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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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11章 3

「ちゃんと、話しいや」

 近藤のおばあちゃんは、そう言い残して、お盆を持って去っていく。


 部屋に残されたオレは、タケさんと向かい合った。

 けれど、タケさんは。

「悪いな、陽太。まだ仕事あるんや。もうちょい休むか? それとも……」

「行く! ついていくから!」

 食い気味なオレに、タケさんは圧倒されたようだ。

「お、おぅ……。わ、わかった」


 タジタジになりながらもタケさんは、オレを引き連れて、部屋を出ていくのだった。


 ※


「うっ……げぇぇぇ!!」

「おいっ、陽太! ここで吐くなや!」

 タケさんの怒号に、オレはなんとか上がってきた胃液を飲み干す。


 すっかり酔いが治まった気でいたけれど。

 充満(じゅうまん)する魚の臭いに、オレは再度、気持ちが悪くなっていた。


 タケさんが帰ってきた時に、服に着いている臭い。

 それの何倍も濃くした臭いが、色んなところから(ただよ)っているのだ。


 魚臭いのもそうだが、生臭いのだ。

 ここで魚を(さば)いているから仕方ない。だが、一匹なら平気だが、次から次へと内臓を処理されていくのだ。

 さすがに、血の臭いにクラクラする。


「しんどいなら、さっきの部屋に帰っとき」

「イヤだ!」

 タケさんは、眉を寄せる。不快感をあらわにしながらも、

「勝手にせい」

 と、言い放ってくる。


 カチン。久しぶりに、タケさんの言葉にカチンときた。

「勝手にするよ!」

 オレの怒鳴る声に、タケさんは、はぁ、とため息をついたのだった。

 

 

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