5章 3ー②
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砂浜で大量にスポーツドリンクを飲まされたオレは、行きと同じように助手席に乗り込んだ。
車の中で、タケさんは喋らなかった。
海からの帰り道は同じだ。
今日は息がつまるくらい沈黙が重いのは、オレの中に負い目があるからだろう。
海をなめていた、という負い目が。
「あれ、早いね。どうしたの?」
ガラリと玄関を開けたら、トラを抱っこした千尋がいた。
千尋は基本的に用事がない限り、午後は二階のクーラーの部屋から出てこない。
夕飯の買物にでも行こうとしていたのか、傍らにエコバックが置いてあった。
千尋に話しかけられるのはウザったいのに、今は救いに感じる。
オレが口を開く前に、タケさんはボソリと呟いた。
「溺れた」
「え!? 陽太くんが? それとも……タケちゃんが?」
天然なのか、とぼけているのか。千尋の言葉に、どことなくピリピリしていたタケさんが脱力する。
「なんで俺が溺れるんや」
「だって……タケちゃん、ビショビショだから」
「そりゃあ……陽太助ける時に海に入ったけん」
タケさんが千尋に頭が上がらないのは、この数日で理解しまくっている。
千尋もそれは分かっているのだろう。オレたちがまだ家に上がっていないことをいいことに、ニコリと微笑んだ。
「タケちゃんは家に上がらないで」
「え?」
「そのまま上がると濡れちゃうから。タオルと着替えを取ってくるから、そのまま陽太くんとお風呂屋さん行ってきてね。言い訳は、あとでじっくり聞くから」
「ちょっ……ちひ……!?」
「帰りにお葱も買ってきて。ね、タケちゃん? 陽太くん、自分の着替え用意してくれる?」
矢継ぎ早やに言うと、千尋はタケさんに背を向けた。
パタパタと二階に上がっていく千尋の足音を聞きながら、オレはタケさんに声をかけた。
「ドンマイ、タケさん」
「…………誰のせいや」
ジロッと睨みつけるタケさんは、いつもと違い、全然怖くなかった。




