2章 3
「バニラとチョコと抹茶、どれがええ?」
「……なんでも」
オレの返事に、タケさんは顔をしかめた。
「なんでも、が一番あかん。俺は陽太に何がええか、って聞いとるんや」
答えに詰まる。そんなの、どうでもいいことじゃないか。
タケさんが選んだらいい。
勝手に選ばれた、って文句言うつもりもない。
なのに。
「陽太、何の味がええん?」
圧を込めた口調でもう一度聞かれると、答えないわけにはいかない。
「……チョコでお願いします」
「わかった。チョコやな」
タケさんは、笑顔になる。フッと空気が緩んで、オレは息を吐いた。
「子どもが遠慮すんなや。ここにおる間は、自分家のように寛いだらええ。敬語もいらん」
オレにカップのアイスを差し出しながら、タケさんも自分用に、ちゃっかりとアイスを持ってきている。
「これまで会ったこと無かった、というても親戚やしな。客やないから、やることはやってもらうけど、変な気は遣わんでもええ」
「それは、義務を果たしたら後は自由ってこと?」
「そうや」
「部屋に閉じこもっていても?」
「陽太がそうしたいんなら、ええんやないか? そこまで強制できんし、するつもりもない。四六時中、お守りせんとあかん年齢でもないやろ? 俺やって仕事も地域の集まりもあるけんな。そこそこ忙しいんや」
変な大人だ。でも、客扱いされない方が気は楽だ。
初対面の親戚の前で、ニコニコ愛想笑い浮かべるよりも、ほっとかれる方がまだマシだ。
三口ほどでアイスを食べ終わったタケさんは、ちらりと時計を確認した。
「食い終わったら、二階行こか。そろそろ千尋も、仕事が一段落ついた頃やろ」
「……誰だよ、千尋って」
オレの言葉に、飛び上がるほど驚いたタケさんは、「聞いてないんか?」と、聞いてくる。
「うん。ちひろって一緒に住んでいる人?」
「ああ、そうや。俺らの……、俺と努さんにとってはハトコになんやけど……」
「ふうん」
タケさんが言葉を濁した気がするが、それどころではなかった。
急いでアイスを食べないといけない。
話の最中、だいぶ柔らかくなったアイスが液体になるのも、時間の問題だ。
それに、当たり前のように思っていた。
ちひろと聞いたオレは、その人間が男だと。
だって、プロ野球選手にいるじゃないか!
ちひろって名前の男が。
だから、アイスを食べ終わって、タケさんのいう、ちひろに会った時。
オレの張りつめていた気持ちが、爆発したのだった。




