第34話 伝達
騎士は和夜が帰って来た日の夜から起きることはなく眠り続けたままだった。スマホが鳴り響く音が聞こえ目が覚める。手に取ったスマホの画面を見て驚いた。時刻は昼。朝の目覚まし時計に気付かなかったのだろうか。いつも和夜のために早起きして朝ご飯を作るので昼まで寝るのは珍しいことだった。ちなみに和夜は騎士に感謝しているが、申し訳ないので朝ご飯の用意は望んでいない。騎士は好きでやっている。もう趣味みたいなものだ。この小説を書いている私も彼の熱意には驚くことばかりである。
スマホには1件の不在着信があり、騎士は掛け直す。
「騎士です」
「騎士くん!すまんが、今すぐ来てくれないかの!?道場に和夜くんが居るんじゃが様子がおかしいんじゃ」
不在着信の正体は不死長老だった。
「道場?何で和夜ちゃんが・・・怪我でもしましたか!?」
「いや、和夜くんは怪我していない。和夜くんと手合わせした幹部や戦闘員は怪我してるが・・・」
「直ぐに行きます」
騎士は急いで準備し向かった。
イカイケメンが居ると思われる場所へ片っ端から伸郎は行っていた。連れ去られた和夜の体を返して貰うため、和夜の代わりに仇を打つためにだ。イカイケメンは神出鬼没なためネット等を漁り、見たことある人の情報を集めては実際に確認して回った。そこは電波の届かない場所も多く、和夜が生きて帰って来た昨日から不死長老が伸郎へ電話を掛けても繋がることはなかった。伸郎はまだ一斉、知らないのだ。
ギリギリ電波の届く場所に伸郎は来た。そこで、スマホが震えているのに気づく。
「伸郎くん!やっと出てくれた!」
「悪い。長い間、圏外になっていた」
「すまないが、今すぐ戻って来れるかの?」
「何かあったのか?」
「実は昨日、和夜くんが帰って来たんじゃ。無傷で何食わぬ顔で」
「それは本当か!?」
「ああ、わしも最初は信じられなかったが会議室に入って来ての。偽者ではないはずじゃ。和夜くん、本人のはずなんじゃ・・・ただ今は様子が可笑しいんじゃ。騎士くんにも連絡して道場に来て欲しいと連絡している」
「様子がおかしい?和夜が道場なんて珍しいな」
「強くんやリゼくん、キンバくん達と手合わせをしているんじゃ」
「はぁ?手合わせ?」
「そうじゃ。誰も和夜くんに歯が立たないのによっぽど負けを認めたくないのか。無理して戦ってボロボロじゃ。和夜くんは大怪我はさせないようにちゃんと配慮して加減はしておるから別に暴れている訳じゃない。そこは勘違いしないで欲しい」
「えっ、そう、そうだよな。和夜さんなら当然だ!ちゃんと加減もしてるんだな~」
コイツ、和夜が負ける想像でもしたのだろう。
「だがな・・・いつもと違うんじゃ。何か雰囲気がいつもと違う・・・伸郎くんにはわざわざ言わなくて良いと言われていたことなんだが・・・和夜くん、3人を中心に酷いことを言われてての。ネットを見れば分かるが、和夜くんを批判する者も多い。いや、ほとんどじゃな・・・我慢して耐えていたのが爆発した感じがするんじゃ。今まで強く言い返すこともなかったし」
「そうか・・・そうだったのか」
「和夜くんには申し訳ない思いをさせていた・・・騎士くんがこちらに向かってはいるが伸郎くんも来・・・」
急に会話が途切れた。伸郎がスマホを見ると圏外だった。通信が届きずらい不安定な所で電話をしていたからしょうがない。伸郎の頭に何か飛んで来て当たる。地面に落ちた物を見ると封筒だった。周りを見渡すが誰も居なければ、誰かが居る気配もない。「伸郎くんへ」と書かれた封筒の差出人は「和夜ちゃんを連れ去った男より」とある。中に入っている手紙の表には下記のように記載がされていた。
和夜ちゃんの所へ君が行っても何も解決はしない
私の元へ来ないと和夜ちゃんを止めることも前の状態に戻すことも出来ないよ
解決しないが娘に会うか、解決するために私に会うか、どちらを選ぶ?
娘を自分の手で殺す真似をしたければ娘の所へ行けば良い
手紙の全て読んだ伸郎は強く握りしめる。電波の届く場所に移動してから、イカイケメンを探すことを続行した。




