6章 2ー②
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塁斗の家に向かって、合流した後。
連れ立って商店街に向かったオレは、熱気にびっくりした。
田舎だから、祭りといっても大したことない。
心のどこかでそう考えていたオレの想像を、はるかに超える規模だったからだ。
「えっ!? これ、町中の人間、集まってるんじゃね?」
「まぁ、それは言い過ぎやろうけど。たいがいは来とんやないか?」
塁斗は人の波をぬいながら、答える。他のメンツとは、この先の広場で待ち合わせしているのだ。
まだ道がよく分かっていないオレのために、わざわざ一緒に来てくれたのだ、塁斗は。
どこまでも、人がいい。
いや、塁斗だけではない。
いつも遊ぶメンツも、タケさんも。ついでに千尋も。
ここに住んでいる人間は、どこまでも親切である。
時に行き過ぎて。よけいなお世話じゃないか、と感じるくらいには、みんな優しい。
今だって。
「なんでタケさんとこは、籍入れんのやろなぁ」
みんなでかき氷を食べながら、歩行者天国になっている道を練り歩く。
祭りのために通行止めになっているのは、今治港から市役所までの、広小路と呼ばれている大きな道だ。
もう少し市役所の向こうに行くと、今治駅がある。
初めてこの町に来た時に通った以来だったが、相変わらず広い道である。
今治は、道の幅が広く感じる。
車線は東京の方が多いのに、不思議である。
多分だけど、東京に比べてビュンビュン走っていないのと、歩道が広いこと。
路上駐車していても、充分な道幅があるから、そう感じるのだろう。
それに今は、車が一台も止まっていないから、よりデカく見えているのだ。
オレたち小学六年生が五人、横並びに歩いていても、充分な広さがある。
歩きながら、オレはさっきの質問の答えを返す。
「別にいいんじゃね? 今どき、結婚しないカップルって多いだろ?」
裕福な家庭が多い区だから、数は少ないけれど、いるぞ。
未婚の母とか、事実婚の夫婦とか。
離婚している夫婦だって、ザラなんだ。
別に、タケさんと千尋が結婚してようが、してまいが、正直関係ない。
だが、塁斗たちは違った。
「けどなぁ」
「変だよな、ちょっと。一緒に暮らしているのに、結婚していないなんて」
「アレだろ、女のほうが東京にいたからって、エラそうに言っているんだろ? タケさん、いい人だから」
「はぁ!?」
思わず大きな声を出したオレに、みんながギョッとする。
「なんで、そうなるんだよ!?」
「なんでって……。みんな言うてるし……」
「みんなって、誰だよ!?」
オレはますますヒートアップする。
「落ち着けって、陽太」
塁斗が止めに入るが、オレは止められなかった。
「いいじゃんか、人のことなんか! ほっとけよ!」
「うっせーな! なら陽太は知っているんか? ただの居候のくせに!」
焚きつけたのは、オレだ。けれど、そう言われて引っ込むほど、オレは大人ではなかった。
「なんだとー!?」
「やるのか!?」
オレたちが、お互いの胸ぐらをつかもうとした瞬間。
「おい! そこの小学生!」
巡回している警備の人が駆けつけて来た。
その中には。
「タケさん!?」
「陽太!? 何しとんや!?」
叱る声と共に、タケさんが現れた。
「この子、タケん家で預かっている子?」
一緒に来た警備の人が、タケさんに話しかける。
「そうや、秀樹。預かっとる陽太や」
「また問題児を……」
秀樹と呼ばれた人は、オレを見下ろした。
その顔は、呆れてはいたが、イヤな感じはしなかった。
「タケ、この子連れて詰所に先、戻っとき」
「ええんか?」
「ええよ。もうすぐ交代の時間やし」
「ありがとな。恩に着る」
「おう! 山のように感謝しろよ!」
タケさんに腕を掴まれたオレは、塁斗たちから引き離される。
「お前らも、落ち着いときや。せっかくの年一回しかない、おんまくなんやけん」
タケさんは塁斗たちにそう声をかえると、オレをずるずると引っ張っていったのだった。




