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海にいだかれて  作者: 雪本 風香


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4章 どうやら複雑なのは、オレだけじゃない 1ー①

「せっかく休みにしたんだから、どこかに行ってきたら?」

 朝ごはんを食べた後、千尋の一言で家を追い出されたオレたちは、車で橋を渡っていた。


 よく、テレビでも見るしまなみ海道だ。自転車乗りのメッカだと言われているが、暑いからか歩道にいる人はまばらだ。

 オレは助手席から、海を眺める。


 小さく見える船と、向かいの島、そして。

「あれ、何?」

「ん? どれや?」

「あの渦、巻いているの」

「あぁ、渦潮(うずしお)か」


 タケさんは、聞かれて初めて気付いた様子で頷くと、説明をしてくれる。


「このあたりは、水路が狭い上に、(しお)の流れが急やけん。海流同士がぶつかって渦が出来るんや。鳴門の渦潮に比べると小ぶりやが、流れは速いけん」

「へぇー」

 オレは初めて見る渦潮を眺める。橋の上からでも、見えるくらい大きいけれど、これで小ぶりなのか。

 だとしたら、有名な鳴門の渦潮はどれだけ大きいんだろう。


「大きさは、そりゃあ鳴門には負けるけどな。このあたりは潮の流れを読むんが難しい海なんや。やけん、村上(むらかみ)水軍やったり、河野(こうの)水軍が覇権(はけん)を握れたんや」

「水軍、って、海賊だよね。海賊っていうと、悪いんじゃ……」


 オレの問いに、タケさんはすぐに答えはくれなかった。

「その辺は、自分で知ったらええ。今から行くところに、陽太の求める答えのヒントがあるはずや」

「めんどくさ……。あっ!」

 

 しまった、と思った時には、もう遅い。タケさんの耳にはバッチリ届いていた。

 声を出して笑うタケさんは楽しそうだが、オレは面白くない。


 また黙ると「拗ねとんのか?」と言われるのがオチだが、思いつくワードもない。

 結果、静かになったオレの頭をくしゃりと撫でたタケさんは、目的地に向かってアクセルを踏んだのだった。



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