表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海にいだかれて  作者: 雪本 風香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

2章 3

「バニラとチョコと抹茶、どれがええ?」

「……なんでも」

 オレの返事に、タケさんは顔をしかめた。

「なんでも、が一番あかん。俺は()()()()()()()()、って聞いとるんや」


 答えに詰まる。そんなの、どうでもいいことじゃないか。

 タケさんが選んだらいい。

 勝手に選ばれた、って文句言うつもりもない。

 なのに。


「陽太、(なん)の味がええん?」

 圧を込めた口調でもう一度聞かれると、答えないわけにはいかない。

 

「……チョコでお願いします」

「わかった。チョコやな」

 タケさんは、笑顔になる。フッと空気が緩んで、オレは息を吐いた。


「子どもが遠慮すんなや。ここにおる間は、自分()のように寛いだらええ。敬語もいらん」

 オレにカップのアイスを差し出しながら、タケさんも自分用に、ちゃっかりとアイスを持ってきている。

 

「これまで会ったこと無かった、というても親戚やしな。客やないから、やることはやってもらうけど、変な気は遣わんでもええ」

「それは、義務を果たしたら後は自由ってこと?」

「そうや」

「部屋に閉じこもっていても?」

「陽太がそうしたいんなら、ええんやないか? そこまで強制できんし、するつもりもない。四六時中、お()りせんとあかん年齢でもないやろ? 俺やって仕事も地域の集まりもあるけんな。そこそこ忙しいんや」


 変な大人だ。でも、客扱いされない方が気は楽だ。

 初対面の親戚の前で、ニコニコ愛想笑い浮かべるよりも、ほっとかれる方がまだマシだ。

 三口ほどでアイスを食べ終わったタケさんは、ちらりと時計を確認した。

 

「食い終わったら、二階行こか。そろそろ千尋(ちひろ)も、仕事が一段落(いちだんらく)ついた頃やろ」

「……誰だよ、千尋って」


 オレの言葉に、飛び上がるほど驚いたタケさんは、「聞いてないんか?」と、聞いてくる。


「うん。ちひろって一緒に住んでいる人?」

「ああ、そうや。俺らの……、俺と努さんにとってはハトコになんやけど……」

「ふうん」


 タケさんが言葉を(にご)した気がするが、それどころではなかった。

 急いでアイスを食べないといけない。

 話の最中、だいぶ柔らかくなったアイスが液体になるのも、時間の問題だ。

 それに、当たり前のように思っていた。


 ()()()と聞いたオレは、その人間が男だと。


 だって、プロ野球選手にいるじゃないか!

 ちひろって名前の男が。


 だから、アイスを食べ終わって、タケさんのいう、ちひろに会った時。


 オレの張りつめていた気持ちが、爆発したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ