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青春短歌〜言葉にできない気持ちを、私たちは三十一文字にする〜  作者: 老川
一年生二学期

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19/26

文化祭へ

 夏休みが終わり、私たちは二学期の登校日を迎えていた。暑さのピークは過ぎていたが、まだまだ太陽は高く輝いており、残暑と呼ぶにふさわしい日が続いていた。


 私はいつものようにまひると一緒に高校への道を通学していた。春の間は桜が咲いて綺麗だった通りは、青々と葉を茂らせている。夏休みの間はお互い部活が忙しく、まひるとちゃんと話をするのは久しぶりな気がした。


「まひる、随分と日焼けしたね」


「うん!足腰を鍛えるためにって、ビーチバレーの練習があったんだ。屋内競技の部活に入ったはずなのに、かなり焼けちゃったよ。しずくは海行ったりした?」


「ううん。短歌部の合宿は静かな感じだったよ。夏祭りに行ったくらい」


「夏祭りかー。しずくと一緒に行きたかったな。二学期はちゃんと遊ぼうね」


「うん」


 まひるとは長い付き合いなので、多少間が開いたことを特別意識することなく、自然に会話できるのが良いところだ。部活の話になると少し話が合わなくなるのが残念ではあったが。


「二学期は文化祭があるから、楽しみだね!」


 その言葉通り、二学期に入るとあっという間に文化祭に向けた話が始まった。クラスの実行委員にはまひるが立候補した。もう一人の男子は、桐生彰という生徒だ。まひると似てクラスのムードメーカー的立ち位置なので、文化祭に向けて張り切っている。


「はーい、じゃあうちのクラスの出し物を決めます。意見ある人はー?」


「私、カフェがいいな」


「焼きそばとか定番じゃね?」


「食べ物以外がいいなー」


 早速、ホームルームの時間を使って、クラスの出し物に向けた打ち合わせが始まった。まひると桐生の仕切りのもと、さまざまな出し物の意見が出される。クラスの輪の中で張り切るまひるはとても輝いて見える。私は自分の席に座りながら、どこか自分には遠い世界のことのようにそれを眺めていた。


 クラスが文化祭ムードに盛り上がる中、短歌部でも文化祭に向けた話し合いが始まっていた。


「今年も短歌部で文化祭に展示を出すことにした。教室を一つ使っての短歌の展示コーナーだ。準備と片付けの他には人手はいらないから、クラスの出し物とも両立できると思う。というわけで、展示用の歌を作るように各自励んでくれ。それから、」


 そこで言葉を切った三上は私たちの顔を見回す。


「文化祭の出し物を最後に、三年生は引退することになっているから、その点も理解しておいてくれ。このメンバーでの最後の活動だから、楽しめるといいな」


「部長が引退ですか。あっという間ですね」


「三上先輩は進学でしたよね。引退したら勉強で忙しくなりますね」


「三年生は文化祭で引退なんですね…」


「ああ、朝倉さんにはちゃんと言ってなかったか。まあ、木暮と藤原はいるから、三人で頑張ってくれ。とは言え、その前に文化祭の展示だな」


 ひよりが右手をあげた。


「部長、展示用の歌はテーマを決めるんですか?去年は題詠でしたよね」


「ああ、去年はそうだったな。ただ、今年はテーマは決めずに、各々人に見せたいと思う歌を二、三作って展示することにしようと思う」


「人に見せたいと思う歌ですか…」


 これまでの部活の中で、先輩たちや顧問の高橋に歌を見られることはあったし、それには慣れてきたつもりだった。しかし、幼馴染のまひるに歌を見せるという約束はまだ果たせていない。そんな中で、文化祭を訪れる多くの人やクラスメイトに自分の歌が見られると想像すると、胸の奥が落ち着かなくなった。とてもじゃないが、見せたいと思えるような歌が作れる自信もなかった。


「しずくちゃん、大丈夫?」


 隣に座るひよりに顔を覗き込まれる。


「はい…クラスのみんなに見られるかもと思うと…」


「そっか。緊張を解いてあげることはできないけど、歌をよくする手伝いはできるから、私たちを頼ってね」


「木暮はいいことをいうな。実際の展示までは時間があるから、ゆっくり考えていこう。それと朝倉さんはこれまでにもいい歌を作っているから、その中から選んで展示でも構わない」


 先輩たちは私を気遣った声をかけてくれるが、私の心はまだ晴れないままだった。

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