表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海にいだかれて  作者: 雪本 風香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/76

12章 3

「進路として、愛媛の高専を考えている。そこに行くと、在学中に航海士(こうかいし)の免許が取れるんだ」

 オレの言葉対する父さんと母さんの反応は、正反対だった。


「……いいんじゃない?」

 と、言ったのは母さんだった。オレは正直、意外だった。

 だって、母さんは(かたく)なに、自分の母校に入れることにこだわっていたから。


 オレの顔を見た母さんは、困ったように笑った。

「陽太が自分で決めたなら、応援するわよ」

「じゃあ……なんで……」

 今まで小学校受験や中学校受験をさせようとしたのか。

 答えは単純だった。


「お母さんは、将来の選択肢を広げてあげたかっただけ。だって陽太は、譲っちゃうから。自分で決めるのが苦手でしょう?」

 

 母さんの言葉に、オレはちょっとだけムッとした。


 決めるのが苦手じゃない。こうしたい、って伝えても、「ダメ」って言われ続けてきたから、諦めていただけ。


 でも。


 もっと早くに「イヤだ」とか、「こうしたい」って素直に言えば、もしかしたら、母さんも受験を押し付けなかったんじゃないか。

 後悔しても、過去は変えられない。

 だけど、オレは()()()()を変えに来たのだ。


 今までのように、父さんや母さんの敷いたレールを走るのは、楽だ。

 二人とも、それなりの地位も財力もある。言うとおりにしていたら、大きな失敗はせずに大人になれるだろう。


 けどさ、オレはもう、親が敷いてくれる当たり前の道を歩むのは、イヤになったんだ。

 だから、中学受験も辞めた。父さんと母さんも別々の道を歩み始めた。


 約一月ぶりに会う父さんと母さんは、無理して家族を続けていた時よりも、スッキリしていた。

 お互いに、結婚中に別々のパートナーを作った事実は、いいことではないだろう。

 実際に、オレはそれで苦しんだし。

 父さんも母さんも、オレに見せないところで少なからず、悲しむこともあっただろう。


 オレたち家族は、分かっていなかったんだ。

 いくら、血がつながっているとはいえ、全く違う人間なんだということを。

 お互いを尊重しないといけないことを。


 そのことをオレは、タケさんと千尋に教えられた。


「いい夏休みになったようね」

「うん」

 応援してくれるように頷く母さんには、オレの気持ちは伝わっている。


 問題は、父さんだ。

 先ほどから、険しい顔をして腕組みをしている。


「父さん……は?」

「反対に決まっている」

 

 間髪いれずに答えた父さんの返事は、予想通り、厳しいものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ