第23話 再会
幹部達はそれぞれ指示された場所へ行き、幹部ではない戦闘員では相手に出来ない敵を倒したり、全体会議を定期的に行ったりをする日々が続いた。怪化薬打倒委員会の知名度も一気に上がっていく。
そんなとある日の全体会議の前にキンバは力尽きていた。
「なぁ、おい。元気出せって・・・ボタンは新しいのをすぐ付ければ良いだろ」
「どうしたんだ?」
キンバの様子を心配し強がリゼに聞いた。
「いや、コイツ学ランの第2ボタンをなくしたことに落ち込んでてよ。もうすぐ卒業だから女子に欲しいって言われたらあげるのを楽しみにしてたんだよ」
「なるほど。キンバくんは第2ボタンをあげる相手が居るほどモテるんだな」
「いや、居ねぇよ。でも本人がもしかしたら居るかもしれないからって卒業まで大事にしてたんだよ」
そんな会話をしていた。黒葉は少し呆れて聞いていた。一方、別の席では穏やかな会話をしていた。
「和夜ちゃん、今日の夕食は何が食べたい?」
「うーん。チーズが乗ったハンバーグかなぁ。じゃないや!今日はメガネ達と急遽、女子会することになったんだ!夕食は外で食べて来ると思う」
「そっか・・・楽しんで来てね」
騎士はしゅんっとしていた。そこへ伸郎が入って来た。主人公は遅れて登場である。
会議では特に気になったこともなく新たな任務をそれぞれ任されるだけだった。
「全然、黒幕が掴めねぇ」
「まぁそう焦るな。リゼくん。わしも100年以上追っているが尻尾すら掴めていない。それでも君達が居るだけで大きい希望じゃ。なぁ、強くん」
「はい。伸郎さんや騎士さん、リゼさん、キンバさんが来てくれたことは大きいです。前までは相手によって死者が出てしまうことも少なくなかったので・・・」
えっ、さりげなく私ハブられた?と心の中で和夜は悲しくツッコんだ。
「見つからないのは厄介だな~」
伸郎も真剣な表情だった。不死長老は黒幕が見つかってすらいない状況だが伸郎くんなら黒幕まで追いつめてくれる、そんな気がする、と出会った時と同じことを改めて強く思っていた。
解散しそれぞれ会議室を出た。和夜は
「またねー」
と言い手を振った和夜は騎士を置いて行った。
「そんな寂しそうな背中しないでよ。こっちも急遽また幹部達の食事会があるから騎士も来なさい」
黒葉が騎士に言った。騎士がボソッと力なく呟く。
「えええ。和夜ちゃん居ないしなぁ」
「えええじゃないわよ。和夜も聞いたら行けって言うわよ」
気乗りしないまま騎士は黒葉に付いて行った。
和夜は科学室の様子を見た。南、茅野、メガネがユミのお手伝いをしている。まだ終わらなそうだと思い、スマホに連絡だけして資料室へ時間を潰しに行った。そこには過去に倒した敵の情報等あらゆる資料があった。過去の敵でどんなのが居たのか気になりパラパラとめくっていく。今日は日差しが異様に強く、室内でも窓から出てくる光はとても眩しかった。カーテンを閉めようとした時に机の下にある何かが一瞬、光った。しゃがんで拾うとボタンのような物だった。
「真っ二つ・・・」
何かに挟まったのか、落ちた衝撃か分からないが割れていた。資料を片づけた後に割れたボタンを持って科学室へ向かった。
「お疲れー」
「お疲れ様!丁度、終わったところよ!」
南が挨拶を返した。
「あれ?手にあるのは?」
茅野の質問に和夜は割れたボタンを見せる。それを見た南が気付いた。
「あっ、これ多分、リゼくん達の制服のボタンだ」
「ありゃー、やっぱり?せっかく拾ったけど割れちゃってるのは残念。キンバさん、第2ボタン失くしてショックだったみたいなのよ」
「そっかー・・・まぁでも、あの人達、和夜に酷いこと言ってるんでしょ?あまり気にしなくても良いんじゃない?」
「それはそう!」
決して否定はしなかった。和夜は科学室に居たユミに駄目元で聞いた。
「ユミさん、すみません。これを良い感じにくっ付ける何かありませんか?」
「任せなさい!」
ノリノリで言うユミは液体のりのような物を持って来て、割れたボタンを綺麗にくっつけた。そして、それを派手に転がした。和夜はせっかくくっ付けた物を急に投げるので驚いて言った。
「ちょ!何、急に!?」
「あっ、ちゃんとくっ付いてる。ユミさんが派手に転がしたのに外れない」
決して転がすという可愛いもんではなかったが、ユミの行動は綺麗にくっ付いたかを確かめるためしたことだった。
「ありがとうございます。じゃあ、会議室に行って置いて来ます」
「直接、渡さなくて良いの?」
メガネが疑問に思った。
「うん。置いて来る」
和夜は会議室に行き、キンバが座る席に置いておく。その光景を見ている者が居た。
「おい。メガネの言っていたように直接、渡した方が良いんじゃないのか?その方が感謝されてお前に対しての言動も改めるかもしれないぞ?」
和夜の様子を見ていたマンがやって来た。一応、読者様にも伝えたいのだが和夜のための台詞ではない。直接、渡したらアイツ等の反応が気になるなぁ、見たいなぁ、というただの興味本位である。
「まぁ正直、そうなったら嬉しいけど、そんなことしてもねぇ。親切の押し売りになるだけだよ」
そう言った和夜は女友達の元へ戻った。その背中を見たマンは
「変な奴。つまんねぇな」
と言った。ちなみに次の会議の時にキンバはボタンを見つけ大変、喜んだ。しかし、卒業式でキンバの第2ボタンを欲しがる女子は居なかった。
科学室に行く途中に和夜は伸郎とすれ違った。
「おう!和夜さん!」
「お疲れー」
「お疲れ!和夜さんもたまには幹部の食事会に来いよ」
伸郎は和夜が居なくて寂しかったのでウキウキで誘った。伸郎は和夜が強、リゼ、キンバと良くない関係であることをまだ知らない。和夜が不死長老に別に言わなくても良いと言ったからだ。パパはそういう時代に耐えて生きて来た人だからな、と思い止めておいたのだ。
「ああ、まぁ、そうね。今度また機会があれば」
「飯がうまいぜ」
「うん。またね」
お互い別れた。伸郎は和夜と一緒に住まなくなり寂しかった。大事な娘だが鈍感なため幹部の話をしたことによって少し元気がなさそうなのには気付かなかった。
和夜達は今日のようにレストランでよく女子会をする。
「いやぁ、傷つくけど、たまーに腹が立つことがある!年下で私が上の立場なのにタメ口だったり嫌味を言ったり、年上でも私が上司なのに上からだったり」
「それは本当に人として駄目だと思う」
「奥義をお見舞いしても良いと思う」
「そうだそうだー」
和夜がリゼ、キンバ、強の愚痴を言い南、茅野、メガネは次々に共感を口にする。
「そう言えば旦那はどうよ。委員会に入ってからすごい人気じゃん。前もモテてたけど」
「南ちゃん。別に旦那じゃないよ・・・」
苦笑いで和夜は答えた。
「旦那みたいなもんでしょ。愛しの騎士くんはどうなのよ」
「愛しって・・・そうだね。ファンですって言って話し掛ける子とか見かけるな。でも・・・」
「どうしたの?」
「騎士くん、ファンの子に話し掛けて貰っても冷たいのよね。握手とか写真とか求められても冷たい言い方で断るし・・・あれ、近くにいる私が命令してるって勘違いされそうで怖い・・・」
「あー・・・相変わらずって感じね」
「本当、困ったもんだ。どうしたもんかね」
和夜はそう言いドリンクを飲む。
「私にはそんなファンが居ないから貴重なファンを無下にする騎士くんが分からんよ」
女子会が終わったらメガネ、茅野、南の順で和夜は送った。前もお話したことだが、送ったというより寮までの道に丁度、皆の家があるからだ。友達全員が家に着き寮まで1人歩いていた。勿論、騎士へちゃんと忘れずに連絡はしてある。迎えに行くということに関しては断って若干ガン無視であるが。
人通りのない暗い帰り道で見覚えのある人が居た。
「やぁ久しぶりだね。和夜ちゃん」
「あっ、ご無沙汰です。あの時はありがとうございました」
イカイケメンだった。ちなみに触手はしまわれているので顔の整った人間の男にしか見えない。和夜はあれ?この人の名前なんだっけ?と思い出せず少し焦ったが、頭をフル回転し直ぐに思い出した。
「えっーと・・・イカイケメンさんって言うんですよね?委員会の人から聞きました。有名人だって」
「ああ・・・そうらしいね」
「委員会に勧誘したがっている子もいました」
「そうなんだ。まぁ私は好きでやっていることだし、委員会にはあまり興味はないかな。今から寮に帰るのかな?そこまで送るよ」
「いや近いですし1人で大丈夫ですよ」
「そういう訳にはいかないよ」
イカイケメンは少し強引に和夜を送る。2人は歩きながら会話をした。
「和夜ちゃんのお父さんは勿論、騎士くんとか人気急上昇中だね。ネットとか名前がよく上がっているよ。格好良いヒーローとか」
騎士は委員会に入る前からイケメンかつ力が強いことで有名だったので女性ファンも多い。伸郎はイケメンと言われている訳ではないのだが、圧倒的な強さで格好良いので当然のようにファンが多い。特に男性が多い。既に2人はファンクラブも出来ている。イカイケメンにも勿論ある。
「へぇー、やっぱりそうなんですね。家族や知り合いが人気なんて鼻が高いです」
「ふふふ、本当にそう思ってる?」
「えっ?」
意味ありげに笑いながらイカイケメンは和夜へ言った。和夜はどういう意味で言ったか理解が出来ず返答に困った。悪い意味で言われているんだろうなということは分かった。
「いや何でもないや・・・もう寮が見えて来たね」
「はい。ここまでで大丈夫です。ありがとうございました」
和夜は会釈し建物の敷地へ入って行った。イカイケメンは和夜の背中を笑顔で見送る。和夜は寮の建物に入る前に振り返るがイカイケメンは既に居なかった。
後日、和夜は黒葉へイカイケメンにまた会った話をした。すると、黒葉は両手を机にバンっと置き和夜へ顔を近づけて言った。
「2回も会ったの!?っていうか送って貰ったって何!?」
「ああ、何か送るよって言われて断れなかった」
他の男の話を騎士はずっと面白くなさそうな顔で黙って聞いていた。しかも、自分は迎えに行くと連絡したのに断られ、別の男に送って貰ったことがとても不満だった。
「もし今度また会ったら、私の代わりに勧誘してくれない?」
「ああ、その時に勧誘したがっている子がいる話をしたけど委員会に興味はなさそうだったな。好きなように1人で行動するのが好きみたい」
「そっかー」
「来なくていいよ。そんな人」
騎士が口を開いた。
「勝手に和夜と2人きりのティータイムに付いて来ておいて口出ししないでよ・・・っていうかイカイケメンがもし来たら大変ねー、騎士ー」
黒葉はいじわるに笑いながら言った。騎士との間に見えないはずのバチバチが見える。何か分からんが立体的に見える。
「まぁまぁまぁ・・・」
和夜は2人を宥めた。




