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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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8章 3

「将来の夢?」

 オレは、いつものように塁斗たちと一緒にいた。


 午前中に千尋と、午後からタケさんに話を聞いたオレは、同じ質問を塁斗たちにぶつけた。

 反応はそれぞれだった。


「当たり前やろ、夢は甲子園や! そのために、中学校上がったら野球部に入って。ゆくゆくはスポーツ推薦(すいせん)で強豪校に進学や!」

 というヤツ。

「おれは理学療法士。野球でケガして落ち込んでた時に、リハビリしながらめっちゃ励ましてくれて。その時からの、夢」

 とはにかむヤツ。

 

「おれは決まっていないな。とりあえず、高校に行って、どっかの大学に進学して。……そっから考える」

 そう発言したのは、塁斗だった。

「え? そうなの!?」

 驚いたのは、オレだけじゃない。周りの友達もびっくりしていた。

 塁斗は、オレたちの中で一番しっかりしているんだ。

 当然のように、将来の夢や目標が決まっていると、思うじゃんか。


「塁斗、この間授業で『警察官になる』って言うてたやんか」

「そんなん、テキトーや」

 塁斗の答えに、みんなで顔を見合わせて笑った。


「意外だなぁ。塁斗は将来のこと、ちゃんと考えているんだと思っていた」

「なんでや?」

「え? だって、野球部のキャプテンをしているくらい、しっかりしているから……」

「しっかりしとる、って言うんと、将来の夢がある、っちゅうのは、また違うやろうが」


 呆れたように笑う塁斗は、やっぱりオレたちの中で一番、大人びた顔をしている。


「父ちゃんが『大学くらい出とけ』って、言うてくれとんのや。それなら、甘えとこか、って思ってな」

 呆気にとられたけれど。

「そうか。……そんなのでも、いいのか」

「ええんやないか。少なくともおれは、そう思っとるぞ」


 塁斗は力強く答える。

 ちくしょう。やっぱり野球部の主将を務めているだけあって、やけに説得力のある声だ。


「陽太は、なんで悩んどんのや? 陽太なら東京に住んどるけん、おれたちよりも得やろ?」

「得?」

「そうや。やって、高校も大学も選び放題やないか」


 オレは塁斗のセリフに、再び考え込んでしまったのだ。

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