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第24話 予測

 いつものように大きな変化のない会議の後、伸郎は不死長老に大事な話があると呼び出された。その場所は怪化薬打倒委員会に入ってくれと勧誘された時と同じ畳の部屋だった。あの時と同じ様にお茶も出された。

「忙しいのに来てくれてありがとう。伸郎くん」

「いや、別に大丈夫だ」

「伸郎くんは委員会トップの強さを誇る幹部リーダー、憧れ尊敬する者も多い。いや、全員と言っても良い程じゃな。誰も伸郎くんを批判する者がいない。誰もが認めるヒーロー。だから、強くん達の幹部は勿論、幹部以外の戦闘員の面倒も見てやってはくれんかのぉ。前に話した時も断られたが、たまにでも良い。師匠みたいな感じでたまにトレーニングルームにでも顔を出して軽くアドバイスするだけでも良い」

「俺は自分で自分の体を鍛えて来たからな。人に教えるのは上手って訳ではないんだよ。強くんにはかなりの数の舎弟もいるから強くんが向いてるんじゃないか?」

「確かに強くんも向いておる。ただ委員会のトップが見てくれるとなると今まで以上に皆、伸郎くんみたいになりたいとやる気も出て戦力が上がるだろうと思っての。幹部だけでなく戦闘員からも伸郎くんから戦いの技を教わりたいと希望している者もかなりおる。黒幕退治もあって負担をかけて申し訳ないが考えといてくれんかの」

「ああ、分かった」

伸郎は部屋を出た。部屋を出るとマンが目の前にいた。

「何だ。マン、久しぶりだな。和夜とは会っているみたいだが」

「お前、弱い戦闘員の面倒も見ておいた方が良いぞ?確かにお前は強い。最強キャラの設定をしているしな。他の幹部も十分に強いが数は少しでも増やしておいた方が良い。いくらお前が強くても、お前の体は1つだからな。見せてやろう」

マンがそう言うと伸郎の視界が強い光で包まれる。伸郎は腕で目を庇う。眩しさがなくなると目を開き腕をおろす。目の前にマンは居なかった。外から爆発音のような音が何回も聞こえた。走って外を出ると酷い有り様だった。

「おい・・・なんだよ、これ・・・」

周りは炎に包まれ建物は崩壊、空を見ると何人か浮遊している者がおり炎を投下する者、ダイナマイトのような者を放り投げ爆破させる者等、暴れている者が様々居たのだ。

「伸郎さーん!」

怪化薬打倒委員会の関係者が数人、伸郎の元へ駆けつけた。

「おい、少しの間になんでこんなことに」

「伸郎さん!北の方角に我々では対処が出来ない敵が居ますので来て下さい!」

「いや!南の方角にも戦闘員が何人もやられております!こちらにも!」

「駄目だ。こちらをお願いします!幹部1人が戦闘不能状態です!」

次々に伸郎へ来て欲しいと強くお願いする。

「分かった!全部、順番に行く!」

「じゃあ、こちらを先に来てください!伸郎さんじゃないと駄目です!」

「いや、こっちだ!戦闘員が全滅しているんだ!他の幹部もあてにならん!伸郎さんじゃないと!」

「伸郎さんだけが頼りなんです!じゃないと被害も抑えることさえ厳しい」

伸郎はこんな状況で何を言っているんだ、と思った。

「こちらは幹部1人が戦闘不能で戦闘員も居ません。先にこちらに」

伸郎は冷静に考えて言った。

「分かった。先に幹部も駄目だった所へ向かって対処する。終わり次第、俺も急いで向かうから、それまで他の幹部や戦闘員で時間は稼いでくれ!」

「えっ、伸郎さん!貴方が居ないと駄目ですよ!」

伸郎は敵の居る場所に向かった。そこでは何人も戦闘員が倒れており、怪しい雰囲気の男が1人居た。

「おお、やっと来たか。あんた組織で1番強いんだろ?」

「お前ら。町をこんなにして」

「あんたが来るのは良かった。他の戦闘員は準備運動にもならないよ。あっ、でも幹部は良い線いってたよ。ただの幹部じゃなくて幹部リーダー補佐役だっけ?もう、あんな状態だけど、誰だか分かるかな?」

敵が指を指した方を見ると誰だか分からない位に面影のない程、ボロボロになった人が倒れていた。伸郎はそれを見て絶望した。

「実力はあるのに可哀相だね。幹部にすらなれなかった戦闘員に俺が攻撃したら当たらないように奥義を使って庇って・・・戦闘員はビビッてその子を盾にしてたよ。流石に僕を相手にしながら庇って戦うのは厳しかったみたい」

「・・・お前・・・俺の家族に」

伸郎が敵に勢いよく向かって攻撃をする直前、また伸郎の視界は強い光で包まれた。目を開けると目の前にマンが居た。

「何だ?・・・夢か?」

「凄い汗だなぁ。今、俺がお前に見せたのは、もしお前が戦闘員の面倒を見ないと起こりうる世界だ」

「・・・予知夢か何かか?」

「そうなるとは限らないから予知夢ではない。が、俺が予測した世界だ。お前は最強だ。お前を最強と認める者も多い。素晴らしいことだ。それでも1歩間違えるとお前が来ないと勝てない、お前以外では駄目、お前以外は何もしない、そう言う事態になりかねない。お前の体は1つ。敵が散らばったら順番に対処することになる。だから、面倒は見ておいた方が良い」

伸郎は黙って聞いていた。直ぐに不死長老の元へ行く。

「爺さん。やっぱり俺やるわ。たまにでも良いんだろ?」

不死長老は美味しそうにお茶を飲んだ。


 全体会議が終わると和夜と騎士は南、茅野、メガネと科学室前で軽く立ち話をしていた。科学室前の廊下をリゼとキンバが通って行く。和夜は緊張感が走ったが何も言われないことにホッとした。しかし、そんなことはなかった。

「やっぱり騎士さんとペアで活動して手柄横取りして幹部リーダー補佐役してるって本当なのかなー」

「こらっ!リゼ!聞こえるって!俺も思っているけど」

嫌味ったらしく言いながら居なくなろうとした。その場に居た全員わざわざ言わなくて良いことをわざとらしく言ったことにイラっとした。先に動いたのは南だった。

「和夜がそんなことをする訳ないでしょ?後、仕事場なんだから静かにしなさい」

「いつまでデタラメなこと言ってるの?」

南の後に騎士が続けて言った。茅野とメガネも続けて言った。

「奥義をお見舞いされても知らないよ」

「そうだそうだー」

リゼとキンバがあからさまに苛立った表情をしていた。和夜はまずいと思い行動した。

「さぁ、ここで立ち話するのもあれだから早く科学室に入ろうー。行こう行こう」

全員、中へ入る。その後、ユミは外で何かあったのか気になり1人科学室を出た。

「あら?リゼくんとキンバくん」

「あっ、お疲れ様です」

「ユミさん、お疲れ様です」

先程まで嫌がらせをしていたとは思えない好青年だった。

「もう中学卒業したのねー。早いわねー」

「だいぶ前っすよー」

「お陰で学校を気にせず委員会活動に集中出来ます」

「学ランを着てるってことは高校にも入りながらなのね~」

「いえ、高校は入ってないです。こっちの仕事に集中したいので」

「はい。騎士さんみたいに高卒認定を俺達も考えてるんですよ。この服は委員会の制服で学ラン風にして貰って」

楽しそうに世間話をしていた。そこでユミはあることを思い出した。

「そうだ!キンバくん、ボタンは大丈夫そうだった?」

「学ランの第2ボタンですよね!それなら、なぜか会議室の机にありました。ユミさんに話しましたっけ?」

「ううん。和夜ちゃんから聞いたの。資料室だったかな?落ちてたらしいよ。しかも綺麗に2つに割れて。それを私の所へ持って来たから直したんだよ。直ったら和夜ちゃんが持って行ったけど・・・聞いてないの?」

「はい・・・」

「そっか!ちゃんとお礼、言っとくのよ。後、活動!応援してるね!」

「はい!直して頂きありがとうございました!」

「応援ありがとうございます!」

「いいえー、またねー」

科学室にユミが入って行った。リゼとキンバは複雑な心境だった。


 ユミが科学室に入ると全員お茶をしていた。

「ユミお姉さん、お疲れ様です」

「お疲れ様です」

和夜と騎士が挨拶をした。

「お疲れ。お姉さんだなんて。嬉しいけど、もう還暦近いのよ?」

「えっ!?」

和夜が瞬きを何回もしてユミを見る。

「趣味で肌が若返るための研究もしててね。そのお陰よ。まぁ自分しか使わないけど」

「なるほどー」

「後、今日、来て欲しいって言ったのは和夜ちゃんが頼んだ物が出来たからよ」

「ええ!?もう!?」

ユミが白い箱に丁寧にしまわれたある物を持って来た。受け取った和夜は箱を開けると

「時計?」

と騎士に聞かれた。

「うん。変身時計だよ。お願いしたんだ」

「実はこれ、私達も作るのを手伝ったんだ」

「和夜ちゃん、試しに付けて見てくれる?」

「はい!分かりました!ユミさんも皆も作ってくれてありがとう!」

和夜はユミに言われた通りに時計を腕に付け、ボタンを押した。すると、時計から小さい龍の形をした様々な色の光りが飛び出し和夜の体をぐるぐると回る。

「おおおー、スゲー」

と和夜が言った。周りも神秘的な光景に釘付けだった。しかし、龍は直ぐに居なくなり何も起きなかった。

「あれ?・・・あれ?」

壊しちゃった?違うよね?と和夜は焦った。時計を付けボタンを押しただけなため勿論、壊してはいない。ユミも驚いた。

「おかしいな。上手く行くはずなのに」

和夜はユミへ時計を手渡した。ユミは何度も時計を見て調べた。

「何でいかないんだろー。和夜ちゃんの身長とかに合わせて作ったはずなんだけどな」

「すみません、ありがとうございます」

「大丈夫!大丈夫!良かったらお茶して行って」

和夜はお礼を言い席に着いた。

「和夜ちゃん、どんな風に変身するつもりだったの?」

「へっへっへーん!YOUに負けない位、人気が出そうなクールな姿に変身するのだよ」

変な笑い方をした後、自慢気に和夜はイメージイラストを見せた。そこには顔も隠れる全身鎧、背中には赤マント。イメージ図の横には身長200cm以上と記載がされていた。和夜が好きそうなゴツくて格好良い姿だった。騎士はまさかこんな変身を和夜が望んでいるとは思わず返答に困った。そこへ南が騎士に向かって言った。

「可愛いピンク衣装になるのも作る予定よ」

「そっちの方が見たいな」

「何でよ・・・変身時計は私の身長に合わせて作っているから上手くいかなかったのは身長が伸びたからかな?」

和夜が言ったことに対して自分の身長に自信があるメガネはすかさず言った。

「ないと思う」

「即答かよ」

変身時計は何度、調べても問題はなく、壊れて等いなかった。それでも和夜は勿論、他の者が試しに付けても変身することは出来なかった。この変身時計を使いこなせる者が後に現れることをまだ誰も知らない。

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