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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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4章 5ー①

 あれだけ人とメシを食いたくないと、思っていたのに。

 オレは、当たり前のようにタケさんと千尋と一緒にいた。


 最初に一緒に食べたメシが、うまかったこともある。


 カルビに、ハラミは、焼肉屋でも中々出てこない分厚さだ。炊きたてのご飯に乗せて食べると、何杯でもおかわりできた。


 郷土料理といっていた、いぎす豆腐。

 ザラザラしていて、想像していた舌触りじゃないし、なんていうか、独特の風味だ。


「食べ慣れていない人間は、口に合わんことが多いけん。無理すんなや」

 タケさんは忠告してきたけれど。

 初めてで変わった味、と、思うのに、これがまたクセになる。

 

「うん、これはこれで美味しい。……炭酸(たんさん)が飲みたくなる味だね」

 オレの言葉に、タケさんと千尋は顔を見合わせて。

「いっちょ前に、わかっとる口、ききよって」

 と、笑った。

  

 刺身も、分厚くて、弾力(だんりょく)っての?

 歯ごたえがあって、めっちゃうまかった。


「ここいらの魚は、(しお)の影響で、身が()まるんや。陽太も見たやろ、渦潮を」

「へぇー。あれでこんなにプリプリになるんだ」

 タケさんは、嬉しそうに胸を張る。

「そや。わざわざ松山から毎日、買いに来る人も居るくらいや」


 松山といったら、空港があった町だ。そこから今治まで、確か……。

「え!? 一時間くらいかかるじゃん! マジで!?」

「そんな驚くことか?」

「驚くよ! だって近所のスーパーでいいじゃん!」

「東京でも、買いに行くんやろ? ほら、なんと言ったか……。そや、築地市場(つきじしじょう)や」

「普段、行かねえって。そんなところ」


 オレの言葉に、千尋も参戦する。

「確かに。毎日は、足を運ばないかな。東京は車の維持費高いし、移動は基本、電車っていうのもあるけれど。どちらかと言うと、特別な日に買いに行く場所、って感じかな」

 千尋の言葉に、タケさんは拍子抜けしたように呟いた。

「そんなもんなんか」


 今度は、オレと千尋が笑う番だった。 

 

 そんな(なご)やかな時を過ごしたんだ。

 また一緒に食べたいと思うのは、当然だろ?



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