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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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5章 3ー①

 もう三日も同じ海水浴場に来ているから、知っていた。

 知ったと思い込んでいた。


 塁斗たちが、沖の方に泳いで行く。オレも当然のように着いていく。

 この辺りは遠浅だ。遠く離れたところでも、浅瀬になっている。


 スイミングはしていたけれど、塁斗たちみたいに顔出したままの平泳ぎは来ない。

 普通の平泳ぎやクロールで向かうことは出来るが、そうすると波の抵抗もあって、最後の方はヘトヘトになってしまう。

 だからオレは、いつものように歩きながら塁斗の方に向かって……。


「がはっ!?」

「陽太!?」


 塁斗の声がする。が、オレはそれどころではない。


 急に深くなった海に、足が取られたのだ。

 バタバタと手足を動かして、何とか浮かび上がろうとするが、もがけばもがくほど、体は沈んでいく。


「がっ……はっ! ぐっ……ゲホッ!」


 息をするために顔を出した瞬間、水を飲む。吐き出そうと口を開いたら、また大量の海水が……。


 く、苦しい。


 オレはどうすることも出来ず、そのまま……。


「陽太!!」


 グイッと力強い腕で引き上げられる。そしてそのまま浅瀬に戻された。

「うっ!! ゲホッ……ゲホッゲホッ!!」

「大丈夫か!?」

 タケさんだ。タケさんの声だ。


 何故かその声を聞いた瞬間、目から涙があふれ出る。


「ゲホッ……うっ……ゲホッゲホッ!! タ……ケさ……」

 オレが名前を呼んだ瞬間、分かりやすくホッとしたタケさんは、傍にいた塁斗たちに目を向けた。 

「とりあえず、戻るけん。……塁斗たちも、ビックリさせてすまんかったな」

「こっちこそごめん。タケさんに頼まれたのに、ちゃんと見とらんで」

「いや、監督責任は俺や。お前らは気にせんとき。……陽太、落ち着いたら今日は帰るぞ」

 

 塁斗たちもいつの間にか、浅瀬に戻ってきていた。

 オレを落ち着かせるように肩を軽く叩くと、「またな」と笑う。

「今度は浮き輪つけや」

 塁斗は余計なひと言を発した。

 さっき溺れたばかりのオレは「いらねーよ」とも言えず、別の言葉を吐き捨てる。

 

「…………うるせーよ」

「そんな悪態つけるんなら、もう平気やな」


 タケさんのセリフに、みんなは安心したように笑ったのだった。



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