表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海にいだかれて  作者: 雪本 風香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/76

6章 2ー②

 ※


 塁斗の家に向かって、合流した後。

 連れ立って商店街に向かったオレは、熱気にびっくりした。

 

 田舎だから、祭りといっても大したことない。


 心のどこかでそう考えていたオレの想像を、はるかに超える規模だったからだ。


「えっ!? これ、町中の人間、集まってるんじゃね?」

「まぁ、それは言い過ぎやろうけど。たいがいは()とんやないか?」


 塁斗は人の波をぬいながら、答える。他のメンツとは、この先の広場で待ち合わせしているのだ。

 まだ道がよく分かっていないオレのために、わざわざ一緒に来てくれたのだ、塁斗は。


 どこまでも、人がいい。


 いや、塁斗だけではない。

 いつも遊ぶメンツも、タケさんも。ついでに千尋も。


 ここに住んでいる人間は、どこまでも親切である。


 時に行き過ぎて。よけいなお世話じゃないか、と感じるくらいには、みんな優しい。


 今だって。


「なんでタケさんとこは、籍入れんのやろなぁ」


 みんなでかき氷を食べながら、歩行者天国になっている道を()り歩く。


 祭りのために通行止めになっているのは、今治港(いまばりこう)から市役所までの、広小路(ひろこうじ)と呼ばれている大きな道だ。


 もう少し市役所の向こうに行くと、今治駅(いまばりえき)がある。

 初めてこの町に来た時に通った以来だったが、相変わらず広い道である。


 今治は、道の幅が広く感じる。

 車線は東京の方が多いのに、不思議である。


 多分だけど、東京に比べてビュンビュン走っていないのと、歩道が広いこと。

 路上駐車(ろじょうちゅうしゃ)していても、充分な道幅があるから、そう感じるのだろう。


 それに今は、車が一台も止まっていないから、よりデカく見えているのだ。

 オレたち小学六年生が五人、横並びに歩いていても、充分な広さがある。


 歩きながら、オレはさっきの質問の答えを返す。


「別にいいんじゃね? 今どき、結婚しないカップルって多いだろ?」


 裕福(ゆうふく)な家庭が多い区だから、数は少ないけれど、いるぞ。

 未婚(みこん)の母とか、事実婚(じじつこん)の夫婦とか。

 離婚している夫婦だって、ザラなんだ。

 別に、タケさんと千尋が結婚してようが、してまいが、正直関係ない。

 

 だが、塁斗たちは違った。


「けどなぁ」

「変だよな、ちょっと。一緒に暮らしているのに、結婚していないなんて」

「アレだろ、女のほうが東京にいたからって、エラそうに言っているんだろ? タケさん、いい人だから」

「はぁ!?」


 思わず大きな声を出したオレに、みんながギョッとする。

「なんで、そうなるんだよ!?」

「なんでって……。みんな言うてるし……」

「みんなって、誰だよ!?」


 オレはますますヒートアップする。

「落ち着けって、陽太」


 塁斗が止めに入るが、オレは止められなかった。


「いいじゃんか、人のことなんか! ほっとけよ!」

「うっせーな! なら陽太は知っているんか? ただの居候(いそうろう)のくせに!」


 ()きつけたのは、オレだ。けれど、そう言われて引っ込むほど、オレは大人ではなかった。


「なんだとー!?」

「やるのか!?」


 オレたちが、お互いの胸ぐらをつかもうとした瞬間。


「おい! そこの小学生!」


 巡回している警備(けいび)の人が駆けつけて来た。

 その中には。


「タケさん!?」

「陽太!? 何しとんや!?」


 叱る声と共に、タケさんが現れた。

「この子、タケん()で預かっている子?」

 一緒に来た警備の人が、タケさんに話しかける。


「そうや、秀樹(ひでき)。預かっとる陽太や」

「また問題児を……」

 秀樹と呼ばれた人は、オレを見下ろした。

 その顔は、呆れてはいたが、イヤな感じはしなかった。


「タケ、この子連れて詰所(つめしょ)に先、戻っとき」

「ええんか?」

「ええよ。もうすぐ交代の時間やし」

「ありがとな。恩に着る」

「おう! 山のように感謝しろよ!」


 タケさんに腕を掴まれたオレは、塁斗たちから引き離される。


「お前らも、落ち着いときや。せっかくの年一回しかない、おんまくなんやけん」


 タケさんは塁斗たちにそう声をかえると、オレをずるずると引っ張っていったのだった。


  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ