2章 2ー①
オレにあてがわれた部屋は、六畳程だった。
年季の入った机の上に、ノートパソコンが。そしてあたらしそうなエアコンと、ベッド。
そして片隅に置かれているハンガーラックに、壁一面の本棚。
「おる間は、好きに使い」
タケさんはそう言うが、オレの分の荷物は、たかが知れている。
バックの中身の半分は、タケさん家に持ってきたお土産だったし。
オレの荷物は着替えと、学校支給と私物のタブレットが二つ。
後、参考書がいくつかだ。
母さんが「お世話になるんだから」と詰め込んだ東京でしか買えない物の数々は、山のようにあった。
「ありがとうな。親戚なんやから、こないに気い遣わんでもよかったのに。とりあえず、仏壇にお供えしてくるわ」
嬉しそうな、困ったような顔をしたタケさんが部屋を去ると、オレはベッドの上にゴロリと横になった。
夫の親戚なのだ。母さんが気を遣うのは当たり前だ。
父さんは、こういう時、何もしない。母さんがやってくれると当たり前に思っているのだ。
「武史さんは、何が好きなの?」
という質問も、華麗にスルーする父さんに、母さんはため息をつきつつ、準備をしていた。
まぁ、母さんの愛想が尽きても、仕方ないか。
公立校から国立の大学に行って、在学中に自身の会社を立ち上げた父さんは、仕事に関してはやり手だ。
けど父さんは、自分のやりたいことしか、やりたくないタイプだ。
オレが小学校受験するのも、そもそも反対だったくらいだ。
全部母さんがお膳立てして、何とか親子面接に引っ張り出したくらいなのだ。
それなのに。
見事に失敗したオレ。
「もう中学受験はさせない!」
と、反対していた父さんに逆らって、「この子のためよ!」と、塾に入れたのは母さんだった。
反対に母さんは、大概のことは飲み込んでくれるのに、譲れないところは絶対に折れない。
オレを自分の母校に入学させる。
母さんが譲れないことの一つなのだ。
いや、一つだった。
今はもう、母さんはオレに興味を持っていない。
受験を辞めると言った時に、あからさまにホッとした表情を浮かべていたのを、オレは見ていた。
母さんだって、わかっていたはずだ。
オレに、母さんの母校は合っていない、と。
小学校一年から、それこそ幼稚園の頃からやっているのに、模試でも、中々A判定が出ない。
そもそも、校風が合わないのだ。
家柄のいいお坊ちゃん、お嬢ちゃんが行く伝統校である。
それが悪いとは言わないよ。
けど、オレはせっかく受験するなら、理系の学部が豊富な大学の付属校に進学したかったのだ。
それこそ、数学オリンピックや、科学技術コンテストに出場するような、ある意味変態な子たちがいる学校に。
でもそんなの、母さんにも、母さんの親戚にも言えないじゃん。
だって、オレを母校に合格させるために、投資してもらっていたのだから。
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