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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第二十四章 月夜叉の器 ――ソフィア覚醒編――
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第三百五十一話 轟く雷鳴と落ちた戦闘機

 翌朝、空爆が始まった。しかし初日ほど激しくはない。世論の反発にあったのか戦力を温存しているのか分からなかったが、昼前に攻撃は中断された。各地に散った反政府軍は陸上戦に備えながら身体を休めていた。


「妙ね。これで終わるはずがないわ」


「次の爆撃が始まる前に楽園へ乗り込むか?」


 フローラとエリクは悩んでいた。はぐれた仲間と合流すべきか単独で動くべきか――今の状況は千載一遇の好機かもしれない。熟考する時間はなかった。すると町の広場の方で動きがあった。二人は廃墟の合間を縫って広場を見渡せる位置に移動した。


「え?」


 フローラは絶句した。広場の中央にパルチザンの生き残りが集められている。その中には父親の姿があった。皆が縛られて座らされていた。背後には銃を持った兵士が立っている。公開処刑。反政府軍の残党を誘き寄せる(ショー)だった。


「……パパ」


――ドクンッ。心臓が大きく脈打つ。口の中がカラカラに乾く。頭の中が真っ白になる。意味なく空を見上げた。快晴だ。今日に限って死体も武器も戦車も覆い隠してくれる雪が降っていない。絶望したフローラの瞳に映るのは死を待つ父の姿。


「フローラ、見るな!」


 エリクがフローラの肩を掴んだ。しかし目を逸らせなかった。親を見殺しにするくらいなら特攻。フローラは廃墟の陰から飛び出そうとした。すると――。


「出てくるなぁぁ!」


 父親が叫んだ。エリクがフローラを羽交い締めにして止める。


「我々の死は未来へ繋がる! 異人解放への礎となるのだぁぁぁ!」


 背後の兵士が静かに銃を構えた。パァンッ。甲高い音がこだまする。父親がゆっくりと前に崩れ落ちた。パルチザンの残党は一人残らず殺された。フローラは目を見開いた。腹の奥底からゾワリと何かが首をもたげる。


 何故奪われる?


 弱いから?


 異人だから?


 世界はこんな理不尽を許すの?


 ブチッ――フローラの頭の中で繋ぎ止めていた何かが切れた。


「……やる」


「フローラ?」


「……してやる」


「おい、やめろ!」


「あいつら殺してやる!」


 フローラはエリクを突き飛ばし敵兵の前へ躍り出た。そして叫ぶ。


「エストリエぇー! 力を貸せぇぇ!」


――私に敵を皆殺しにさせろ!


『よかろう♪』


 天から声が降ってくる。次の瞬間、フローラが強大なマナを纏った。人間の限界を超えたマナ量。広場全体が揺れるほどの出力だ。敵兵がフローラに気が付き発砲する。しかし全ての銃弾が空中で停止した。


「お、おい! 早くあの小娘を撃ち殺せ!」


 戦場に戦慄が走る。フローラが両腕を前に突き出すと停止していた銃弾が敵兵に返された。ズダダダッ! 結界チョッキを貫き血飛沫が舞う。


『わあぁぁ!』


 フローラは白夜月のマナを集約し歩兵と戦車に向かって放った。まるで戦術核が落とされたような爆発音と震撼する空気。敵兵が消し飛んだ。粉々になった肉塊がバラバラと落ちてくる。


月光爆発(ルナフレア)


 一旅団を壊滅させる規模の異能――エリクは呆然と見ていた。


「フローラお前……そのマナは?」


 フローラは足を引きずりながら進んでいく。慌ててエリクは後を追った。生き残りはいないと思われたが瀕死の兵士が一人いた。制服からして高い階級であることが伺える。


「死ぬ前に答えて。私のお母さんと妹は生きているの?」


「ばけもの……め」


 フローラは男の頭をガシッと掴む。


「答えてよ! 死ぬ前に頭を吹き飛ばすわよ」


「……」


「私はフローラ=バルトシークよ。母はカロリーナ、妹はソフィア」


「……バルトシーク? ああいたなぁ……美人(べっぴん)な嫁さんとガキが……」


「生きているの? 答えて」


 男は苦しそうに血を吐きながら笑った。


「……嫁さんの方は楽園に来て三日で死んだよ……クズどもの相手をして発狂して……電気鉄線に飛び込んだ。自殺だよ。ガキの方は……年齢を誤魔化しやがったから……その場で射殺された……泣きながら謝ってたっけなぁ」


 フローラの目に暗黒の炎が灯る。


「やりたくてやったわけじゃねぇよ……狂ってやがるのは……時代の方なんだ」


 それが最期の言葉になった。男の頭が爆発し血が飛び散った。バシャッと顔にかかる。フローラは氷像のように冷たい目をしていた。


 ゴォォ。空から戦闘機の音がした。陸軍の全滅を聞きつけ空軍がやって来たのだ。戦闘機の機関砲がこちらを狙っている。エリクが何か叫んでいるが無視をした。家族が全員死んだ。もう生きていても意味がない。


(天国……で会えるね。ソフィア)


 死を覚悟した時だった。ピカッ! 真っ青な空が白く染まる。凄まじい閃光――ゴロゴロゴロッ――雷鳴が轟き稲妻が天空に亀裂を入れる。刹那、巨大なプラズマが膨張して戦闘機を呑み込んだ。ボンッボンッと爆発し町中へ落ちていく。美しく力強い雷に魅せられてフローラの中で何かが震えた。


「よう、大丈夫か?」


 廃墟の上から人影が飛び降りてフローラの前に立った。金髪の少年だった。金色の目でフローラを見ると、父親の死体へ視線を移す。


「申し訳ありません。バルトシーク大佐……あなたはここで死ぬべきではなかった」


 突然のことにフローラとエリクは言葉が出てこない。その様子に気が付いた少年はこう言った。


「俺はアドルガッサーベール、【雷神(ママラガン)】のライ。この戦争を終わらせに来た」

【参照】

アデルキリアの武力衝突①→第十二話 せっかく異人の友社に入社できたのに私の知能が低すぎる件【落合茉里咲】

雷神のライ①→第七十六話 異能研

雷神のライ②→第八十五話 蛇の民と瑪那人

雷神のライ③→第百一話 あの男

雷神のライ④→第百二十二話 五大元素

雷神のライ⑤→第百七十四話 渡り鳥と少女

アデルキリアの武力衝突②→第二百五十七話 赤目の支配者は笑う

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