」

 そう言い残し、恒一は夕暮れの山寺を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ