4章 1ー②
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「おおやま……なんて読むの、これ」
「大山祇神社や」
車を止めて、スタスタと歩くタケさんに遅れないように、小走りでついていったオレは、言葉を失った。
「なに、これ……」
「すごいやろ」
ドヤ顔をするタケさんの横で、オレは首を縦に振った。
境内をくぐったオレの目に飛び込んできたのは、大きな大きな木だったのだ。
「ここのご神木や。樹齢は、どれくらいやったかな」
タケさんは、近づいて案内板を確認すると、オレを手招きする。
「二千六百年やて。ほら、ここに書いとるわ」
オレはそっと近寄っていく。圧倒されるほどデカいご神木に近づくにつれ、不思議なことに体がスーッと軽くなる。
霊感もないし、むしろそういう現象は、嫌悪しているくらいなのに。
「久しぶりに、来たけど。ここにおったら、雑念が無うなって、気持ちが澄んでくるなぁ」
横でタケさんが大きく伸びをした。
「知っとるか」
「何を、だよ?」
「このご神木の周りを三周、願い事を考えながら、息を止めて回ると、叶うらしい」
「知るかよ、初めて来た場所だぞ」
「それもそうか」
オレの言葉にタケさんは笑いながら、尋ねた。
「んで、陽太なら何を願う?」
「え……?」
口元に笑みを浮かべてはいるが、目は真剣そのものだ。
生半可な返事なら納得しないだろう。オレは考えこんだ。
願いなら、一つだけある。
父さんと母さんが、元のように仲良しに戻って、また三人で楽しく暮らすこと。
でも、それはもう望めないことだから。代わりに。
「幸せを……」
「ん?」
「父さんと母さんにこの先、沢山の幸せが訪れますように、かな。だって二人は今まで、オレが居たから無理して夫婦していたんだから」
「……陽太」
「やだな、タケさん。そんな顔しないでよ。……離婚には納得しているんだから」
強がりだ。タケさんにも、それは伝わっているはずだ。
でも、タケさんは「そうか」と頷いた。そして。
「なら俺は、陽太と千尋が幸せになるように願掛けするか」
嬉しい。嬉しいのに。
やっぱりオレはまだまだ、タケさん相手に素直になれない。




