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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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13 作戦は戦略的に、思いは情熱的に 1

 父さんを説得する材料を集めなければ。

 意気込んでいたオレの出ばなをくじいたのは、久しぶりに会うタケさんだった。


「そんなん無駄やろ」

 オレと母さんが再び愛媛に訪れたのは、十一月の半ば。

 高専のオープンキャンパスに合わせて、やってきたのだ。

 

 八月以来会っていなかったのに、タケさんは全然変わらなかった。

 千尋と共にオレと母さんを松山空港まで迎えにきたタケさんは、バッサリと切り捨てた。

「なんでだよ!?」

「こら、陽太!」


 食ってかかるオレに、母さんは慌ててたしなめる。

 タケさんは、苦笑しながら母さんに向かって

「気にせんといてください。ずっとこんな感じで、過ごしとったんで」

 と報告する。


「あら……」

 と、絶句した母さんに、千尋がフォローを入れる。

「タケちゃんからお願いしているんです。お客様扱いしないから、自分の家のようにくつろいで欲しいって。こちらにいる間は、遠慮なく手伝ってもらっていましたし」

「それでしたら、いいのですが……」

 まだ不安げな母さんに、タケさんも言い添える。


「陽太はええ子です。ちゃんと自分の頭で考えて、気持ちを声にすることが出来る。大人でもなかなか出来ないことです」

「そう……かしら?」

「ええ」

 運転しながらタケさんは、助手席に座る千尋に一瞬視線を向けた。


「千尋は三年も一緒に住んどるのに。まだ自分の気持ちを周りに伝えるん、苦手やけんな」

「ちょっ! 私の話はいいでしょう!?」

 急に話題を振られた千尋は、顔を真っ赤にしてタケさんに抗議(こうぎ)する。


 三ヶ月前まで日常的に見ていたやりとりに、オレは声を上げて笑ったのだった。

 

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