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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第二十四章 月夜叉の器 ――ソフィア覚醒編――
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第三百四十九話 裏切りの凶報

「ほう、アドルガッサーベールが近くに来ているのか」


 フローラの父親が呟いた。そこは隣村にある地下バーだった。このような隠れ家は各地に点在し、パルチザンを始め、地下組織の拠点となっている。無事に辿り着いたフローラ達はパルチザンと合流し、温かい料理を食べていた。


「うん。あの子達、大丈夫かなぁ。弱っちい姉妹だったけど」


 フローラは件の姉妹と自分の妹を重ねて感情移入していた。父親はフローラの肩に手を置いて言う。


「心配なかろう。アドルガッサーベールは少数精鋭の部隊だが、大手レジスタンス組織の国内旅団と連携を取っていて、背後に西連や世連がいる。アメリカや日本の水門重工(みなとじゅうこう)が武器を支援しているはずだ」


「ふーん。じゃあ私達も合流できたらいいね」


「そうだな。うん、そうか……彼が来ているのか」


 父親がどこか遠い目をしている。


「彼って?」


「ん? いや、昔ちょっとな……ところで異人強制居住区域はどんな様子だ」


「最悪! 店には腐った野菜や肉しかないし、下水が壊れているから道端に汚物があるの。病気が蔓延しているわ。強盗や殺人は日常茶飯事よ。でも一番の問題は飢餓かしら」


「地下組織が物資を届けているが、とても間に合わんな。外と中から大規模戦闘を仕掛ける頃合いかもしれん。町で反政府軍の編成は進んでいるか?」


「もちろんよ。異人ってだけで差別されて殺される……みんな殺気立っているわ。死ぬのは怖くない。敵を皆殺しにして家族を取り返す――それだけだもん」


 フローラの返事を聞いて、父親は少し寂しそうに笑った。


「ねえ、パパ。私はママと……ソフィアに会いたい。二人とも生きているわよね」


「もちろんだとも」


「ソフィアはたった一人の妹だもん。こんな戦争終わらせて幸せになってほしいの」


「収容所では働けない年齢の子供は即殺されてしまうから、ソフィアには年齢を偽るように伝えているし、カロリーナは聡明な女だ。辛い環境だろうが……おそらく生きてくれている。二人を信じるんだよ、フローラ」


 エリクがパンをかじりながら笑った。


「大丈夫だって、元気にやってるさ! それより食料持って早く帰ろうぜ。ねえ、おじさん、たっぷりリュックに詰めてよ! テレキネで持ち上げられるからさ! みんな、腹空かせて待ってんだ」


「ああ! 頼むぞ、エリク。皆を守ってやってくれ。フローラをよろしく頼む」


 父親がエリクの頭を撫でる。エリクを含め、少年達は笑顔で拳を突き上げた。


「パパ、死なないでね」


 フローラは父親に抱き付くと顔を埋めた。


「当然さ。お前も元気で。向こうのリーダーにもよろしくな」


 二人は強く抱き合った。この戦時下、次にいつ会えるか分からない。もしかしたら生きて会えないかもしれない。ゆえに互いのマナを感じ合うのだ。――家族を、そして異人の自由を取り戻す。それだけを考えていた。



 ◆



 それから数日後、フローラは強制居住区域の隠れ家で凶報を聞かされた。


「そ、そんな……パパが?」


 蒼白な顔で床に膝をつく。エリクがフローラの両肩を乱暴に掴んだ。


「パルチザンの一部が暫定政府側に金で寝返った! 拠点が襲撃されてたくさん死んだんだ! ここもすぐに戦場になるぞ……立てよフローラ!」


「パパ……私、どうしたら」


「強制居住区域がテロリストの拠点だと断定されたんだ! 西洋連合の反対を押し切って空爆が始まる! その後は地上戦だ、略奪軍がやって来るぞ!」


 他のメンバーが部屋に入ってきた。異人で組織された少年兵達だ。


「おい、エリク! 空爆で高電圧鉄線が破壊されるから住人を外へ逃がせるはずだ。反政府軍と合流するぞ! ……おい、フローラがどうかしたのか?」


 フローラは呆然としたまま動かない。業を煮やしたエリクが叫んだ。


「フローラ、てめぇ! 今命を懸けないでいつ懸けるんだよ! お母さんと妹のソフィアちゃんを助けるんじゃないのかぁ!」


 その言葉でフローラが正気に返る。目に力が戻った。


「……うん!」


 フローラは勢いよく立ち上がった。部屋に集まったメンバーを見回すと状況の整理を始める。


「みんな、聞いて。さすがにミサイルをマナ壁で防ぐのは無理。まずは地下に潜って空爆をやり過ごし、仲間と合流する。念動力系(サイコキネシス)を中心にチームを編成、精神感応系(イー・エス・ピー)は後方支援!」


 いつもの調子に戻ったフローラを見てエリクはニヤリと笑う。


「エリク……みんな、力を貸して! 政府軍を迎え撃つんだ! 混乱に乗じて収容所へ乗り込んで家族を救出するよ! 大丈夫、絶対うまくいく!」


「へへっ。らしくなってきたな。了解だ! 聞いたか、お前ら! 行くぞぉ!」


 フローラを先頭にして部屋から飛び出す。緊急事態に反政府軍と落ち合う場所へ向かった。


(パパ! 今は目の前のことに集中するわ! きっと生きていてね)


 フローラは不安を振り払って全力で走った。町はヒリヒリとした緊張感に包まれ、冷たい風が吹いている。雪が降りそうね――フローラはふと空を見上げてそう思った。

【参照】

水門重工→第五十話 水門重工

水門重工と武器供給→第九十八話 世界の平和

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