菫の里帰り③ 埒が明かないので……
菫を生き別れとなった兄達に会わせてやりたいが為に故郷である東和へと戻ったレガルド。
さぁいよいよ菫の生家である弓削家へ…というところで桐生主水之介と李亥家の家老長谷倉一竜太に捕まってしまった。
「二郎若様っ!この爺ぃを素通りして行くなど言語道断ですぞっ!!」
憤慨しているのか泣きついているのか分からない態で長谷倉が言う。
返すレガルドの口調は、軽い。
「いやでも今回は目的があっての帰郷だったからな~。李亥家は今度でいいかな~って」
「嘆かわしいっ!!皆の惜しむ声をせせら笑って東和を出たのですから、せめてお元気なお顔を見せに来て下さってもバチは当たりますまいっ!!」
「ていうかアンタら、再会の挨拶も無くまるで昨日も会っていたかのようなテンションなんすね」
レガルドと長谷倉のやり取りを傍目で見ていた主水之介が言う。
「ふふふ」
長谷倉の衰え知らずの勢いに菫は思わず微笑んだ。
その声に振り返り、菫に気付いた長谷倉が相好を崩す。
そして菫の腕に抱かれている蕾を見て目を大きく見開いた。
「やや、これは菫どの…いやもう奥方様じゃ、二郎若様のご新造様じゃ………っと、ややややっ!?こ、この愛くるしい姫君はも、もしやっ……!?」
「ご無沙汰しておりますご家老さま。ご息災そうで何よりです。はい、娘の蕾にございます」
「な、な、な、なんとっ!?一の姫様がお生まれになられていたとはっ!主水之介っ!貴様なぜ直ぐに知らせなんだっ!!」
「えー……俺は伝書鳩じゃねぇんですから」
「爺ぃに俺の帰省を嬉々として伝えたじゃねぇか」
「それはホラ、復讐だから」
「やっぱり仕返しなんじゃねえかっ!」
「姫君ご誕生万歳っ!!李亥家にとりましては実に五十年ぶりの姫御前のご誕生じゃっ!!」
「おっ!?これは祝いの酒盛りになります?」
永く男児ばかりが生まれていた李亥家の慶事に喜色満面となった長谷倉を見て主水之介が反応する。
「これは皆で祝わねばなるまいてっ!!」
「ふっ……元主家の金でタダ酒が呑める」
「お前な。とにかく爺ぃ、しばし待て。祝ってくれるのは有り難いがまずは菫を弓削の屋敷に送り届けてからだ。その後はとりあえず俺だけ戻るから大人しく待ってろ、いいな?」
「なるほど、委細承知仕った。では二郎若様、館の方でお待ち申し上げておりますぞ!!もしさっさと帰ってしまわれたらこの長谷倉一竜太、アデリオールまで馳せ参じますからなっ!!」
「わかったわかった!血圧上がると倒れるぞ。主水之介、爺ぃを頼む」
「介護承りました」
「何が介護じゃっ!!」
「ダメだ菫、埒が明かん。ほっといてさっさと行こう」
「はい。ではこれにて失礼いたしま……
菫が二人への挨拶を言い終える前にレガルドは転移した。
向かうは菫の生家、弓削屋敷。
亡き父が冤罪により処刑され、一家離散を命じられて以来、数年ぶりの兄達との再会である。
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次回ようやく、ようやく菫ちゃんが兄たちと会えそうです。
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