表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海にいだかれて  作者: 雪本 風香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/76

5章 2

「待たせたな、陽太」


 仕事から戻ってくるなり、オレの頭を撫でたタケさんが連れて行ってくれたのは、やっぱり海だった。


「また海じゃん!」

「連れて来てもろて、文句言うなや」


 呆れたように言うタケさんは、車から降りるように(うなが)してくる。


「他に遊ぶとこないのかよ!?」

「あるやないか、海が。目の前に」

「海しかねーじゃん」

「充分や」


 ちなみに今日で、三日連続である。

 タケさんは仕事でも海に行っているのに、(ひま)さえあれば、海に来るのだ。

 オレまで引き連れて。


「暑いじゃんか!」

「夏やからな。当たり前や」

「家にいればいいじゃん!」

 さっきまで退屈だと、ゴロゴロしていたことは棚に上げる。

 

 タケさんはオレを見ると、不思議そうに(たず)ねた。

「家におって何するん? やることなくて暇を持て余しとったと、聞いとるんやけど」

「何って……」

「もしかしてプールの方がええんか? なら明日は、そっち行こか」

「そういう問題じゃねーし!」


 タケさんが(かたく)なにオレをここに連れて来る理由は、分かっている。

 オレと同年代の子どもが、遊んでいるからだ。

 

 郊外のショッピングモールに行っても、もっと年齢の低い子どもばかりだ。

 昼まで仕事のタケさんが休みの日以外は、遠出は出来ない。


 海に行けば、誰かしら泳いでいる。

 というか推測でしかないが、タケさんが声をかけているのだと思う。

 クーラーボックスがパンパンになるくらい、お茶だのジュースだのつめ込んで、持ってきているのだから。

 

 タケさんは顔が広いから、それくらい朝飯前だろう。

 今だって。タケさんの顔を見た同年代の男子が、駆け寄って来ているのだから。


「陽太、今日も()れたんか、よかったな」

塁斗(るいと)!」

 

 (かん)塁斗は、オレと同じ小学校六年生だ。

 地元の少年野球のチームで、キャプテンを努めているだけあって、面倒見がいい。

 今日も午前中は、野球の練習があったはずだ。その後、昼メシを食ってから、いつものように友達数人と海に来たようだ。

 初めて連れられた時にタケさんに引き合わされてからずっと、オレは塁斗たちの仲間に入れてもらっている。


「陽太! 浮き輪忘れとる!!」

「いらねーって!」


 いつもタケさんに言われるが、浮き輪なんてガキがつけるものだ。

 オレはいつものように断って、波打ち際に走っていく。

 タケさんは、無理強いはしなかった。

 自分用に陽射(ひざ)しよけのテントを設置しながら、タケさんは声を張り上げる。


「塁斗ー! 陽太のこと、頼むけんなー!! 陽太ー!! 遊ぶんはええけど、海やけん気ぃ、抜くなやー!!」

 オレの前を走る塁斗も、手を挙げてタケさんに答えた。

「タケさーん、りょーかーい!!」


 面白くない。

「もう子どもじゃないし。そんなん頼まれなくたって……」

 つい漏らしたグチに、塁斗は苦笑した。

「まぁ、そう言うなよ。タケさんも預かっとる以上、目、離せんのやろう」

 ゆったりとした口調、で塁斗はオレを不満を受け止める。


 ここの人間は、みんなおおらかだ。のんびり、と言いかえてもいい。

 塁斗もまた、そんなタイプだった。

 タケさんはおおらかではあるが、その実すごく心配性だ。

 オレのことを、めちゃくちゃ子ども扱いしてくるし。

 

 ここでは移動手段がないから、仕方なくタケさんと行動している。

 東京だったら、一人でどこでも行けるのに。


「そんな不満気な顔、すんなや。心配される内が花や、ちゅうやん? それより、()よ泳ぎに行こや」

 

 塁斗に手を引っ張られたオレは、しぶしぶだったけれど、不満な気持ちを忘れることにしたのだった。 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ