第38話 発見
イカイケメンは和夜と騎士の戦い、と言うより、和夜が騎士に一方的に攻撃し肉体的にも精神的にも傷つけている様を傍観することをとても喜んでいた。
「いや~、和夜ちゃんの体からでも見れるけど、カメラを置いてパソコンで見れるようにして正解だったな。こっちの方が私のお陰で更に強くなった和夜ちゃんのことも見れるし・・・ふふふ」
とても楽しんでいた。背後に忍び寄る人物にも気づかずに。
「やっぱり、ここに居たか」
イカイケメンは背後にいる人物に声を掛けられるまで全く気付かなかった。どうせ突き止められないだろうと思っていたのだ。振り返って少し驚いた表情を見せる。
「もしかしてと思って来てみたら当たりだな。こんな近くに居るなんて灯台下暗しだ」
「・・・よく見つけられたね」
「最初はお前の居場所の手掛かりが一斉ないから見たことあるって奴の目撃情報を頼りに実際に見に行ったり、俺達と同じように悪い奴を倒してるみたいだから悪い奴が居る建物に行ったりって片っ端からやってたけどな」
「どうして、ここに居るって分かったんだい?」
「お前からの手紙を読み返してみたんだよ。そこにヒントがあったな」
「おかしいな。居場所の手掛かりなんて残してないけど」
「あったんだよ。2つもな」
伸郎は手紙を片手で上から持ちイカイケメンの前に見せた。
「娘の所へ行くか、お前の所へ行くかどちらを選ぶか問う、この文章はお前の所へ行った方が娘のことを止める手掛かりがあるということを意味している」
「ふふふ、そうだね」
伸郎はイカイケメンの笑い方にイラっとしたが推理を続けた。若干、探偵がかっている。
「だから、俺はお前の居そうな所をひたすら探すしかなかったんだが、1度冷静になって考えたんだよ。そして、読み返した。選ばせといて選ばせない、この選択。つまり、和夜の所へは行って欲しくない。もしかしたら近くにお前も居るんじゃないのかってな」
「へぇー、結構、頭がキレるんだね。意外だったよ。ふふふ」
伸郎はイカイケメンの発言にまたイラっとする。
「それで、最後の1つは?」
「裏にあった」
イカイケメンは目を見開いて読んだ。怒っているのか、悲しいのかよく分からない表情だった。
「あの子・・・いつの間にメッセージ残してたんだ・・・私を倒さないと自分は止められないって・・・」
「それはお前の文を読んだ後に直ぐ気付いた。ヒントはその下だ」
イカイケメンは目を軽く凝らして読む。和夜は後半は力があまり出ず、文字が薄くなってしまっていた。目が疲れた状態かつ暗い場所で読んでしまった伸郎は初見では気付かなかったので後で読み返して良かった、と本当に思った。
「これは俺もよく見てなかったからな。上の方に気を取られて」
和夜のメッセージの下の部分にはこのように書かれていた。
窓×
〇〇スーパー近く
イカあり
伸郎は両手で手紙を持ち読み上げた。
「一瞬、訳が分からなかったが手紙を書いた時の自分が居た場所のヒント、またはお前の居る場所の答えだと思ってよ。窓のない、〇〇スーパーが近い部屋に居ると伝えたいんだと分かった」
「ふーん。その2つを満たす、和夜ちゃんの近くを片っ端から探したのかい?」
「いや、そんなことをしなくても、この場所は見つけられた。ここら一帯に窓のない部屋がある建物はない。だから、地下に居ると予想した」
えっ、そうなの?とイカイケメンは思ったが気にせず聞いた。
「それに、この〇〇スーパーは俺達、怪化薬打倒委員会の建物の近くにあるスーパーなんだ。別の地域に同じ名前のスーパーはない」
「・・・和夜ちゃんと一緒に居るのが嬉し過ぎて、うっかり口を滑らせてしまったな・・・でも、よく地下に入る出入り口を見つけたね」
「ああ、面倒だから瓦割りの要領で地面を叩き割って見つけようと思ったが、他の人に迷惑になるんでな」
「ふふふ」
「その笑い方、腹立つんだよなぁ」
イカイケメンの笑い方にまたイラっとする伸郎であった。
「前に地面に変な蓋みたいなのを見つけたことがあるのを思い出してよ。しかも、道場の近くにある小さな山でな」
「こんな何にもない、誰も入ることはないような山の中にある出入り口なのに・・・見つけてたんだ」
「ああ、腹が痛いのが役に立つこともあるんだな・・・」
イカイケメンは伸郎の言っていることがよく分からなかった。
「あの時、腹が痛くてよ。トイレに急いでいたんだが近くに入れる所がなかった。探している内に仕事場まで持たなくなってよ。誰も居ない山で用を足させて貰った」
「う、嘘・・・でしょ・・・」
「俺だってしたくてした訳じゃねぇよ・・・」
イカイケメンはドン引きした顔をしていた。
「そこで用を足して山を出ようとした時に変な蓋があったのを思い出した。まぁ、ちゃんとトイレに行きたかったから、あの時は無視して立ち去ったけどよ」
「・・・そっか。それで・・・ここまで来たんだね・・・私の所まで」
「ああ・・・」
そして、シリアスな雰囲気に戻る。
「何で娘にこんなことをした?お前を倒す前に聞いておかないとな」
「何でって、守るためですよ。まぁ、伸郎くんは気付いていないだろうけど、同じ幹部の下3人達に色々と言われてたんだよ?ネットでも悪いコメントばかり」
「そう・・・みたいだな・・・」
「でも、安心して下さい。これからは私と和夜ちゃんが一緒にヒーローをするので。勿論、今までみたいに酷い状況から耐えなくても良いようにね。今日だって失礼な部下に自分の立場を分からせたり、良い評判を全てかっさらう同僚へ手合わせしたり・・・自分の強さを見せつけるように発揮してますよ」
「そうさせるように、お前が洗脳したんだろ?」
「うーん。騎士くんもそんな風なことを言っていたよ。家族なのに、私より長い時間を共にしていたはずなのに分からないのかい?まぁ、自分の娘が嫌味を言われてるのに気づかない位の鈍感みたいだから、しょうがないか」
伸郎は青筋を立てるが落ち着いて答える。
「和夜は自分がされて嫌なことはしない子なんでな」
「そうだね。とても優しい子だ。だから、言い返したい、やり返したいはずなのに耐えて心の奥底では追い詰められてた・・・でも、もう我慢させる必要はない。安心して下さい。お父さんの代わりに私と和夜ちゃんはヒーローをやりながら、酷いことをした人達、全員に分からせるつもりですので・・・自分の強さを思い知らせるように」
「和夜がそうしたいって自分の口から言ったのか?」
「言いましたとも」
「何かしたんだろ?」
「本当の気持ちを知りたかったので、それを引き出させただけです。怒りを抑えなくても良いように・・・勇気を出させたみたいな感じですよ」
「・・・憎しみが増えて自分に酷いことをした奴等に仕返しして動くように洗脳したんじゃないのか?」
「洗脳だなんて・・・騎士くんには操ってるとか言われたけど、お父さんも酷いな~」
「その呼び方、止めろ」
「じゃあ、伸郎くんのままにするよ」
イカ天は変わらず余裕の笑顔に対し、伸郎はイライラが募っているのが伝わる。
「和夜を止めることは出来ないのか?」
「それは出来ない。言っただろ?私は和夜ちゃんが思っていること、望んでいることを叶えてあげたんだ。今更、復讐は止めろなんて可哀そうなことは出来ないよ。そもそも、そんな方法はないしね」
「止めさせて貰う」
「どうしてだい?伸郎くんの娘を、和夜ちゃんを守っているだけなのに」
「俺だってそうだ。守るために止める。残念だが、お前を殺すことに変わりはないな。これ以上、お前と話をしていると気が狂いそうだ」
「和夜ちゃんを見れないのは少し残念だけど、邪魔されたら困るからね。私が見守ってなくても和夜ちゃんは大丈夫そうだし・・・相手してあげるよ」
イカイケメンは楽しそうな笑顔、伸郎は睨みまっくている。
伸郎はイカイケメンに向かって拳を振りかざそうとするが触手でガードされる。ガードに使った触手は傷つくが触手は他にもあるので回復するまでの間は別の触手で対応する。触手が何本も伸郎へ飛んで来るので、伸郎は片手で簡単に払いながら近づこうとする。払っただけでも触手は傷つくが新しい触手の再生や傷ついた触手の回復を繰り返す。
「騎士くんは怪力が素晴らしいけど、伸郎くんも負けてないね」
伸郎はイカイケメンに近づこうとするが、なかなか近づけない。
「ちなみにこれは知っていたのかい?和夜ちゃんは伸郎くんの娘にふさわしくないと裏で言われたり、ネットに書かれたりとかもしてたんだよ?家族なのに酷いよね~」
伸郎は知らない話をまた知り、改めてショックを受ける。
「その様子だと知らなかったんだね~」
ショックを受けつつもイカイケメンにまたイラついた伸郎は触手を掴み引っ張っるが、引っ張った触手は切られて駄目だった。
「触手舞」
今度は触手が一気に伸郎へ襲い掛かる。それは、まるで和夜の両手両足を掴む前のようだ。だが、伸郎に当たった感触はなかったので、イカイケメンは異変に思う。気付いた頃にはイカイケメンの目の前に来ており、触手ではなく体へパンチを食らっていた。イカイケメンの体は地下から地上へ飛んで行く。伸郎の動きは瞬きよりも移動や攻撃スピードは早いかもしれない。
「腹立って、つい強くやり過ぎてしまった」
空いた穴から伸郎がヒョイとジャンプして出て来た。イカイケメンはあばら辺りを片手で押さえ膝を付く。もう片方の手を地面に置き、下を向いて血を吐いた。
「な、なぜ」
「なぜって、単純にお前のイカの足より俺の足の方が速いから、お前の目の前に行っただけだ」
「・・・確かに私よりは早いかもな・・・でも、残念だね。私は直ぐに回復することが出来るんだよ・・・君達と違って」
触手と同じようにイカイケメンの体も回復するのである。だが、イカイケメンはまた違和感を感じた。回復が遅いのだ。いつもはとっくに回復しているはずなのに全然、進まない。
「待つ気はないぞ」
伸郎は1発、イカイケメンに蹴りをいれる。避けれなかったイカイケメンは勢いよく遠くまで地面の上で転がる。遅い、なぜだ?、回復が圧倒的に遅い、とイカイケメンは思った。イカイケメンの体は直ぐに回復してもおかしくはないのに今は明らかに遅かった。
「回復が遅くて焦っているのか?俺の攻撃だと回復が効かないのかもな」
イカイケメンが伸郎の方を見る。
「ひっ・・・」
伸郎の恐ろしい表情に、これが恐怖なのか、初めて自分が死を覚悟した。いや、ありえない、私は死なない体のはず、とイカイケメンは思う。一旦、距離を取ろうと触手を使って飛んで後ろへ下がるが、伸郎と距離は取れなかった。触手ガードが間に合わずに連続パンチを今度は食らい最後に柔道技をかけられそうになったところで何とか逃げ切り、伸郎と距離を取る。
「何だ、必死じゃないか。さっきまで余裕そうだったのに」
「なっ・・・私の体は不死身なはず・・・」
イカイケメンは動揺していた。伸郎に勝てない、死ぬ、殺される、これ以上やられたら回復は出来ない、という謎の確信があった。それでも口角を上げて言う。
「私を殺せば・・・娘も死ぬんですよ?」
「お前がどうこう言うことじゃない」
イカイケメンは逃げよう、ここで死んだらまずい、今は逃げなければ、と思った。それを伸郎は感じ取る。
「娘を殺した男だ。どれくらい強いか覚悟はしてたが、なんだ・・・逃げるばかりで大したことないな」
逃がしてたまるかとイカイケメンを掴もうとしたが伸郎は出来なかった。思わぬ邪魔が入ったからだ。おでこに何かゴツンと当たった。




