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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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11章 2

「そんなこと、ないけん!」

 と、笑い飛ばしたのだった。


 びっくりしたのは、オレだ。

 一応さ、悩んだ上で相談したんだよ?

 なのに。


「タケ(ぼう)は、(おんな)じこと、しよるだけやけん!」

「タ、タケ坊!?」


 タケ坊って言われているのは、タケさんのことだよな?

 あんなにいい大人なのに、まだ、坊っちゃん扱いされるなんて。

 どうなっているんだ、ここの人間関係は!?


 言葉が出ないオレを気にせず、おばあちゃんは話し続ける。


「タケ坊は、(いわお)さんにされたんと、(おんな)じこと、しよんや。あ、巌さんちゅうんは、タケ坊のおじいちゃんな」

「あ、漁師だったっていう……?」

「そうや。聞いとったんか?」


 頷くオレを確認したおばあちゃんも、うんうんと、首を上下に振った。


「タケ坊がな、漁師になりたいって言いよった時にな。巌さんが船に乗せたんや。漁師になるなんて反対や、ちゅうてな。今日の陽太くんと全く同じや」

「へぇー、そうなんだ」

 意外だ。それよりも、オレが気になるのは。


「それでタケさんは、どうしたの?」

「そんなん、決まっとるやろ。タケ坊が今、漁師になっとんが答えや」


「近藤のばあちゃん、喋りすぎや」

 後ろから声がして、オレは飛び上がった。

「タタタタ、タケさん!?」

「もう片付いたんか、あっちは」

 おばあちゃんは平然としている。タケさんは苦笑しながら、もう一度「喋りすぎやって」と呟いた。


「やけど、事実やろ。ここいらの(もん)は、全員知っとる」

「そやけどな」

「なんな、アンタ。カッコつけとるつもりなんか?」


 おばあちゃんのセリフに、タケさんは吹き出した。

(かな)わんわ、ばあちゃんには」

 しゃがみ込んだタケさんに、おばあちゃんは追い打ちをかける。

「勝てるつもりやったんか、タケ坊なんかが?」


 笑ったらダメなのに。子ども扱いされるタケさんを見ると、どうしても込み上げてくるものがある。

「笑うなや、陽太」

 低く唸るタケさんに。

「こら、自分が勝てんからって、弱いもんに当たられん」

 ピシャリと注意するおばあちゃん。


 あまりにも、滑稽(こっけい)で。

 オレは、タケさんに悪いと思いながらも、声を上げて笑ってしまった。


「陽太……」

 タケさんは、さっき怒られた手前、それ以上何も言えないまま。

 ガックリと肩を落としたのだった。

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