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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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8章 4

 いろんな人の話を聞いたオレは、ますます悩んでいた。


 特に、塁斗に言われたセリフは、心にズンと残っている。


「そうだよな……。東京の方が選択肢が多いのは、当たり前だよな……」

 なのに、なぜかオレは、東京にいる自分をイメージできなくなっていた。

 ついこの間まで、家族三人で暮らしていたところなのに。


 あっちに戻っても、もう三人の暮らしは戻らない。なら、こっちでリスタートを切ってもいいんじゃないか。

 甘えだとしても。


 そんな気持ちになっていた時だった。


 父さんから、連絡が来たのは。



 ※


「陽太、努さんからや」

 携帯を差し出すタケさんに、オレはグッと詰まった。


 こっちに来てから。

 父さんから連絡が来たのは、初めてだった。

 それも。


「なんでタケさん経由なんだよ……」

 オレのつぶやきに、タケさんと千尋は苦笑する。

 笑いに合わせて、オレの緊張も解ける。


「ねね、タケさん」

「なんや?」

「スピーカーで一緒に聞いてくれない?」


 目を丸くしたのは一瞬。

「わかった。ちょっと努さんにも聞くな」

 そう言うと、携帯を耳に当てたタケさんは、父さんと二、三、言葉を交わし、再度、オレに差し出した。


『陽太か?』

 部屋に響く父さんの声。タケさんと千尋は、オレの背中を押すように頷いた。

「……父さん。久しぶり」

『久しぶりだな』


 変わらない父さんの声。だが、どこか嬉しそうに聞こえるのは、オレの思い違いだろう。

 そう思った瞬間、父さんはそのセリフを投げかけた。


『母さんとの、離婚の話し合いが終わったよ』

 と。

 

 

  

 

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