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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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4章 2

「あっきれた!」

 ヘロヘロで帰ってきたオレたちから、話を聞いた千尋は、開口一番そう言った。


「神社行って、ずっとご神木の周り、走っていたなんて! 子どもじゃない!」

「ちゃうわ、願掛けや」

「全力で走って? そんなに叶えたい願いでもあったの?」

「そうや」

 タケさんは、キリリと目を吊り上げる千尋に向かって、会心(かいしん)一撃(いちげき)を放った。


「千尋と陽太の幸せを願ったんや。そりゃ、何度でも走るやろ」

「なっ……」

 絶句した千尋に、タケさんは追撃(ついげき)の一手を放った。

「まぁ、神頼みせんくても。俺の元におる以上、幸せにさせてみせるけどな。千尋も陽太も」

「ちょっ……! タケちゃん!?」


 その時起きた、千尋の表情の変化は面白かった。

 漫画で描写されるかのように、一気に真っ赤になったのだから。

 反対にタケさんの顔は、どんどん真剣になる。


 なんで?

 オレが疑問を持ったのと、タケさんが言い含めるように千尋の頭を撫でたのは、同時だった。

 

「それくらいの甲斐性(かいしょう)はある。やけん、頼りや。まだまだキャパは、空いとるけん」

「〜〜っ! タケちゃんなんか、知らないっ!」


 吐き捨てると、千尋はこの場から逃げ出した。


「なんだ、あれ……」

「千尋もな、色々あるんや」

 オレの呟きに、タケさんのポツリと反応する。

 

「ったく、俺のとこに来る人間は、こんなんばっかや。もっと、肩の力抜いて、ありのまま生きたらええのにな」

「……ありのままってなんだよ」

「ん? 簡単なことや」


 目が合った。

 タケさんは、困ったように笑いながら、オレの頭をぐしゃぐしゃに撫で回す。


「自分の心が感じるまま、素直に生きることや。……まあ、それが出来たらみんな、苦労せんのやろうけどな」


 ホントだよ!

 そう思ったのに、口に出して言わなかったのは。


 笑っているタケさんが、どこかツラそうに見えたからだった。


 ※


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