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第28話 カーチェイス

 任務の帰り道、和夜は車に騎士を乗せて人が居ない山道を運転していた。後ろから1台の大きな車が猛スピードで来た。和夜の運転スピードは遅めなため、後ろの車は右車線に変更して追い越してくれると思った。しかし、実際は右車線に来て隣にまで来たところをぶつかってきたのだ。それにより、運転席側の窓は割れた。

「わあ!ちょっと!危ないでしょ!この車、借り物で高級なんだから!」

「和夜ちゃん、今はそこじゃない」

和夜はブレーキを踏み車を止めた。幸い、和夜はガラスの破片で軽い切り傷が出来ただけで大きな怪我はなかった。和夜は騎士に怪我がないことを安心した。が、騎士は和夜に怪我させた原因である車を睨んでいた。和夜は騎士の表情を見て安心から不安に一気に変わる。ぶつかった車は止まることなく逃げて行った。


 和夜は不死長老へ謝る。不死長老は怒ることはなく

「和夜くんは悪くない。悪いのはぶつかって来た車じゃ。カメラも見たが完全に向こうが悪い。2人の命が無事で良かった」

「そう言って頂き、ありがとうございます」

「和夜ちゃんに怪我させた奴、許さない」

和夜は騎士に少しビビるが、不死長老は騎士くんは本当に和夜くんが大事なんだな、と呑気に微笑ましく思っていた。

「和夜くん、修理までの間じゃが、バイクでも乗ってみるかい?」

「良いんですか!?こういう時のために免許を早く取っておいて良かったです」

「そうじゃの。免許を取ってから必要な年数も経ってるから、後ろに騎士くんも乗れるだろう。ヘルメットとか必要なのも揃っておる」

「あっ!そうか、2人乗りになるんだった」

不死長老はもしかして騎士くんの存在を忘れてたのかな、と心配になった。

「楽しみだなぁ」

騎士は和夜との2人乗りを楽しみにしていたので良かった。和夜のような力のない人間がバイクで後ろに体の大きい怪力男を乗せるなんて現実味がないと思う方もいらっしゃるかもしれません。が、漫画世界なため何とかなるのです。

「ブーン!ピー!パラリラパラリラ~」

「なぜ?」


 不死長老に借りたバイクを確認している和夜と騎士の元へ黒葉と四葉が来た。和夜が軽い怪我をしたと聞いて心配し駆けつけたのだ。

「和夜ー!」

「おお、黒葉ちゃ・・・ぐへぇ!」

和夜のこの声で分かるだろうが、黒葉が和夜に抱きついたのである。そして、騎士は和夜を持って引き剥がす。そして、騎士と黒葉に稲妻が走る。

「相変わらずねぇ」

その光景を見た四葉が呆れたように言う。が、本当はこの面白い光景を楽しんでいる。和夜は四葉の方に顔を向ける。実は目線だけ四葉の胸に行っていた。四葉ちゃん、いつ見ても大きいなぁ、羨ましいなぁ、というか1回だけ転んだふりして胸に飛び込んでも良いかなぁ、ビンタ覚悟で突っ込んでみたいなぁ、流石にバレるか、と和夜は良からぬことを考えていた。鼻の下が伸びそうになっていた。

「和夜、ボーっとしてどうしたの?」

黒葉がどこか1点を見つめる和夜を心配し声を掛けた。

「ん?いや、何でもないよ!あははははは!」

和夜は焦って誤魔化した。鼻の下が伸びる前で良かった。この和夜の良からぬ夢はいつか叶うかもしれない。


 バイクで任務に行った日、敵を数人倒し残すは後1人という状況になった。和夜は構えていた。

「君は相手から攻撃をされないと奥義を使えない。しかも、君自身の体はただの一般人。いや~、それ以下かな?その奥義しか使えない君には何もしなければ良いね」

「うっ」

和夜は自分の唯一の戦い方である奥義が使えなかった。痛いところを突かれ和夜はぐうの音も出なかった。

「男の方は強いけど、心を読まれて動きが全部交わされれば強くても意味はない・・・それに楽しいんだよ。人の心を読むのが、それをバラすのが・・・2人の考えていることが分かるよ。それはお互いがお互いをどう思っているかとね。君達2人、面白いね~、特に」

自称テレパシー男が何かを言いかけた瞬間に騎士が顎をパンチし1発KOした。厄介になる前に倒せて良かったと騎士は安堵する。

「避けれなかった!?」

「読まれるより先に体が動いちゃった」

「そっか、助かった・・・いや、何でもありだなぁ、君は」

和夜は騎士に顔を見せないように先に歩く。2人はヘルメットを着用しバイクに乗った。


 伸郎は任務の帰りに車を走らせていた。林の中の道路だが整備されており、任務も完了していたので爽快な気分で帰宅していた。すると、前に見覚えのあるバイクがあった。対向車が来ないことを確認し右に寄る。チラッと覗くとヘルメットを被った和夜と騎士が乗っていた。2人も伸郎に気付く。和夜は片手を振った。伸郎は

「先に行ってるぜ」

と言って手を振り返し、先に向かった。2人は伸郎のバックミラーから見えなくなる。だが、数分後、バックミラーにバイクが映った。和夜が調子に乗って飛ばしているのかと思ったが違った。バイクの後ろに車が2台おり追いかけられているのである。


 後ろから2人を追いかける車の1台は前に運転席側にぶつかって逃げた車だった。バイクのバックミラーで騎士が気付いたのである。

「バイクでぶつけられたら困るなぁ・・・」

和夜は軽く飛ばした。しかし、後ろから銃声が聞こえた。

「えええ!?なんで~!?」

「どこかで曲がって逃げれれば良いんだけど、この先ずっと曲がれる場所が・・・」

騎士は不死長老から念のために渡されていた銃を後ろに狙って撃つ。それに加勢するように和夜も片手を使って撃つ。タイヤに当たるが、かなり丈夫なタイヤにしているのか効果がなかった。逃げていたら伸郎の所まで追いついてしまった。伸郎は異変に気付き、あるボタンを押す。これは何かあった時のために不死長老が付けた機能である。

「おい、何か追いかけられてないか!?」

「銃も撃って来る。やべー、やべー」

「前にぶつかって来た奴です。こちらも銃を撃ち返しましたが、タイヤに当たっても効果はありません」

2人のヘルメット部分に伸郎の音声が伝わる。

「俺が一瞬だけ盾になるから俺の前まで飛ばせ」

「ラジャー」

「ありがとうございます」

和夜は伸郎の車の前まで飛ばした。

「俺は後から行くから逃げろ」

「ありがとう!」

「お気を付けて!」

伸郎の車に銃が何発か撃たれた。伸郎はまたボタンを押す。本来ならば、このように困った時のため、敵のタイヤをパンクさせる物を大量に出せるはずだった。

「なんだこれー!?」

伸郎の車は高速球で走り出した。システムが運悪く故障しトラップが出ず、代わりにスピードが勝手に出るのであった。そのため2人を乗せたバイクも追い越した。

「えええ!?何したの!?」

「大丈夫ですか!?」

伸郎は急いでボタンを押し、車を止めた。そして、一か八かの作戦を考えた。

「俺は敵に向かって車を走らせる。車をぶつけにな」

「パパが危ないでしょ」

「直前で車から降りる。だから・・・何とかなる!」

「なるか!ならねぇよ!」

「お父さん、お気を付けて」

「お父さんじゃねぇ!」

伸郎はギア操作やクラッチ操作を行い、勢いよく走り出した。バイクとまたすれ違った。

「え!?バックで走ってるの!?」

「Uターンする時間も惜しいからな」

2台の車が見えたところで伸郎はシートベルト等の準備を始め、ギリギリを狙い車から飛び降りる。受け身も完璧に取ったため無傷で助かった。敵1台の車は動かなくなったが別の1台は動き出しバイクを追いかけてしまった。伸郎はポケットからスマホを取り出し急いで2人のヘルメットへ電話をした。スマホからも繋がるのである。何てハイテクなんだ。

「1台だけはお前達の方に向かって行った」

「無事で良かった!・・・1台かー・・・バイクでも林の中は厳しいからなー」

「確か看板があった所にバイク1台なら入れそうな道がありました。林の中ですが・・・」

「よし!そこに行け!気を付けろよ!」

「嘘ー!?」

と和夜は言いつつも例の看板のところで曲がる。車が見えなくなるまで走って止まる。その予定だった。

「無理やり過ぎない!?」

「車じゃなくて拳だったら倒せたのに・・・」

敵は無理やり入って来て追いかけて来るのだ。この間に伸郎は動かなくなった車に乗っていた奴らを締め上げていた。秒で終わらせスマホを手に取る。

「まだ追いかけられているのか!?」

「しつこい・・・」

「しかも、ぶつかって来た奴ら」

全員、焦っていた。騎士があることを思い出す。

「この先は崖があった気が」

「下がれない!曲がれない!やべー!」

「そうだ!林から抜けると10m程、砂利道があるはずだ。その先が崖。だから、林を抜けたらスピードに気を付けて曲がって止まれ!崖に落ちるなよ!」

「マ、ジ、か、よ・・・マジかよー!」

和夜はパニックで泣きそうだったが頑張った。伸郎の作戦の通り林を抜けたら敵にぶつかられない程度にスピードを落とし車体を傾ける。曲がり切ったらブレーキを踏み止まった。後ろを追いかけて来た車は崖から見事に落ちた。ブレーキが間に合わなかったようだ。

「死ぬかと思った・・・」

「和夜ちゃん、ありがとう。和夜ちゃんの運転のお陰で助かったんだよ」

2人の会話を聞き伸郎も安心した。ぶつかって来たり、追いかけて来たりした者達は怪化薬を飲んだ者や関係者ではないらしく、どうやらネットで繋がった知らない誰かに報酬をあげるから人気ヒーロー達に嫌がらせをして欲しいと頼まれ行ったそうだ。とんでもない連中である。


 和夜はまた不死長老へ謝った。

「バイクに傷をつけてしまい、すみません。車のこともあるのに」

「俺も咄嗟の判断とはいえ、壊してしまった」

「良いんじゃよ。悪いのは向こうじゃ。とにかく無事で本当に良かった。伸郎くんにはまさか誤作動が起きる車だったとは、申し訳ない」

「いや、結果オーライだったし」

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