11章 タケさんの本心 1
漁港に帰ってきたときには、オレはもうヘロヘロだった。
吐きすぎて、喉も痛いし、胃もひっくり返りそうだ。
体重も何キロか減っている気がする。
「あかんな、陽太。こんなんで酔うとんなら、船に乗るの、向いてないわ」
オレを抱きかかえるように、船からおろしたタケさんは、
「そっちで休んどけ」
と、知り合いのおばちゃん、いや、おばあちゃんにオレを託す。
「ありゃまぁ。船酔いかぁ」
そういいながら、おばあちゃんはオレの手を引いて、控室のようなところに連れて行く。
「そこいらで、横になっときぃ。なんか口に入れるもん、持ってくるけんな」
オレは、たたみの上に転がった。
船から降りていたのもあるし、横になっていると少しずつだけど、体が楽になる。
そうすると。
「腹、減った……」
朝からなにも食べていないのだ。そして散々吐いた後で、体が栄養を欲していた。
「ありゃ、陽太くん。もう起きて大丈夫なんか?」
さっきのおばあちゃんが、ヒョコリと顔を覗かせる。
手に持っているお盆の上には、おにぎりと味噌汁が……。
ぐぅー。
オレの腹が、情けない音を立てた。
おばあちゃんはケタケタと笑うと、ちゃぶ台っていうのか、低いテーブルの上に、お盆を置いた。
「お腹空いとんなら、食べや! 食べんと船酔いも治らんわ!」
おばあちゃんは、捲し立てるように言うと、オレに早く食べるように促した。
言われなくても、食べるよ!
オレは「いただきます」と、手を合わせておにぎりをパクついた。
「……美味しい」
「そやろ! これな、お釜で炊いとんのや。それだけで、こないに美味しなるんや。ほら、味噌汁も飲みぃ!」
おばあちゃんは、ちゃきちゃきと話す。
タケさんが話す言葉よりも、ずっと訛りも強いし、早口だ。
事前にタケさんに教えられていないと、怒られているのか、と勘違いしそうになるような口調。
だが、ヘロヘロになっている今のオレには、おばあちゃんの威勢のいい言葉がありがたい。
声に引っ張られて、脳が覚めていくようだ。
「うまっ!」
「そりゃそうや。魚の出汁が、たっぷり出とんやけん」
ニコッと笑ったおばあちゃんは、人好きの顔をしている。
今治の人の笑顔は温かい。
裏表っていうのか、愛想笑いっていうの?
そういうのじゃないっていうのが、伝わる表情を浮かべてくれる。
そりゃあ、最初は。
ううん、今でもよそ者っていう目で見られるよ。
実際、そうだから。
それでも。
タケさんの親戚、っていうのもあるんだろうけど。
こっちが心を開いたら、ドン、と受け止めてくれるような、安心感がある。
だったら、オレも……。
「あのさ……」
「なん?」
オレの食べ終えた食器を片付けていたおばあちゃんは、手を止めた。
「タケさんはさ。オレを……漁師にしたく……ないのかな?」
オレの問いかけに、おばあちゃんは。




