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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第二十四章 月夜叉の器 ――ソフィア覚醒編――
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第三百五十五話 格差という病

 ソフィアは窓際の席から曇天を眺めていた。卓上のタブレットの中で教師が初等部の講義をしている。故意に眠気を誘っているのかと思えるほど抑揚も中身もない内容だ。


「はぁ」と溜息をつくと前方の空席に視線を移す。最近アンナと瑠璃が休みがちだった。


 ヴィオラのグループは相変わらずソフィアを敵視している。しかし、ソフィアはクラスで人気者のコニーと仲が良かった。将を射んとせば先ず馬を射よということなのか、ソフィアの周りにはコニーと仲良くしたい女子が集まってくるし、AA級(ダブルエー)の黒川南に近付きたい女子もそれに便乗してくるのであった。


 昼休みのチャイムが鳴ると教室が騒がしくなった。ソフィアの机にキャイキャイと女子グループが集まってくる。「お疲れさまー」優等生のソフィアは彼女たちを笑顔で出迎えた。


「ソフィアちゃん。今日はどこで食べる?」


 コニーが声を掛けてきた。その後ろにいる男子グループも異能の成績が良い、いわゆるクラスの一軍だった。女子グループが色めき立つ。(あはは……)ソフィアは内心で苦笑していた。


 学食の窓際の席。ソフィアとコニーを中心にして座る。絵になっていた。まるでドラマのようにキラキラしたランチタイム。リア充という表現がピッタリとはまる。しかしソフィアはちっとも楽しくなかった。


「ねえ、アンナと瑠璃が最近休んでいるけど……誰か理由を知ってる?」


 ソフィアの問いに皆は顔を見合わせる。大して興味がないようだった。女子の一人が顔をしかめて言う。


「ソフィー、前から言おうと思っていたんだけどさー。あの二人に関わらない方が良いよ」


「どうして?」


「んー。あの二人は二軍じゃない。精神感応系(イー・エス・ピー)だし。ソフィーの友達に相応しくないよ。そこらへん自覚してあげないと可哀想かも、お互いにさ」


 ソフィアは笑顔を浮かべたまま思考が停止した。目の前の子は善意で残酷なことを言ってのけた。感情を押し殺し静かに言い返す。


「……私、異能の成績はイマイチだから、自分が一軍だなんて思っていないんだけど。みんなだってそうじゃない? そこまで差があるかな? A等級とかホント凄いし、ストレンジャーだって強い人はいっぱいいるんだよ。この前、試合をした金髪の人とか」


「あー、あのヒト格好よかったよねぇ。オラオラ系で憧れちゃーう。妹さんに連絡先聞いたんだけど教えてくれなかった。マジむかつく、モブのくせに」


「モブって……。と、とにかく異能の成績で差別するのは良くないと思う」


 ソフィアは内心ムキになっていたが周囲はそれに気が付かない。いかにも育ちの良さそうな女子が口元に手を当てて上品に笑う。


「ふふ、異能の成績なんてカンケーないよ。ソフィーのお父さんはマラソン・エナジーの役員じゃない。つまりソフィーは生まれた時から一軍なんだよ」


「え?」


「私も社長の娘だよ。コニーくんだって大企業スペックスの御曹司だし。てゆーか、ここに集まっているメンバーはみんな富裕層(かねもち)。一緒にいるだけで利益(メリット)があるんだよ。協会にお布施もしてるしさ。ぶっちゃけ私たちは先生より偉いと思う、ヒトの価値的に」


 異人の女子生徒たちの言葉。マナの恩恵で知能が高く、それ故に人生に冷め切った笑みを浮かべている。


「まあ、異人だしギフターの資格くらい貰っておこうかなって。C等級(シー)でよくない? 名刺に書ければそれでいいよ。危ないことしなくたって親の会社にいれば不自由しないんだから。ねえ、みんなもそんな感じでしょ?」


 あはは――と笑い合う。ここには真剣にギフターを目指す者はいない。ソフィアは居心地の悪さから席を立とうとした。するとコニーが口を挟んだ。


「僕はA級を目指したい。せっかく異能の名門校に入学できたんだ。ユリエちゃんの言い方は真面目に学んでいる人に失礼じゃないかな」


「え? あ、そうかも! コニーくん、ごめんねー。ユリエもA級目指しちゃおー♪」


 ユリエは顔を赤くした。コニーはソフィアの方を見る。


「アンナと瑠璃は学校を辞めるらしいよ」


「そんな……聞いていないんだけど」


「親の仕事が大変で学費を払えなくなるみたいだ。今度聞いてみたら?」


 コニーはそう言うと隣の女子と会話を始めた。他のメンバーも雑談を再開する。


(アンナ、瑠璃……なんで言ってくれないの! 私たちは親友じゃなかったの? 一軍とか二軍とか……バカみたい!)


 世界はどこまで行っても格差社会――この構図は協会も例外ではなかった。ソフィアは無自覚に傷付いていた。


(格差って、なに? 弱い人から搾取するってこと? でも、それで悲しむ人がいるんだよ。だって異人はずっと差別されてきたのに……たくさん殺されて……って、私なんでこんなこと知ってるんだろ)


 つん……と鼻の奥が熱くなる。涙が出そうになり慌てて深呼吸をした。自分も昔はユリエたちのように考えていたはずだった。しかし日本に来てシュウや南と過ごすうちに何かが変わった。いや、変わってしまったのだ。


(私、どうしちゃったんだろう。最近……なんか変)


 ソフィアは愛想笑いを浮かべながらも心は泣いていた。

【参照】

昔のソフィア→第七十五話 フローラ=エリソン

アンナと瑠璃→第百二十九話 ソフィアの学校生活

ソフィアとヴィオラの確執→ 第百六十話 ソフィアとヴィオラ

コニー→第百六十二話 秘密の花園

異能の試合→第三百三十七話 グリーンボーイのテレフォンパンチ

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