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第29話 力比べ

 幹部や戦闘員は指示された場所へ行っては敵を倒しを繰り返していた。しかし、黒幕の手掛かりを持った者はおらず見つからない。

「な・・・何だよ、コイツ」

伸郎は目の前の光景が夢かと思った。今までは人間離れした強さを持った敵でも人の形はしていたのに目の前の敵はどう見ても恐竜や怪獣、怪物の一種にしか見えなかったのだ。

「うきゃああああああ」

しかも、ずっと変な鳴き声をあげていて暴れている。機嫌が悪いのだろう。伸郎は任務で洞窟に行くように言われたが、まさかこんなのが居るとは聞いていない。

「どうやって戦えって言うんだよ・・・」

恐竜が暴れているせいで上から瓦礫が落ちてくるが伸郎は余裕で避ける。避けながら伸郎は目の前の敵をどう倒すか考えていた。

「まぁ、生き物だし急所はあるはずだ、とりあえずはやってみるか」

伸郎は走りジャンプした。顎と思われる部分にパンチをする。恐竜がバランスを崩したところをチャンスだと思い、片っ端から全身にパンチやキックを繰り出す。

「案外、やってみるもんだな」

敵は倒した。伸郎にとっては全然、敵ではなかったのだ。そもそも、顎を狙ったパンチで勝負はついていた。

「そう言えば、必殺技・・・どうすっかな~」

帰りながら伸郎は考えていた。


 少し前から伸郎は考えていることがあった。それは、必殺技である。不死長老の家にある庭が見える部屋でお茶を一緒に飲みながら休憩している時のことである。

「伸郎くん。さっきから考え事をしているようじゃが・・・どうしたんだい?」

「ああ~、いや、大したことじゃないんだ。そう言えば、俺に必殺技とかオリジナルの名前がないなと思って」

「確かに、伸郎くんは柔道とかの技や経験を生かして戦っておるからの~。素晴らしい技があり過ぎる。人間は常に100%の力を発揮することは難しく、出せても骨や筋肉が壊れてしまうとされているが伸郎くんは壊れることなく、それが出来る。だから、ただの殴りや蹴りでも素晴らしい」

「そうだな。まぁ、100%は出さずにある程度は加減して戦っていることが多いけどな。主人公なのに早く決着がつくと出番がないしな」

笑って伸郎は答えた。また天狗になっている。

「実は、この前、和夜さんに『パパは必殺技とかあるの?』って聞かれて、せっかくだから作ろうと」

「面白そうで良いのぉ」

「格好良いのが良いな~」

2人の会話を聞いている人物が居た。

「そんな物なくても、お前は十分に強いだろ・・・っていうか、必殺技を使うほどの相手に会ったことあるのか?」

マンである。

「ああ~・・・」

伸郎は委員会の初任務で絆慈と戦った時のことを思い出す。

「そうだな・・・1番、手ごたえのあった奴でも、必殺技を繰り出す程じゃないかもな。一瞬でけりを付ける分には良いか?」

「お前はいつも秒で決着をつけていないか?」

「そうだな。なくてもいけるな」

「そんな物を考える暇があったら、早く黒幕を見つけろ」

「分ーってるよ!」

マンの言い方に伸郎はイラつく。まだ仕事があったのでお茶を一気に飲み干し部屋を出た。

「別に必殺技のない主人公も悪くはなさそうだけどな・・・そんな物なくても強いってことでもあるし・・・」

マンがボソッと独り言を呟いた。


 伸郎が恐竜のような敵を倒している頃、和夜と騎士は任務の帰りで人が住んでいない建物だらけの道を通っていた。人が居ない割にお洒落な建物が多いのだが少し気味が悪い雰囲気が漂う。

「和夜ちゃん、どっかで休憩しなくて大丈夫?運転して任務して運転して」

「確かに、少し目を休ませようかな」

騎士は和夜が疲れていないか心配し声を掛けた。和夜は車を止め座席を倒したら腕を枕にして休む。騎士も休むふりをしつつも和夜をこっそり見つめていた。そこに足音が聞こえた。

「あの男の言った通り・・・怪力イケメンの騎士じゃねぇか」

怪しい男が近づくのに騎士は一早く気付き車を降りた。

「俺も力に自信があってよ。力比べしないか?」

そう言うと男の服は両腕の部分だけビリっと破け、両腕の筋肉が一回り二回りとどんどん大きくなる。その音に和夜は目が覚め外を見た。

「怪化薬を飲んだのか?」

「よく分かったな。そいつを飲む前から力に自信はあったが怪化薬を飲んでから誰にも負けねぇのを実感してるぜ。この腕で力比べをしただけで相手の全身の骨が砕けて死ぬんだからな。俺の力で簡単に人の骨を砕いて殺す。楽しくて止められないぜ」

「どこで手に入れたか吐いて貰おうか?」

「そんなの知らねぇよ。気付いたら家にあって飲んだからな」

騎士を心配し和夜は急いで車を出た。

「騎士くん!」

「和夜ちゃん。俺は大丈夫だから」

腕の筋肉が異様に発達した男は騎士と両手を合わせる。

「女の前で格好つけて大丈夫か?」

「余計なお世話だよ」

そう言った騎士は手に少し力を込める。伸郎に負けない位に騎士も余裕のよっちゃんである。腕の筋肉が異様に発達した男は悲鳴をあげる。

「おおー!?あれは!?騎士くんの怪力による『怪力潰し!』」

和夜が何となく騎士の解説を始める

「それを食らった者はどんな怪力を名乗る者でも赤子同然!そう!激熱だー!誰も騎士くんには敵わない!」

意外にノリノリである。簡単に男の腕の筋肉は破裂した。体が耐えられなかったようだ。その様子を見た和夜は一瞬だけ怪力過ぎる騎士にひく。が、

「ス、スゲー・・・」

と、言う。ちょっと羨ましそうに目を輝かせ騎士を見ていた。

「そんなことないよ」

騎士は和夜に褒められ、少し顔を赤らめつつも嬉しそうに照れていた。

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